古市憲寿の芥川賞落選とは

最近、小説への関心が薄くなり、芥川賞や直木賞に言及する機会が減りました
選考に当たる事務当局の戦術なのか、専業作家以外の「話題になりそうな人物」の作品を候補に組み込み、メディアで取り上げてもらおうと企画しているように映ります
今回の芥川賞では、社会学者の古市憲寿の「平成くん、さようなら」(文学界掲載)が候補としてノミネートされており、注目を集めました
小説が売れない時代ですから、話題作りのためあれこれ仕掛けるのも営業努力のうちであり、それ自体を批判する気はありません
しかし、小説としてのどれだけ価値があるのか、読者を惹きつけるものがあるのか、が最も重要であり、「話題づくりありき」では困ります


第160回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)で、最も注目を集めていたのが、芥川賞候補の社会学者でテレビのコメンテーターとしても活躍する古市憲寿(のりとし)さん(34)だったが、16日の選考会であえなく落選した。なぜ受賞を逃したのか。
「がーーーーーん」。古市さんは落選が決まった16日、ツイッターでこの一言だけつぶやいた。
コメンテーターを務めるフジテレビ系「とくダネ!」の17日の放送では、落選決定直後のインタビューも紹介された。候補作に選ばれてからの1カ月を「みんなががんばってねと言ってくれて、アイドルになった気分を味わえた」と振り返った。スタジオでの生放送では「本当は1回で取れるのがよかったのかもしれないけど、また書くテーマがあって書けたらいいなあと思っています」と次回作への意欲を見せた。
候補作の「平成くん、さようなら」(文学界9月号)は安楽死をテーマにした作品で、一昨年秋に母方の祖母を看取った体験をきっかけに執筆したという。
選考過程については9人の選考委員を代表して奥泉光さんから説明があった。投票は9人の選考委員が各作品に「○×△」を付けるが、候補作5作品のうち古市さんの作品は1回目の投票で落選。古市さんの作品に投票したのは△を付けた奥泉さんだけだった。
奥泉さんは「安楽死法が成立している日本という世界の描き方がどこまで私たちがこの生きる世界に対して批評性を持つのかという点になると、首をかしげざるを得ないのかなという風に思いました」と評した。
選考委員からは「時代の先端を行くようなアイテムとかが出てくるわりには小説自体としては古めかしい」といった否定的な意見もあったというが、奥泉さんは「私個人は、人物の描き方、細部にはなかなか魅力があるのではないかと感じた面もある」とフォローした。
選考委員の評について、古市さんはとくダネ!の中で「僕の問題意識を書いたつもりがあったのが届かなかったのかも」と残念そうだった。
(ZAKZAKの記事から引用)


1回目の投票で支持票が1票しか得られなかった…という結果をよくよく考える必要がありそうです。ですが、雑誌「文芸春秋」に毎回芥川賞の選評が掲載されるものの、選考委員全員が選外になった作品についてまで言及することは稀なので、なぜ落選したか理由を探るのは困難でしょう
個々の選考委員に取材するしかないとしても、取材に応じて理由を逐一説明してくれるとは限りません
さて、読者の側としては芥川賞候補に相応しい文学作品とは何か、といった文学論に関心があるわけでもなく、面白い作品に巡り合いたいと願っているのであり、知らない作家の知らない作品に巡り合う機会、として文学賞に期待を寄せているわけです
「賞は逃したけど、一読に値する」と言われれば読んでみたい、と思うのであり…
村上春樹のように芥川賞を逃しても大成する作家もいるのですからそのような読者の好奇心を満たす意味でも、専業作家以外の人たちが書く作品を掘り起こして候補にノミネートさせるのは「あり」でしょう
ただ、先述したように話題づくり優先では困ります
自分としてはテレビやメディアで発信される古市憲寿のトンチンカンな主張に賛同できないため、「平成くん、さようなら」を読んでみようという気にはなれません

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