オウム死刑囚2人の残した手記

毎日新聞の配信記事で、先日死刑が執行されたオウム真理教教団幹部早川紀代秀と新実智光が手記を残していた、と記事にしています
手記と表現するからには事件への思いなど、まとまった文章を残していると推測されるのですが、残念ながら記事にあるのはその断片だけであり、何ともとらえようがありません。新聞にも紙面の都合がある以上、全文を掲載とはいかないのでしょう
しかし、切り取った断片だけで、記事として何かを主張するのは無理があります


オウム真理教による一連の事件に関与し、今月6日に死刑が執行された早川紀代秀元死刑囚(68)と新実智光元死刑囚(54)が、事件への反省と謝罪を手記で書き残していたことが明らかになった。市民団体「死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90」が25日付の会報で公表した。死刑制度への疑問も表明するなど、揺れる胸中をうかがわせている。
早川元死刑囚は6月7日付の手記で、死刑制度について「国民が殺生のカルマ(業)を負うので、やめるべきと思います」と指摘。実行役の一人が無期懲役となった地下鉄サリン事件を念頭に「自分では一人も殺していない者が死刑で、自分で二人も殺している者が無期というのは、どうみても公正な裁判とは言えません」と判決に疑問を呈した。
一方で事件そのものについては「申し訳なさは、事件発覚から23年たった今も薄れることはありません。真理のため、救済のためと思って戦い、テロを実行して得られたものは苦しみと悲しみでした」と振り返った。
新実元死刑囚は、5月以降に法務省に出したとみられる恩赦関連書類を市民団体にも送付していた。書類で事件について「私たちの徳が無かった、霊性と知性が足りなかったのでしょう。深く反省しています」と記載。死刑については「どんな悪人であろうが、生きて償うことの方が、慈愛に満ちた行為の選択」「私は自分の命を大切にし、他者の命を大切にすることを誓願します」などと執行への疑問をつづった。市民団体には「自分に万一のことがあれば(記載内容を)公表してほしい」と伝えていたという。
(毎日新聞の記事から引用)


毎日新聞は死刑廃止を訴える側にあるので、この記事は「オウム真理教幹部たちは真摯に反省し、悔いている。彼らの死刑を執行するべきではなかった」と主張したくて書かれたものなのでしょう
しかし、毎日新聞の言うところの、「死刑制度への疑問を表明する」部分は、かなり勝手な言い分に聞こえます
曰く、死刑制度について「国民が殺生のカルマ(業)を負うので、やめるべきと思います」との主張は、国民を恫喝したいのでしょうか?
死刑制度は国家としての機関が果たす役割であり、個々の国民が殺生のカルマを負ったりはしません。国民が死刑囚1人、1人の死に責任を負うなどということはないのです
新実死刑囚の、「「私は自分の命を大切にし、他者の命を大切にすることを誓願します」とは恩赦を期待しての発言なのでしょうか?
他人の命を踏みにじった男が何をいまさら、と思ってしまいます
我欲を捨てるため出家し修業をしていたはずの人間が、自分の命に執着するというのは理解に苦しみます。強いて推測すれば、自分の命を大切さを思うことで、他者の命も尊重する必要があると今更ながら気づいた、という話なのでしょうか?
死生観はそれぞれであり、論評する対象ではないのかもしれません
それでもオウム真理教の一連の事件(立件されていない信者殺害も含め)の責任として、自らの命を差し出し、けじめをつけようとする気持ちになれないのが不思議です
どこかのメディアが手記の全文を掲載してくれるのを期待しましょう

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