女性受刑者手錠かけられまま出産という記事
毎日新聞の記事で、女性受刑者が手錠をかけられたままの出産を強要されている、と伝える内容がありましたので取り上げます(2014年に通達によって、出産時の手錠使用はしない、と改正されています)
記事の扱いがテレビドラマで度々見られる「女刑務所シリーズ」のような、人情に訴え,視聴者(この場合は読者ですが)の同情をひく狙いが露骨です
覚せい剤取締法違反の罪で2010年から2年半にわたって笠松刑務所(岐阜県笠松町)に服役していた30代の女性が毎日新聞の取材に応じた。妊娠していた女性は服役中、移送先の病院で出産したが、手錠をはめられた状態で分娩(ぶんべん)台に上がった。
「手錠があったことで出産が苦しい思い出になった」と振り返る。法務省は14年12月の通達で出産時には手錠を外すとの統一方針を打ち出したが、それまでは妊娠中の受刑者や被告の多くが、手錠を付けての出産を強いられてきた。
女性は09年4月、覚せい剤取締法違反(使用)の罪で有罪判決を受けた。薬物依存から抜け出せず執行猶予期間中の10年6月に再び同法違反容疑で逮捕された。女性は当時、妊娠していたが、同年9月に懲役2年6月の実刑判決を受け、同10月から笠松刑務所に入所した。
服役中の11年5月、陣痛が始まり、岐阜市内の民間病院に移送された。分娩台に上がる際、二つの輪を重ねた手錠を片方の手にはめられ、手錠に結ばれた捕縄を持った女性刑務官が出産に立ち会った。無事に女児を出産したが、女性は「こんなところまで手錠をしなければならないのか疑問に思った」と振り返る。
療養期間中、病室で赤ちゃんと過ごす際も逃亡の恐れがあるとして手錠をかけられ、捕縄を持った女性刑務官に監視された。「手錠同士が重なり合うカチャ、カチャという音が子どもに刻まれたらどうしようという不安、苦しさを感じた」
◇ ◇
刑事収容施設法は受刑者が刑事収容施設外にいるなど逃走の恐れがある場合、捕縄や手錠を使用できると定める。拘置所や刑務所に入所する女性が出産する場合、原則として刑務所外の病院などで出産するとしている。女性受刑者の出産は各刑務所の判断で決めることになっていたが、女性を収容する全国10刑務所(17年8月から11刑務所)のうち和歌山、加古川(兵庫県)、麓(佐賀県)の3刑務所を除く7刑務所が、14年に法務省が通達を出すまで受刑者に手錠を付けたまま出産させるなどしていた。
見直しのきっかけは、笠松刑務所で出産を控えていた別の女性受刑者が14年、夫に出した一通の手紙だった。手錠を付けられたままの出産への不安や疑問を手紙で夫に訴えた。夫が刑務所や関係機関に働きかけた結果、女性は14年11月、手錠なしで男児を出産した。
この話を聞いた当時の法相が出産時の手錠使用を禁じるよう指示。法務省は同年12月26日付で「新たな生命の誕生に臨む受刑者の心情について検討した結果、出産時は手錠をしない取り扱いとする」との通達を各拘置所や刑務所に通達した。
(毎日新聞の記事から引用)
生まれてくるこどもに罪はないのは明らかですが、出産する母親は受刑者です
逃亡の恐れありとして手錠を使用する判断を批判し、「せめて出産のときくらいは外すべき」だと世間の同情を買おうとの狙いが文面から漂ってきます(実際、手錠使用を見合わせる通達が発出済みなので、なぜ今になってこの記事を掲載するのか、不可解です)
そもそもこの女性受刑者は、「覚せい剤中毒の状態で妊娠したなら、こどもの身体に悪い影響がある」と分かっていたはずです。だから中絶しろ、とは言いませんが
刑務所での出産(実際は刑務所外での病院での出産)を、何やら美化する狙いがあるかのようで、気持ちの悪さをこの記事から感じてしまいます
他方で、刑務官は病室にまで付き添い、24時間監視を続けなければなりません。人員に余裕がない状況で、病院に付き添う人員を割く必要に迫られるのですから、刑務官にとっては負担となり、さすがに非番返上はないのでしょうが、指定休返上で勤務を強いられるのは日常茶飯事です(病室で監視するのに1人勤務ではトイレにも行けないので、最低でも2人1組で勤務させなければならず、その2人の勤務者を捻出する苦労を記事を書いた記者は理解できないのでしょう)
自分の知人である女性刑務官は、妊娠中の勤務の負担による流産を経験しています
女性受刑者の出産を厄介事扱いする気はないのですが、生まれてくるこどもにとっても刑務官にとっても大きな負担になる…という事実を踏まれた上で、人情噺のような扱いにすべきではないと感じましたので取り上げました
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