目黒女児虐待死事件を考える 初公判で起訴事実を認める

児童を実父、あるいは養父が虐待し、死亡させる事件が相次いでいます。この種の事件が今になって増えているのかは判然としません
過去には家庭内での虐待が事件化されず、見過ごされていた可能性があるからです。ゆえに、「昔はこんな事件はなかった」などと決めてかかるのは大間違いであり、誤った判断でしょう
さて、こどもを虐待し、死に至らしめる事件というのはブログで取り上げるにも気が重いのであり、本音を言えば取り上げずに見送ろうかと思うくらいです
ただ、何も言わずに見て見ぬふりをしていたのでは何も改善されず、殺されたこどもの想いを無にするだけになってしまいます
なので、東京都目黒区で2018年3月、船戸結愛ちゃん(5歳)が義理の父親から長期間にわたる虐待を受け、死亡した事件を取り上げます
すでに母親である船戸母親の優里被告(27)は9月17日、保護責任者遺棄致死罪で懲役8年の判決を言い渡されています。求刑である懲
役11年から割り引かれた理由は、夫であった雄大被告から頻繁に説教されるなどの心理的ドメスティックバイオレンス(DV)を受けていたため、とされます
さて、東京地方裁判所で始まった船戸雄大被告の裁判員裁判では、起訴内容を大筋で認め、虐待の事実に関しては争わない方針のようです
一方、虐待はこどもを自分が理想とする形で育てようとした結果であり、その焦りから結愛ちゃんの行動に苛立ち、暴行を加えてしまったと弁護人が主張し、寛大な判決を求める方針のようです


《午前10時前、裁判長の合図で雄大被告が入廷した。黒のスーツに青いネクタイ姿。少し色白で、髪は短く刈り上げられている。逮捕時に比べてやせたのか、スーツのサイズが合っていないように見える。目をしばたたかせながら、肩を上下に揺らせた。呼吸を整えているのだろうか。裁判員らも入廷。裁判長が促し、雄大被告が証言台の前に立った》
裁判長「はい、それでは開廷します。被告人は証言台の前に立ってください。名前は何と言いますか」
雄大被告「船戸雄大と申します」
《思いのほか、か細い声だった。裁判員がその様子を見つめる。裁判長が生年月日や職業を確認し、人定質問が終わった》
裁判長「まずは検察官が起訴状を読み上げるから、聞いていてください」
《裁判長が雄大被告を着席させ、検察官の起訴状朗読に移った。女性検事が証言台の前に立ち、深く一礼した》
《起訴状によると、雄大被告は昨年1月下旬ごろから結愛ちゃんに十分な食事を与えず、シャワーで冷水をかけて顔面を複数回、殴るなどの暴行をした。結愛ちゃんが衰弱していたことを認識しながら、虐待の発覚を恐れて医師の診察を受けさせず、3月2日、低栄養と免疫力低下で引き起こされた肺炎による敗血症で死亡させたなどとしている》
《再び証言台の前に立った雄大被告。裁判長が黙秘権などについて説明した上で、起訴内容について、違うところはあるか尋ねた》
雄大被告「1点だけ。私が結愛の体に危険を感じたのは3月1日ごろではなかったかと思います」
裁判長「なるほど。弁護人に確認するけど、危険を感じたのは3月1日ごろと?」
弁護人「はい。船戸さんの罪が成立することの争いはありません。ただし、保護責任者遺棄致死について、病院に連れて行かなければと思ったのは3月1日ごろで、検察官の主張する2月下旬ごろではありません」
《雄大被告は起訴内容を大筋で認めつつ、結愛ちゃんの体に危険が及ぶと認識した時期については検察側と異なるとの主張だ》
(中略)
検察官「本件は罪の成立には争いはありません。争点は情状、量刑。つまり被告人にいかなる刑罰を科すかということになっています」
《雄大被告と優里被告は平成28年4月、香川県で結婚。約半年後に優里被告の連れ子だった結愛ちゃんの弟が生まれたころから、結愛ちゃんへの暴行が始まったという。結愛ちゃんは児童相談所の一時保護と解除を繰り返し、最終的に両親のもとに戻ることになる。雄大被告が先行して単独で東京に転居。30年1月の結愛ちゃんの身長、体重を女性検事が紹介した》
(産経新聞の記事から引用)

以下、記事では公判の様子が細かく記述されているのですが、そこは割愛して、弁護人の主張を要約します

弁護人「人の親になるということは難しいことです。家族の数だけ親の形はあります。時間をかけて親の形を模索しています。虐待は決して許してはいけないことです。それでも彼(雄大被告)は、結愛ちゃんの父親になろうとしていました。船戸さん(雄大被告)は結婚を強く意識するようになりました。彼には理想の家族(像)があって、明るくて何でも言い合える関係です。この正しい、しかし、高い理想は、船戸さんにプレッシャーになりました。ここから船戸さんは間違った方向に行きます。優里さんに対してきつくあたるようになり、罵声(ばせい)を浴びせることもありました。優里さんは船戸さんに対して、ものを言えないようになりました。平成27年4月、入籍して、結愛さんとも養子縁組しました」
「理想の子供をつくることにギャップが生じていました。結愛さんに対する態度がきつくなり、食事制限を与えるようになりました。(雄大被告は結愛ちゃんに)理想の子供であってほしい。友達をたくさんつくってほしい。目標を見つけて達成する、達成感を味わってほしい…と思っていたのです」
「もう1つの視点があります。今回、起訴されているのは保護責任者遺棄致死罪です。殺人や傷害致死ではありません。適切な保護をしなかったことの責任が問われます。過去の経緯も無視することはできませんが、彼がしてきた虐待や、妻である優里(ゆり)さんへのDV(家庭内暴力)を裁く場ではありません」

妻である船戸優里被告の公判など、幾つかの報道を加味して考えると、雄大被告は典型的な「オレ様」男であったようで、無職でぶらぶらしているヒモのような存在ながら、妻や結愛ちゃんには偉そうに説教をかまし、暴力をふるった人物です
結愛ちゃんの体には170か所にも及ぶ傷があり、敗血症のため皮膚は赤黒く変色していたと伝えられています
これが「理想の子育てを追及した結果」なのかと弁護人に反論したくなります。過去、何度も児童相談所に結愛ちゃんは保護されているのですが、これに猛反発したのが「オレ様」男の雄大被告です
父親らしいことはできないくせに、自分の思惑通りに支配しようとする性格破綻者でしょう
なお、家宅捜索の結果、住居からは大麻が発見されており、雄大被告が日頃から大麻に耽溺していた可能性があります
保護責任者遺棄致死罪の場合、量刑は最大で懲役20年ですが、それでは足りないと自分は感じます
長くなりましたので一旦終了し、また言及します
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