韓国メディア「王とポルノが共存する日本精神の深層」
自分が精神分析を進んで学ぶようになったのは、さまざまな問題行動を起こす少年少女と接する仕事に関わる中で、彼ら彼女らを理解する手段としてラカン派の精神分析理論がしっくりくる、と感じたためです
それからラカン派の精神分析関係の文献のみならず、クライン派の文献や構造主義など現代思想関連の著作を読み漁ったものです
個人を対象として、その言動を注意深く観察し、解釈を投げかけ、反応を探る臨床の場を経てこそ精神分析の何たるかを理解しうると考えるのですが、しばしば「臨床体験」抜きで「精神分析」を語る人がいて大いに疑問を感じます
今回取り上げるのは、韓国の大学教授の著作「日本の精神分析-ラカンと共に文化コードで読むイメージの帝国」を紹介する韓国メディアの記事です
タイトルからして、ロラン・バルトの「表徴の帝国」や、難解で知られるラカン派精神分析学を映画やオペラや社会問題に適用してみせ、一躍現代思想界の寵児となったスロベニアの哲学者スラヴォイ・ジジェクの著作を連想します
日本語に翻訳される機会はないと思われますので、内容を確かめるのは不可能ですが、興味が湧きましたので取り上げます
元記事が韓国語なので、いつものようにインターネットの掲示板「5ちゃんねる」に貼られた蚯蚓記者の翻訳を引用させてもらいます
日本のどの書店でも本棚の一隅を満たす日本人論、日本文化論の本は日本ほど自分のアイデンティティを深く掘り下げる民族もないことを見せる断面だ。
他人に迷惑をかけてはいけない、という秩序強迫観念と過度に暴力的で寛大な性文化が共存する日本という国の無意識には何があるのだろうか。
10冊余りに達する日本関連著書を出すなど日本専門家のパク・ギュテ漢陽大学日本言語文化学科教授が日本の精神分析を実施した。
彼はフランス精神分析学者、ジャック・ラカンの概念と「もののあわれ」等日本文化論を通じて日本人の抑圧された無意識が見せる「間隙」で機能する映画とアニメを分析する。
特にこれらの作品に現れるアイデンティティの危機と主体の成長、性的過剰と関連した欲望の問題など、現代日本社会が経験する問題が投影された主題を探索していく。
パク教授が見せる日本のアイデンティティをめぐる亀裂は、まるで玉ネギのように中身がない事を見せる。実在しない固有性を作り出すために天皇制の様な象徴的権力を強化して集団アイデンティティを強調する禁止社会の属性を帯びることになる。
この様な禁止社会を維持するためには不満を緩和する必要があり、私的方式で欲望を追求するようにさせて刺激的で倒錯的な欲望が強くあらわれるポルノ、映画、アニメが発達したということだ。
園子温の<自殺サークル>や新海誠の<君の名は>、庵野秀明の<新世紀エヴァンゲリオン>、宮崎駿の<もののけ姫>等、韓国でも良く知られた作品だけでも興味を誘う。
(ハンギョレ新聞の記事の翻訳)
そもそもこの著作は誰を分析した結果なのか、あいまいです。著者であるパク教授の日本人観を述べただけで、そこに個々の日本人が存在しているようには思えません
つまり臨床抜きで、自身の抱く日本人観をそれらしく理論付けして並べただけなのではないか、と推測します
天皇制に関しても、戦前と戦後の天皇制は大きな違いがありますし、日本人の抱く天皇の存在も時代とともに変化しています。ですが、パク教授がどこまで理解しているかは不明であり、杓子定規な天皇制理解を超えているのかどうか?
「実在しない固有性を作り出すために天皇制の様な象徴的権力を強化して集団アイデンティティを強調する禁止社会の属性を帯びることになる。この様な禁止社会を維持するためには不満を緩和する必要があり、私的方式で欲望を追求するようにさせて刺激的で倒錯的な欲望が強くあらわれるポルノ、映画、アニメが発達した」との部分で思わずのけぞってしまいます
「それでアニメが発達するとか、どんな社会だよ」と突っ込みたくなります
確かに庵野秀明の「エヴァンゲリオン」は、私的で倒錯的な欲望を語るに適した素材でしょうが、あくまで庵野秀明の倒錯的な欲望を示したもの、と解釈するのが妥当であり、「エヴァンゲリオン」を知らない70歳以上の日本人をも含めるのは無理があります
また、宮崎駿の私的で倒錯的な欲望を語るのなら「もののけ姫」ではなく、「風立ちぬ」を選んだ方が適切でしょう。「戦闘機好きの少年が、ただひたすら戦闘機を作りたかった」=「アニメを作りたかった」と直に解釈できます(是非はともかく)
宮崎駿自身、「トトロ」や「もののけ姫」を見た人から、「自然大好きな、スピチュアルなおじさん」と思われるのを嫌悪しており、物語がすなわち個人の精神を表徴していると安直に決めつけるのは大間違いです
ちなみにラカンは、「日本人は分析不可能だ」と言い残しています。パク教授はこのラカンの発言をどう理解するのでしょうか?
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