筋弛緩剤事件 仙台高裁が再審請求棄却

1999年から2000年にかけて、仙台市の北稜クリニックで起きたいわゆる筋弛緩剤事件で、5人の患者に対する殺人及び殺人未遂で無期懲役判決を受けた守大助受刑者の申し立てていた再審請求を、仙台高等裁判所が棄却したと報じられています
守大助受刑者は当時、北稜クリニックに勤務する准看護師でしたが、待遇に不満を抱き、患者に筋弛緩剤を投与して呼吸困難の状況に至らしめて、自身が気道内に呼吸チューブを送管して救命措置を行ってヒーローになり存在をアピールするために犯行を繰り返した…と仙台地方裁判所は断定し、無期懲役を言い渡しています
守大助受刑者は逮捕後、一度は犯行を自供したもののその後は否認に転じ、無罪を訴え続けています(守受刑者が犯行を認めたのは当時11歳の少女に対し、筋弛緩剤を投与した、という1件のみ)


仙台市泉区のクリニックで2000年に起きた筋弛緩(しかん)剤点滴事件で、患者5人に対する殺人や殺人未遂の罪に問われ無期懲役が確定した元准看護師、守大助受刑者(46)の再審請求について、仙台高裁は28日、請求を棄却した仙台地裁決定を支持し、再審開始を認めない決定をした。弁護団は最高裁に特別抗告する。
決定理由で嶋原文雄裁判長は、弁護団が「点滴や患者から筋弛緩剤の成分を検出したとする警察鑑定に誤りがある」として提出した新鑑定を「根拠が薄弱で、警察鑑定の信用性を揺るがすものではない」と指摘した。
確定判決によると、守受刑者は00年2~11月、勤務先だった北陵クリニック(閉鎖)で、呼吸抑制を引き起こす筋弛緩剤を点滴に混入。下山雪子さん(当時89歳)を窒息死させたほか、当時11歳の少女を意識不明に陥らせた。別の3人も呼吸困難などの症状が出たが救命措置で助かった。
守受刑者は逮捕直後、容疑を認めた。4日目から否認に転じ無罪を主張したものの、08年3月に無期懲役が確定。「原判決に合理的な疑いがある」として仙台地裁に再審請求したが14年3月に棄却され、仙台高裁に即時抗告した。
(毎日新聞)


起訴され有罪となったのが5件ですが、北稜クリニックでは1999年から計20件もの原因不明の容態急変事案が発生しており、いずれも守大助受刑者が同クリニックに勤務して以降に起きています
クリニックの医師が守大助受刑者と、もう1人の女性看護師の関与を疑い、警察に相談したのが事件化のきっかけとされます
テレビの情報番組「ザ・スクープ」がこの事件を取り上げ、冤罪であると強調したため守大助受刑者に同情が集まり、現在ではほぼ冤罪事件との扱いがされるに至っています。が、これもメディアの影響が大きく、冤罪に同情する風潮と相まって、守大助受刑者を救おうとの署名運動に20万人が賛同し、署名を提出しています
患者の容体急変がすべて筋弛緩剤投与によるものかどうか、後日患者の血液を採取したところで立証は困難です(体の外へ筋弛緩剤の成分が排出されてしまうため)
守大助受刑者は気道を確保するためのチューブ挿入を得意としており、クリニックの女性医師を「下手くそ」だと批判していた、とのエピソードもあります
つまり、「救急救命措置を講じられる自分の方が、医師より仕事ができる」と言いたかったのでしょう
そこは准看護師という立場であるがゆえ、正看護師よりも下の扱いを受けていた守受刑者の鬱屈が感じられます
インターネットで検索をかけると守受刑者の無罪を訴えるブログなど、数多く出てくるのですが、冤罪という前提に立って書かれているものが多く、参考にするには躊躇われます
「警察の捜査や裁判によって冤罪が作られる」と言えるように、「メディアによって冤罪が作られる」とも言えますし、メディアの印象操作によって有罪事件を冤罪であるかのように視聴者に刷り込むことも可能です
この筋弛緩剤事件については、また別の機会に取り上げるつもりです

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