東映、米中と合作アニメはなぜか「西遊記」
中国で作られるアニメが「西遊記」をベースにしたものばかり、との話を以前に取り上げました(およそ2年で30本以上)。有体に言えば「ドラゴンボール」のような、アクション・ヒーローアニメを作りたいのと、「ドラゴンボール」の成功にあやかりたいのでしょう
しかし、柳の下に2匹目、3匹目のドジョウがいるはずもなく、傑出した作品が生まれる可能性は皆無と言えます
中国国内では大ヒットした「西遊記 ヒーロー・イズ・バック」(邦題)は2018年1月に日本で公開されたものの、話題にすらなりませんでした
いい加減、「西遊記」をベースにしたアニメでヒットを狙うという幻想から離れるべきだと言いたいところですが、今度は東映が中国などと協力して「モンキー・プリンス」なる劇場版アニメをやる、とのニュースがありましたので取り上げます
第31回東京国際映画祭開催を目前に控えた24日、中日映画協力展望座談会で、東映アニメーションは、中国の真好電影有限公司などと提携し、劇場版アニメ「The Monkey Prince(仮)」を製作することを発表した。大ヒットアニメ「ドラゴンボール」シリーズなどを製作してきた東映アニメーションが中国の企業と提携してアニメーション映画を製作するのは今回が初めて。真好電影有限公司の陳永雄総裁によると、同作品は中国の古典「西遊記」から着想を得て、日本や中国のアニメーションチームを中心に、米アカデミー賞ノミネート経験を持つディズニーの監督と脚本家を招き、力を合わせてグローバル市場を見据えたアニメーション映画を製作する。北京青年網が報じた。
「The Monkey Prince」は、東映アニメーション、「正正創作坊」傘下の真好電影、双喜電影、博納影業が共同出資して製作される。また、中国と日本、米国の技術や力を集結させるという。コンテンツの製作を担当するのは東映アニメーションで、ハリウッドで活躍する米国の脚本家が脚本を手掛ける。
そして、近年、台頭する中国のアニメーション人材が製作の重要な部分を担う。グローバル市場を見据えたファミリー向けアニメーション映画である同作品について、制作側の代表者であるジョセフ・チョウ氏と池澤良幸氏は「私たちの目標は、未来のアニメーション製作産業のために新しいルートを作ること。米国のアニメーションスタイルや日本独自の製作システム、中国の新しい人材を組み合わせて一つにして、全く新しい提携スタイルを創り出したい」と抱負を語った。
グローバル市場を見据えたアニメーション映画「The Monkey Prince」は、世界トップレベルの豪華メンバーからなる製作チームが手掛ける。まず、監督は、ジョン・A・デイビス(『ジミー・ニュートロン 僕は天才発明家!』『アントブリー』など)が務め、脚本はアカデミー賞ノミネート経験を持つJ・デビッド・ステムとデビッド・N・ワイス(『シュレック2』、『スマーフ』シリーズなど)が担当する。また、人気ゲーム「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」などで知られる大島直人氏がストーリー、キャラクター原案を手がけ、米国ドリームワークスやソニー・ピクチャーズ・アニメーション作品などで活躍した日本人クリエイター野口孝雄氏がキャラクター・デザインとアソシイエイト・ディレクターを兼任するほか、元ディズニー、ピクサーのプロデューサー、チャック・ウィリアムズ氏も企画開発段階から製作に参加している。
「人民網日本語版」2018年10月26日
記事の末文にはさまざまな人名が並んでいます。これでは誰が指揮を執るのか不明であり、制作チームの足並みが揃うようには思えません
脚本をアメリカ人が手掛ける以上、西遊記とは似ても似つかぬ物語になる予感しかなく、動物系ヒーローの、いつものディズニーかピクサーのアニメになるものと予想されます
時間と制作費の無駄、という気がするだけなのですが
どうしてこんな無謀なプロジェクトを手掛ける気になったのでしょうか?
子供向けなら、「妖怪ウォッチ」と孫悟空のコラボの方がウケるのではないか、と言いたくなります
最近のアメリカ映画は中国べったりで、マット・デイモンを主演させた「グレートウォール」のような謎作品を作ったりしていますが、興行では失敗です(監督は中国のチャン・イーモウですが、原案、脚本はアメリカ人です)
そもそもアメリカ人がなぜ万里の長城でモンスターと闘うのか謎であり、理解できないのですから
今回の劇場版アニメが成功するのかどうか、注目しましょう
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