「精神的日本人」批判に見る中国の焦りと葛藤

「日本のソフトパワーは衰えている」と中国メディアは指摘し、いかにも自分たちの「華流文化」が世界の主流を占めつつあるかのような記事を配信したりするのですが、それは彼らの願望であり、儚い夢なのでしょう
別段、日本の文化が世界の主流を占めていると自慢するつもりはありませんし、そんな発言する日本人は滅多にいないと思います
しかし、上記のように「華流文化は日本文化などより上」だとする中華思想を奉じる現代の中国人にとって、日本文化(ポップカルチャーを含む)を持て囃す風潮は我慢がならないようです
その表れとして、中国メディアや中国政府による「精神的日本人批判」があります中国の国権的行事、全国人民代表大会後の記者会見で王毅外相は、人さし指を振り上げ、怒気を帯びた声で「精神的日本人(日本の文化を模し、日本人のように振る舞う人)は中国人のクズだ」と罵倒しました
中国人の男性が旧日本軍のコスプレをして「武運長久」と書かれた日章旗付きの銃剣や、サーベルを手にポーズを決める写真をインターネット上に公開し、騒動になったことに起因します
以下、大紀元の配信記事から引用します。長文の記事なので、関心のある方は以下のサイトへアクセスし、全文に目を通してください


日本のソフトパワーが生んだ中国の「精神的日本人」
「中国人のクズだ!」全人代の記者会見で王毅外相が言い放ったこの一言で「精神的日本人」(精日)についての関心が日本でも高まった。精神的日本人とは「中国人だけど、精神的に日本人だと思う人」のこと。反日教育が盛んに行われた中国で、なぜ日本人になりたい中国人が急増したのだろうか。
オンライン百科事典・百度百科は、「顔文字を上手に使いこなす」「畳で寝る」「車が通っていなくても、赤信号を渡らない」と精日の生態を説明した。他にも日本人名を名乗ったり、割り込みをしない、運転時に相手に進路を譲るなど、彼らは日頃、日本人として振舞っている。アニメやゲームを楽しむうちに日本語を流暢に操るようになった人が多い。
精日の主力は90年代、00年代生まれの若者たち。ここまで日本に傾倒した一因について、日本のアニメ、ゲームの影響のほか、ある「精日」の男性は「中国には日本を紹介するまともな映画も本もなかったからだ」と大紀元に語った。
日本は中国人にとって「近くて遠い国」。反日教育の影響で、日本の電気製品は好きだが、日本人は好きになれない。というより、日本人をよく知らない。アニメで見たセーラー服を着る女子高生、花火大会での愛の告白、自転車で花畑を駆け抜けるデートシーン、中国の若者にとって新鮮で憧れでもある。
一方、中国の国産映画は共産党の審査制度によって尊大な自画自賛なものや、誇張に描いた抗日戦争のドラマばかりだった。現実離れのプロバガンダ宣伝は若者の心を掴むことができなかった。
中国最大のQ&Aサイト「知乎」の「なぜ精日現象が起きたのか」のスレッドで、ある回答者はこう書いた。「(共産党が作り出した)中国の文化が若者の支持を得られないなら、日本文化に陣地を取られても文句は言えない」
さらに、この回答者は「外国文化を排除し、国民に洗脳教育ばかりしていれば、行き過ぎた精神的日本人が生まれる」と文化面の遅れが一番の原因と指摘した。
別の回答者は「この30年間、中国のアニメ、ゲーム、映画はお説教ものばかり。日本や欧米の娯楽文化は子どもにとって唯一の選択となった。ドラえもん、トムアンドジェリー、スポンジボブ、ガンダムのおかげで、楽しい子供時代を過ごすことができた。
当局の”努力”によって、文化において欧米との距離は拡大する一方だ」と精日現象は文化の失敗、宣伝の失敗だと批判した。
ある精日と思われる回答者は「精日は先進文化を中国で広めているだけだ。日本好きになったのは日本が中国の伝統文化を継承したからだ」と動機を説明した。「文化による影響は10年、20年と長く深く浸透していく。戦争よりも強力な武器だ。日本のソフトパワーは大成功した、と認めざるを得ない」
(以下、略)


すでに当ブログで何度も言及したように、中国のアニメは少年少女の恋愛を描いてはいけないという掟に縛られており、結果退屈なものにならざるを得ません。中国政府がアニメに求めるのは「垂訓」であり、少年少女に道徳観を付与する内容でなければならず、恋愛は反道徳的なものとして排除されます
日本の萌えを強調したアニメもどうか、とは思うのですが、少年少女の恋愛をストレートに描いたアニメは、中国の青少年にとってまぶしく映るのでしょう
ですから王毅外相がいかに精神的日本人を攻撃しようとも、道徳規範を叫ぼうとも、青春の情動を消し去るのは困難であり、しらけるだけです
ならば中国式に少年少女の恋愛を描いてはどうか、と言いたくなるのですが、それも困難であるのは言うまでありません
せいぜい、社会主義世界建設の情熱に燃えた少年に、同世代の少女が熱い同士愛を抱き、ともに理想に向かって手を取り合い、歩み出すという「俺たちの闘いはこれからだ」風のアニメになるだけの予感がします
手を握る描写だけで「精神的日本人」と攻撃されるのなら、たまったものではありません
中国共産党は科学的社会主義の理想を実現すると宣言しているものの、それを体現するような少年少女向け恋愛アニメは作れないのであり、文化的な限界に直面しているのでしょう
いくら「精神的日本人」を批判したところで、その文化的限界を超えられないのであり、内に抱える欠落を補ったりはできません。補うには日本のアニメを見るしかない、という矛盾を彼らは解決できず、焦っていると感じるのです
恋愛を描くにはさまざまな手法、表現があるのですが、いまだに中国アニメにはそれができないのです
参考までに「めぞん一刻」を紹介しておきます

めぞん一刻 「5分で管理人さんの魅力を堪能する」(夏)

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