日進強盗殺人事件を考える4 殺意を否認
当時高校生だった少年が、ナイフで初老の男性を刺殺し現金を奪うという事件が愛知県日進市で起きたのが2015年の夏でした
その後少年は名古屋家庭裁判所から検察官送致となり、起訴されていましたが、ようやく初公判が始まっています
これだけ時間がかかったのは、逮捕後に最初の精神鑑定が行われ、さらに家庭裁判所が職権により2度目の精神鑑定を実施したという事情も関わっています
愛知県日進市で2015年7月、自治会長の川村典道さん(当時65歳)を刺殺し現金入りのバッグを盗んだとして、殺人、窃盗罪などに問われた無職の少年(19)=事件当時高校3年=は6日、名古屋地裁(堀内満裁判長)で開かれた裁判員裁判の初公判で、起訴内容について「殺意を持ってというのが適切ではない」と述べ、殺意を否認した。
弁護側は事件当時の精神状態について「自閉スペクトラム症で精神的に混乱した状態だった」として、心神耗弱だったと主張した。さらに更生に向け医療少年院での処遇が相当として、家裁に改めて移送するよう求めた。
検察側は冒頭陳述で「精神障害は軽度にとどまっており、完全責任能力があった」と指摘した。少年はナイフを使って憂さ晴らしをしたいと考え、嫌いだった祖父と被害者の男性を重ね合わせ、攻撃することを決めたと主張した。
公判では少年の顔が傍聴席から見えないように遮蔽(しゃへい)措置が取られた。
起訴状によると、少年は17歳だった15年7月12日夜、日進市梅森町の路上で川村さんの背中や首、顔などを持っていたナイフで刺すなどして失血死させ、現金6382円の入ったショルダーバッグを盗んだなどとされる。
名古屋地検は捜査段階で責任能力の有無を調べるため、精神鑑定を実施して「完全責任能力があった」と判断し家裁送致した。名古屋家裁は改めて精神鑑定を行い、「成育環境や精神発達上の障害が事件に一定程度影響しているが、善悪の判断能力自体は保持されていた」として検察官送致(逆送)の決定を出していた。
裁判は(1)殺意の有無(2)責任能力の程度(3)刑事処分と保護処分のどちらが相当か--が争点となる。6回の公判を経て14日に結審し、判決は17日に予定されている。
(毎日新聞の記事から引用)
犯行の事実については争点になっていないものの、上記の記事にあるように最初から殺害して金を奪うつもりだったのかどうか、という殺意の有無が争点の1つです
ナイフで切りつければ失血死する可能性が当然考えられるのであり、ナイフで複数個所を刺したけれども殺意はなかった、との主張はばかげています
金を奪う目的でナイフで脅したのなら殺意を否認するのもありでしょうが、被害者を刺して死に至らしめているのですから、殺意があったと認定するのが相当です
さて、犯行動機については大嫌いだった祖父に似た被害者に似ていたので狙った、との話もあるのですが、その辺りは責任能力に絡めて弁護側が主張するものと思われます
弁護側は医療少年院送致が相当だとして、再度家庭裁判所へ刺し戻すよう求めています。このまま刑事裁判で判決となれば、懲役7年以上10年以下の不定期刑でしょうか?
1人の人間の命を奪った犯罪にしては軽すぎる量刑ながらも、発達障害を抱えていたと認めるならば10年以上の懲役刑にはしないと推測されます
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