今市女児殺害控訴審 一審破棄し無期懲役判決
2005年に小学1年生の女子児童が殺害され、遺棄された今市事件の控訴審判決があり、東京高裁は1審宇都宮地裁判決に異例とも言えるほどの批判を加えてこれを破棄した上で、あらためて「間接的証拠により被告が犯人だと認められる」として無期懲役を言い渡しています
東京高裁の主な批判は、1審の宇都宮地裁が取り調べ過程を撮影したビデオを証拠として扱ったことが判断を誤った…というものです
平成17年に栃木県今市市(現日光市)の小1女児を殺害したとして、殺人罪などに問われた勝又拓哉被告(36)を1審宇都宮地裁の裁判員裁判判決に続いて無期懲役とした3日の東京高裁判決で、藤井敏明裁判長は、「供述内容が信用できるか」という自白の信用性を判断するために取り調べの録音・録画を用いることには「強い疑問がある」と述べた。「印象に基づく直感的な判断になる可能性が否定できず、取り調べ録画を使ったことが1審が判断を誤った要因の一つだ」とした。
藤井裁判長は1審を破棄した上で「間接証拠などから、被告が殺害の犯人だと認められる」として、改めて無期懲役を言い渡した。
1審では、検察側が取り調べ録画を、犯罪自体を立証するために調書に代わって用いる「実質証拠」として請求。地裁は、供述の信用性を判断するための「補助証拠」として録画を用いることを提案し、検察側、弁護側の了解を得た。
録画はあくまで補助証拠で、犯罪事実の立証には供述調書を使うという位置付けだったが、藤井裁判長は「現実の心証形成は、録画を視聴することで直接的に行われる」と指摘。「裁判所から、あたかも調停案のように、録画を信用性の補助証拠とすることを提案すべき筋合いではなかった」と地裁の対応を批判した。
その上で、録画を使った信用性判断では、「取調官に強制された供述か」「自発的な供述か」という単純な二者択一に陥り、勝又被告の自白のように「自発的だが、内容は虚偽の供述」が見落とされる危険性があると指摘。供述に秘密の暴露があるか、客観的な事実と整合するかなどを含めて多角的に検討し「自白供述から適切な距離を保って、冷静に熟慮することが肝要」とした。
(産経新聞の記事から引用)
控訴審が異例なのは上記の「取り調べ時のビデオ」の扱いにとどまらず、検察側の主張してきた殺害場所、殺害日時に疑念を提起し、これを変更させるという指揮権発動にも現れています
殺害現場とされた山林に被害者の血痕がわずかしか残っていないことを踏まえ、実際の殺害は他の場所で行われた可能性が考えられたため、殺害場所と時刻に幅を持たせるよう検察側に迫り、変更の申し立てをさせるという異例の措置がありました
かくして1審である宇都宮地裁の判決にダメ出しをし、その判断を否定した上で「間接的な証拠」により勝又被告に無期懲役を言い渡しています
「間接的な証拠」としては、遺体発見現場が地元の人も利用しない間道であり、勝又被告の車が犯行時刻とされる時間帯にそこを通行している事実、があります
この事件を巡る報道では、朝日新聞が冤罪説に傾いた報道をしており、毎日新聞も自白強要による冤罪ではないか、との視点で報じています
しかし、冤罪と断定するだけの決定的な事実、があるわけでもなく、「ならば誰が少女を連れ去り、殺害し、遺棄したのか」という疑問が残ります
真犯人がいるとして、地元の人も利用しない間道に車を乗り入れ、遺体を遺棄しているのならばその車が付近のカメラに映っていなければなりません
上記のように冤罪説を主張する朝日新聞が、控訴審判決をどう解釈したかについては、あらためて取り上げます
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