中国人姉妹殺害事件で高裁は差戻判決

2017年7月、横浜に住む中国人姉妹2人が殺害され、山中に遺棄される事件がありました。2人と親しい関係にあった岩崎竜也被告が殺人、死体遺棄の容疑で起訴され、一審の横浜地方裁判所は懲役23年の判決(検察の求刑は死刑)を言い渡し、被告側も検察側もこれを不服として控訴していました
東京高等裁判所は1審判決を破棄し、差し戻す決定を言い渡しています
岩崎被告は逮捕当時から無罪を主張し、姉妹が住むマンションから遺体の入ったキャリーバッグを持ち出したとする検察側の主張に対し、「在留資格が切れる姉が偽装失踪を持ちかけられ、姉妹は自分でキャリーバッグに入った。自分は頼まれた場所まで運んだだけで、事件には関与していない」と述べていました
防犯カメラの映像から、事件当時、姉妹の部屋に出入りしたのは岩崎被告のみと確定しており、第三者の犯行の可能性は限りなく低いのであり、無罪の主張は無理があります
それにしても横浜地裁は、なぜ2人を殺害して遺棄したという凶悪な犯行に対し、懲役23年という判決を言い渡したのでしょうか?
検察側の求刑は死刑であり、1人を殺害し遺棄しても無期懲役という判決は珍しくありません
一審判決を掘り起こしてみれば、裁判長は「強固な殺意は明らかだが、特別残虐とは言えない。ずさんな行動に終始し、犯行は綿密ではない。好意を持っていた姉に偽装結婚の相手としか見られていなかったことが動機」と認定しています。妹殺害については、「発覚を恐れてとっさに殺害したと考えられる」とし、死刑や無期懲役の回避については「妹の殺害や死体遺棄まで綿密に計画していたとは認められず、凶器が使われていない」との理由を挙げています
しかし東京高裁では、「凶器が使われていなかった(岩崎被告は手で首を圧迫して絞殺)ことを理由にして有期刑を選択したのは、量刑判断の誤り」だと指摘しています
こうした一審の判断を審理不十分ととらえ、差し戻した東京高裁の判断は妥当でしょう岩崎被告は姉妹の勤務していた飲食店の常連客であり、数百万円を使っていたとされますが、それを特別に汲むべき事情と見る理由はないのであり、犯行に至るやむなき理由があったと見なすのは間違いでしょう
差戻審議となる横浜地裁の判断が問われます

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