大阪多重人格殺人で懲役16年の判決2 人格障害認めるも有罪

多重人格、二重人格という表現が一般的に使われていますので、ブログの記事のタイトルも多重人格と記述しています
さて、解離性同一性障害とされる症状を刑事裁判で認めたレアなケースを紹介する第二弾です
同じように、産経新聞の特集「衝撃事件の核心」から引用します


「私には6つの人格がある」多重人格“和製ビリー・ミリガン”の法廷告白 交際女性を殺害したのは誰だ?
(前回からの続き)
次の映像では丁寧で物腰の柔らかい口調で「事件のことは自分自身すごく知りたいのに覚えていない」と述べた。「恭」や「彼」でもなく、全く別の人格のようだ。
最後の取り調べ映像に出てきたのは「にゃーにゃさん」だった。事件のことは知らないとし、捜査員から「●●さん(被害者)って知っているやろ。その人を殺害したという事実で逮捕されている」と言われても、「…。僕がですか? えっ本当に? さっ殺害? えっ殺したってことですか? 絶対にやっていません」と否認していた。
6人の人格が存在するというのは、真実なのか。法廷で証言した精神科医2人の判断も分かれた。
いずれも精神科医として20年前後の経験があるベテラン。起訴前後に2回、隅田被告を精神鑑定した医師は「被告が訴える症状は文献の症状と合致する。内容も具体的で、本や他人の体験談を聞いただけでは到底できない説明をしている」として、病気に罹患(りかん)していると断言した。
一方、もう1人の医師は「面接でも『詐病(さびょう)ではない』と発言するなど診断に不満を抱く態度は不自然」などとし、人格が交代したとの隅田被告の主張は虚偽だと断じた。
「キャラクターの使い分けをしていただけで病気ではない」。検察側は「残虐性が際立つ極めて悪質な犯行」として懲役18年を求刑した。
迎えた11月2日の判決公判で飯島健太郎裁判長は懲役16年を言い渡した。隅田被告の主張は、虚偽と判断されたということなのか。
判決で示されたのは「解離性同一性障害に罹患しているものの、完全責任能力が認められる」というものだった。
隅田被告を多重人格とした精神科医について、複数回面接していることや、隅田被告が他人に見られることを想定していないメモ帳に多重人格を思わせる記載をしていたことなどから判断していた点を踏まえ、「判断の根拠は説得的」として精神科医の証言の信用性が高いと認定した。
その上で判決は、「人格同士の解離の程度は不十分で、犯行時も周囲の状況に応じて合理的な行動をとっており、行動制御能力に問題はなかった」とし、動機は単に「別れ話を切り出された絶望や怒りの感情」と指摘。「被害者に殺されるような落ち度はなく、身勝手な犯行」と断じた。
被告人質問で反省の気持ちを問われて「意識はしているがそこまでたどり着けない」と答え、女性の遺族について「できれば遺族の望む判決にしてほしい。下された判決に従うのが償い」と答えていた隅田被告。最終意見陳述では「私自身(法廷での人格)が殺していない証を、心神耗弱として残していただければ、(遺族が望む)無期懲役でも構いません」と述べていた。
判決は、望み通り多重人格が認められる結果となったが、弁護側は判決を不服として控訴した。


別人格が殺人をしたのであり、当時は心神耗弱だったと認めた判決ならば無期懲役でも構わない、と被告は述べたことになっています(弁護側の主張は、「当時の犯行は別人格によるものであり、心神喪失状態に当たるので無罪」でした)
しかし、裁判官は事件当時の人格が現在とは別であることを認めながらも、「事件当時の人格で責任能力の有無を判断すべきだ」と指摘しています
つまり人格に責任を負わせるのではなく、人格が交代していようとあくまで隅田被告自身に責任があるとの判断です
この判断を控訴審でも認めるかどうか、注目しましょう
解離性同一性障害の殺人犯として知られる結果となった隅田被告のところには、さまざまなジャーナリストが接触し、面会を求めたり手記を発表しないかなどなど持ち掛けているのでしょう
ただし、判決では解離性同一性障害と認めたものの、鑑定医の1人は詐病と判断していますので、どのように解釈するかは難しいところです
隅田被告は心神耗弱と認めなかった判決に不服なので、手記でも発表して解離性同一性障害である自分を大いにアピールし、世間の同情を得て控訴審判決が有利になるよう動くのかもしれませんが

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