川崎小学生襲撃事件を考える 叔父の手紙が凶行を招く?

川崎市で小学生を襲撃した後自殺した岩崎隆一容疑者について、各メディアが専門家の見解を引用する形でさまざまな記事を書いています
しかし、中には40歳以上のひきこもりは61万人いると書き、それが犯罪予備軍であるかのように煽る内容の記事もあります(編集担当者の意図としては問題提起のつもりであり、危機感を煽る気はないとしても)
週刊女性では、川崎市の福祉担当者が叔父から岩崎容疑者へ手紙を書くよう勧めた結果、岩崎容疑者が激怒したとの反応を切り取り、これが凶悪事件へのトリガーになったと指摘する記事を掲載しています
もちろん、その時点で岩崎容疑者が通り魔殺人事件を起こして自殺する…と予見するのは不可能であり、あくまで後付けの解釈に過ぎません


《川崎殺傷事件》容疑者の孤独な生活と、“地雷”となった伯父夫婦からの手紙
(前略)
こころぎふ臨床心理センターの長谷川博一センター長は、犯行動機について、「学校や学校関係者への復讐心が強い。学校があるから家族からこういう扱いを受けて、今でも悶々と苦しんでいるんだ、と。親から見捨てられた容疑者にとって、幸せ=カリタスだったと考えられます。いとこが今幸せに過ごしているのもカリタスだから。そういうふうに視野が狭くなった可能性はあります」
と指摘し、さらに踏み込む。
「昼間は部屋にこもりながら、悶々とそのことばかり考えてしまうという、思考がスパイラルに陥っていた。差別的に傷つけられた自分といとこの違いを生んだのは学校。学校を出るか出ないかによって、こんなに違ってしまったととらえたのではないか」
犯行時、ほかの学校の集団に見向きもしなかった岩崎容疑者は、無差別殺人を企てたのではなく、子どもたちを狙ったのでもなく、カリタスを体現している子どもや保護者を狙った─。その引き金があった、と長谷川センター長は、次のようにみる。
「実行に移る前に、何らかのトリガーがあった。それが(伯父夫婦からの)手紙です。
その中にあった『ひきこもり』という言葉がスイッチになっている。育ての親に強い口調で言い返していますから」
容疑者の親族は、面談で8回、電話で6回、都合14回、川崎市に相談していたという。
先月29日に記者会見した川崎市は「長期間、就労せずに、ひきこもり傾向にある」、「伯父と伯母に介護サービスを受けさせたいが、外部の人が家の中に入ったときの容疑者の反応が心配だ」といった相談を受けていたことを明かした。
伯父夫婦は川崎市の提案に従い今年1月、手紙を書き、岩崎容疑者の部屋の前に置いたという。
その反応は「自分のことは自分でやっている。食事や洗濯も自分でやっているのに、ひきこもりとはなんだ」という怒りに満ちた返事だった。
80代の伯父夫婦に51歳の岩崎容疑者。典型的な『8050問題』が内在する家だった。
コミュニケーションは限りなく少なく、職にも就かず、伯父夫婦がお小遣いを渡し、伯母が冷蔵庫に作り置いたおかずで、ひとりでご飯を食べる生活……。スマホもパソコンもなく、外部との接触はゼロ……。そこに岩崎容疑者の何かをえぐる手紙。
(中略)
伯父伯母の手紙に、岩崎容疑者は激しく爆発し、「興奮状態になって犯行計画を考えるようになったのではないでしょうか。今回のことを考えついたのは、この手紙のやりとりをした後と考えられます」(長谷川センター長)
(以下、略)


叔父からの手紙が、ひきこもりで目だった出来事のない岩崎容疑者の日常を乱したとの指摘は正しいのでしょう。が、それが凶行へのトリガーになったと断じるのは飛躍した憶測であり、現時点では後出しジャンケンみたいな主張です
川崎市の福祉担当者の提案した「手紙を書いてみる」との提案は妥当なものであり、直接会話のない岩崎容疑者の意思を確かめる方法として間違ってはいないはずです
では、その中の文言に岩崎容疑者を激怒させる何かがあったのか?
それについても結果論、と言わざるを得ないのであり、文面をもっと工夫し岩崎容疑者の自尊心を傷つけないよう配慮すべきだった云々と言われてもねえ…と
叔父が直接手紙を書くのではなく、心理カウンセラーを間に挟んだとして、岩崎容疑者が激怒するスイッチがどこにあるか分からない状態である以上、カウンセラーの言動に反発し、凶行に走った可能性は否定できません
岩崎容疑者の中に溜まっていた不満、鬱屈、そして誰かに復讐したいとの欲求を事前に探り当て、凶行に走る前に解決できたなら良かったのですが、そんなことは誰にもできません

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