19歳警察官が上司を射殺 求刑は懲役25年
彦根市の交番に勤務する当時19歳の巡査が、拳銃で上司を射殺して逃亡する事件を起こし、世間を震撼させたのは昨年4月でした
大津家庭裁判所から検察官送致を受け、起訴された大西智博元被告も20歳になっていますが、犯行当時未成年であったため、新聞やテレビでは匿名扱いです
さて、起訴された大西被告の裁判員裁判が始まっており、検察側は懲役25年の求刑を求めた、と報じられています
滋賀県彦根市の交番で昨年4月、上司の巡査部長(当時41歳)を射殺したとして殺人罪と銃刀法違反(発射、加重所持)に問われた元巡査(20)(当時19歳、懲戒免職)の裁判員裁判の論告求刑公判が4日、大津地裁であった。検察側は懲役25年を求刑した。
この日、弁護側の最終弁論や元巡査の最終意見陳述などを経て結審する。裁判官と裁判員らが評議した上で、判決は8日に言い渡される。
起訴状によると、元巡査は昨年4月11日午後7時47分頃、彦根署河瀬駅前交番で教育係だった井本光あきら巡査部長(事件後、警部に昇任)の後頭部と背中を拳銃で撃って殺害し、実弾が入った拳銃を持ったままパトカーで逃走したとされる。
弁護側は元巡査が適応障害で、犯行当時は善悪を判断する能力が著しく低下し、刑が減軽される心神耗弱状態だったと訴えている。
(読売新聞の記事から引用)
被害者である井本巡査部長(殉職により2階級特進で警部)を批判するのは躊躇われるものの、教育係として大西被告を適切に指導していたなら、本件は起きなかったはずです
大西被告の資質に問題があったと精神鑑定では指摘されているものの、大西被告と井本巡査部長が一緒に勤務したのは5回だけであり、たった5回で拳銃による殺害を決意させるほど精神的に追い詰めた事実を、裁判官や裁判員はどう受け止めるのでしょうか?
単に厳しく指導すればよいわけでもなく、新人巡査を追い詰めるような教育は大間違いであると言わざるを得ません。これではブラック企業と同じです
拳銃の引き金を引いたとき、善悪を判断して行動できる状態だったのか。滋賀県彦根市の交番で昨年4月、教育係だった井本光(あきら)巡査部長=当時(41)、警部に特進=を拳銃で射殺したとして殺人などの罪に問われた元巡査の男(20)=懲戒免職、事件当時少年=の裁判員裁判は1日、元巡査の精神鑑定を行った鑑定人2人が出廷。叱責によるストレスなどで犯行時の判断力が低下していたとする内容の鑑定結果を示した。
起訴内容に争いはなく、元巡査の事件当時の刑事責任能力の程度が最大の争点となっている今回の裁判。
この日の鑑定人尋問で、精神鑑定を実施した臨床心理士は「精神的な疾患がある可能性は低く、平均的な社会適応能力はある」としたうえで、慣れない交番の仕事に無力感と自責の念を募らせるあまり「井本巡査部長の指導が悪い」などと考えて心のバランスをとるようになり、「両親をばかにされたと感じる発言をされ、バランスが崩れた」と犯行に至る心情を分析した。
犯行時の精神状態については、度重なる叱責などによるストレスや睡眠不足から「現実感を失っており、『撃ったら楽になれる』としか考えられない意識狭窄(きょうさく)の状態だった」と述べた。
また、心理士とともに精神鑑定にあたった精神科医は、犯行時の元巡査の状態を「ストレスにうまく対処できない適応障害だった」と分析。「適応障害が犯行に影響を与えたわけではない」とする一方で、「事件当時、元巡査は神経が疲弊し不安定な状態だった。衝動を抑えられずに拳銃で撃った」などと証言した。
公判で弁護側は「元巡査は心神耗弱状態だった」として量刑に配慮を求めており、完全責任能力を主張する検察側と争っている。
証言や鑑定結果を基に裁判所がどのような判断を下すのか。4日には検察側による論告求刑が行われ、8日に判決が言い渡される。
(産経新聞の記事から引用)
大西被告の犯行は凶悪なものであり、それ自体を擁護する気にはなれません
また、大西被告が正常な見当識を有していたなら、「警察官には適していない」と自らを省みて辞職する選択肢もあったのでしょう。が、交番勤務に就いたばかりで日常業務に圧倒され、正常な判断ができる状態ではなかったと想像できます
井本巡査部長はなぜ、それに気がつかなかったのでしょうか?
なぜ、必要以上に大西被告を精神的に追い詰めるような指導をしたのでしょうか?
後ろから拳銃で頭を打ちぬかれた井本巡査部長は、最後の最後まで大西被告の心情に気がつかなかったのだろうと推測されます
犯人を処断するのが裁判の目的ではあれ、裁判官や裁判員も事件の意味を少しは考えてもらいたいものだと思い、取り上げました
追記:1審の大津地裁は懲役22年の判決を言い渡しています。大西被告は控訴せず、そのまま刑が確定しました
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