座間9人殺害事件を考える 連続犯行の理由

連日、さまざまな報道がされる座間市での連続殺人事件では、殺害された被害者がどのような人物であったか、そのプライベートな部分に踏み込んだ記事が目につくようになってきました
こうした被害者のプライバシーに踏み込んだ報道に関して、「そっとしておいてあげるべきではないか?」との意見が数多く発せられています
メディア側の事情としては世間の関心が高い事件だけに、報道の量(ボリューム)を確保する必要があるため、9人の被害者の情報を掘り起こしているのでしょう
逆に白石容疑尾者に関して警察から流される情報が減っているため、そちらで報道量を確保できないから、とも言えます
白石容疑者の父親や別居していたと伝えられる母親も消息をくらまし、メディアはそちの取材ができないという事情もあります
さて、新聞・雑誌メディアが紙面を埋めるもう1つの方法が、有識者の見解を拾って記事にすることです
すでにこの事件に関する有識者の見解をいくつか紹介したところですが、本日はさらにもう1本の記事を取り上げます
数多くの犯罪者と接見し、心理鑑定なども担当している長谷川博一・こころぎふ臨床心理センター長(とある研究会の場で一度、お目にかかったことがあります)の見解を産経新聞がまとめています


「殺害目的でロフト借りた」「ロフトにかけたロープで首をつった」週1回ペースで殺害遺体解体の連続殺人
神奈川県座間市のアパート一室から9人の遺体が見つかった事件は6日、発覚から1週間を迎えた。警視庁高尾署に死体遺棄容疑で逮捕された白石隆浩容疑者(27)は8月下旬から10月にかけ、ほぼ1週間に1人という特異なペースで殺害・遺体解体行為を繰り返していたとされる。過去にも女性らを狙った連続殺人事件はあったが、専門家は「この事件は猟奇性、反復性ともに前例のない連続殺人だ」と特異性を指摘
している。
(中略)
「8月に1人、9月に4人、10月に4人を殺した」と供述している白石容疑者の最初の犠牲者は、SNS(会員制交流サイト)で知り合った女性だった。
その後、犯行頻度は高まる。9月、行方不明になったこの女性を捜しに白石容疑者の元を訪れた知人男性を殺害した後、3人の女性を立て続けに殺害し、10月にも八王子市の女性(23)を含む女性4人を殺害したとされる。
短期間の連続殺人事件としては、宮崎勤元死刑囚=20年に死刑執行、同(45)=の事件がある。昭和63年、約4カ月の間に、いたずら目的で3人の幼女を誘拐して殺害。約半年後、4人目の幼女も殺害した。
宮崎元死刑囚は犯行動機について「(幼女の)ミニスカートを見るとわくわくする」と供述。そうした感情が「ぶり返す」とも明かし、犯行への衝動には一定の周期があったことをほのめかしていた。
長谷川氏は「宮崎元死刑囚には実際に行動を起こすまでに衝動を蓄積する冷却期間があった。しかし、白石容疑者にはそれが見られない。珍しい現象だろう」と指摘した。
白石容疑者はツイッターや無料通信アプリを使い、女性らを巧みに自宅に誘い出して犯行に及んでいた。
女性を誘い出す巧みさは、大久保清元死刑囚=昭和51年に死刑執行、同(41)=に似ている。46年、16歳から21歳の女性8人を殺害した大久保元死刑囚は、親から与えられたスポーツカーを乗り回し、画家を装うなどして若い女性を車内に誘い込んで乱暴。殺害後は遺体を山林などに遺棄していた。
長谷川氏は「白石容疑者にはスカウト業の職歴もあったが、本来は内向的で受動的な性向の持ち主だったとみられる。被害者を自宅に誘い出したのは、自分の欲望を解放できる場所がそこにしかなかったからではないか」と分析している。
(産経新聞の記事から引用)


この見解をどう解釈するかは読者の自由ながら、3点ほど疑問を提起しておきます
1つは、白石容疑者の連続犯行は金銭目当てだという事実をまったく無視し、短期間での連続殺人は異例だと判断しているところです
白石容疑者がどこまで自供しているのか、信ぴょう性があるのかは不明ながら、過去の報道では被害者から奪った金が50万円から500円だった、とされます
500円では1日の食費程度でしょうから、白石容疑者は生活費を得るため女性を殺し続ける必要がり、殺人衝動だけが連続殺人の理由ではないと考えるべきでしょう
2つは、アパートの自室を犯行場所にしたのを「自分の欲望を開放できる場所がそこにしかなかったから」との指摘です
ロフト付きの自室が首つりに適していたとの理由、車を所有していない白石容疑者の行動範囲が制限されていた事情などもあり、もっと総合的な見方をするべきだろうと思います
ラブホテルを利用して被害者を誘い込もうとすれば、下心ありありのスケベ男と認識され逃げられる可能性もありますし、ラブホテルで遺体の解体は無理です
となれば、犯行場所はアパートの自室しかなかったのでは?
犯行の一部、行動の一旦だけから白石容疑者のすべてを見切ったかのような言い方は誤解を招くだけでしょう(記事の文面は新聞記者の手によるものなので、長谷川氏の見解を忠実に再現していないとは思いますが)
最後に3つ目として、過去の犯罪者との比較が必ずしも白石容疑者の特徴を浮かび上がらせるとは限らないのであり、「いまさら大久保清と比較されてもねえー」と言いたくなります
長谷川氏は当然、白石容疑者と面識がないのであり、今後起訴された白石容疑者と拘置所で面会を重ねれば、一連の事件についてより的確な分析を提供してくれる識見の持ち主です。期待しましょう

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