和歌山小5刺殺事件を考える9 控訴審を前に

紀の川市で起きた小学5年生の男児刺殺事件で、中村桜洲被告は懲役16年の判決を受けましたが、量刑不服として控訴しています
中村被告の父親は密教学者でもある高野山大学教授の中村本然ですが、すでに退職しています。大学に迷惑がかかるからなのか、父親として、あるいは僧侶として何か考えるところがあったからなのかは不明です(メディアの取材にも応じていないのでしょう)
毎日新聞は殺害された森田都史さんの父親に取材をし、控訴審前の心境を記事にしています
一審での求刑は懲役25年でしたが、中村被告が心神耗弱状態にあったと裁判官が認定したため判決では懲役16年が言い渡されており、父親としては息子の命があまりにも軽く扱われていると、憤懣やるかたない思いを語っています


和歌山県紀の川市で2015年2月、小学5年の森田都史(さん(当時11歳)が殺害された事件で、控訴審の初公判が23日、大阪高裁である。殺人などの罪に問われた中村桜洲(おうしゅう)被告(25)は和歌山地裁で懲役16年の判決を受けたが、控訴審も1審同様に事件当時の精神状態と量刑が争点になるとみられる。
「命は風船のように軽い」。都史さんの父親(69)が取材に応じ、愛息を失った無念さを訴え、厳罰を求めた。
父親は都史さんの遺骨を今も手元に置いている。好物の目玉焼きとウインナーを供えるのが日課だ。菓子やおもちゃもあふれている。「今も一緒に暮らしているから」
昨年3月の1審判決で、中村被告がふてくされた様子で退廷する姿が忘れられない。
「(罪の重さを)分かっているからあんな態度になったんだと思う。被告にはまっとうな責任能力があるのでは」。判決は事件当時に心神耗弱状態だったと認定したが、受け入れられないでいる。
父親は同年7月、都史さんの「14歳」の誕生日を、高校生の長男(15)と祝った。部屋を飾り付け、ケーキを用意して都史さんが大好きだったアニメソングを歌った。「都史、次は何を歌おうか」。声を掛けると、たまらなく寂しくなった。
控訴審を控え、昨年12月に大阪高検に陳述書を提出。「1審の判決理由には、こんなに(刑を)軽くされる根拠は全然なかった。都史の命は、風船のように軽い。最も重い刑罰が与えられることを望んでいる」などと記した。
裁判が終わるまで納骨はしないと決めている。「まだ良い報告はできない」。遺影の中でほほ笑む都史さんを見つめた。
(毎日新聞の記事から引用)


記事の文面からだけでは、中村家から謝罪なり慰謝料の支払いがあったのか不明であり、「何だかな」と思ってしまいます
刑罰を受け入れられていない、との心境からすれば、何の謝罪も補償も受けていない可能性が考えられます(取材するなら記者としてそこへ踏み込むべきでは?)
当然、中村被告の両親も取材には応じなかったのでしょうが、それも触れてもらいたいところです。字数の都合もあって、取材した内容の数分の1、程度しか掲載できないのは分かりますが
中村被告としては量刑云々より、自分が被害者から被った数々の揶揄、嘲笑について裁判官や裁判員に分かってもらえないのが悔しいのでしょう(その思いを明確に言語化し、公判の場で申し立てるだけの能力が欠如しているのですが)
他方で被害者の父親は、中村被告の態度をふてぶてしいと感じており、謝罪の意思が見えないことに苛立ちを募らせています
判決とは別に、両者の思いの食い違いを整理し、埋め合わせる方策が必要なのでしょう。が、日本の刑事裁判はそのような機会を設けていません
民事訴訟の場で、和解のための調停を進めるのならば多少なりとも溝を埋められる可能性はありますが

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