高槻少女殺害事件を考える13 山田被告が土下座

公判前に裁判官、検察官、弁護人が争点整理の協議をし、できるだけ速やかに公判が進むよう手続きをするのが現在の刑事裁判のやり方です
寝屋川市内に住む中学生2人を誘い出し、殺害した上で遺棄した疑いで起訴された山田浩二被告の場合、争点整理の協議は30回近くに及んだとされ、それだけ検察と弁護で争点が多かったわけです
本日行われた初公判の罪状認否質問で、当然ながら山田被告は全面否認するものと思われていました
争点整理でも「殺害には関与していない」と、一貫して殺害容疑を否認し続けていたからです。しかし、山田被告は裁判官の制止を聞かず、いきなり法廷で土下座するというパフォーマンスに出て波乱の幕開けとなりました


「経緯はどうあれ、死の結果を招いてしまい、申し訳ありません」。平成27年8月に大阪府寝屋川市の中学1年の男女が殺害された事件で1日午前、始まった初公判。
山田浩二被告(48)=殺人罪で起訴=は開廷後、いきなり発言すると土下座し、涙を流した。
だが、裁判長の制止も聞かず滔々と連ねた言葉は、遺族感情に配慮したものだったのか。被告の突然の謝罪の真意はどこにあるのか。事件には残された謎も多い。全11回の公判で真相解明が期待される。
午前10時ごろ、大阪地裁で最も大きい201号法廷。明るい緑色のつなぎ姿で入廷した山田被告は、裁判長に証言台に進み出るよう促されると突然、「ご遺族の人いますね?」と話し出した。
あっけにとられる傍聴席。山田被告は、遺族が座っているとみられる検察側席のついたてに向かって土下座し、涙を流しながら「このたびは、経緯はどうであれ、死の結果を招いてしまい、申し訳ありませんでした」と続けた。
裁判長がやめるよう再三注意したが、山田被告はさらに「本来ならご遺族の顔を見て謝罪すべきだが、遮蔽されているので、できません。声なら届くと思うので」などと述べた。
裁判長が指示に従わない場合は退廷を命じることを告げた後、冒頭手続きが始まり、山田被告は、被害者の一人、平田奈津美さん=当時(13)=について「殺すつもりはありませんでした。気がついたら、私の手が首に触れていました。そのときには亡くなったような気がしました」と起訴内容を否認。もう一人の星野凌斗(りょうと)さん=同(12)=についても「起訴状には殺人とあるが、殺意はまったくありません」と殺意を否定した。
(産経新聞の記事から引用)


殺人罪で有罪にするには殺意の有無が存在したかどうかが判断の基準になる、というのが日本の刑事裁判のやり方です。被告が殺意を否定しても、殺害方法や被害者の傷の程度、状況などから殺意を認定することもあります
殺害方法や殺害に至った経緯が判然とせず、凶器も発見されていない本件では、殺意があったと検察が立証するのは困難と報道されており、山田被告も弁護人からそう聞かされているのでしょう
ですから殺人罪には問われない=死刑はないとの前提で、山田被告は「殺してはいないが、2人の死に責任は感じている」と法廷で土下座し、反省を強調するための土下座をしたと推測されます
山田被告と弁護人は殺人罪ではなく、保護責任者遺棄致死罪に問われるべきだ、と争点整理では主張していました。殺意はなく、過失だったという主張です
保護責任者遺棄致死罪は法定刑が3月以上5年以下の懲役ですが、故意にこれを行った場合は殺人罪の適用もあります(幼児を自宅に放置し、衰弱死させた場合等)
山田被告は、「殺害したのは車に同乗していた男」だと取り調べの中で供述しており、公判でもこの「同乗していた男」について何か申し立てるのでしょうか?
どのような展開になるか、注目しましょう

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