名古屋大女学生殺人を考える8 無期懲役判決

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元名古屋大学の学生で殺人と、タリウムによる殺人未遂などの罪に問われている大内万里亜被告に対し、名古屋地方裁判所は求刑通り無期懲役の判決を言い渡しています
大内被告については4件の精神鑑定結果が出ていますが、判決では精神障害や発達障害の影響はあったものの、責任能力はあったとする鑑定が採用されています
心神喪失状態であったという弁護側の主張は全面的に退けられた形です


大学1年時に名古屋市で知人の森外茂子さん(当時77歳)を殺害し、高校2年時に仙台市で中学時代や高校の同級生2人に劇物の硫酸タリウムを飲ませたなどとして殺人、殺人未遂罪などに問われた元名古屋大学生の女(21)=事件当時16〜19歳=の裁判員裁判で、名古屋地裁(山田耕司裁判長)は24日、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。
責任能力の有無が最大の争点だったが、判決は完全責任能力があったと認定し「複数の重大かつ悪質な犯罪に及んだ事情は全体として誠に重く、年齢や精神障害の影響を踏まえても有期刑では軽すぎる」とした。
弁護側は「重い発達障害で人の死に興味が集中したのに加え、双極性障害(そううつ病)のそう状態で善悪の判断も行動の制御もできなかった」として心神喪失で無罪を主張していた。
判決はまず、3人の医師が行った計4回の精神鑑定について検討した。捜査段階で携わり裁判で検察側証人となった舟橋龍秀医師(国立病院機構東尾張病院長)の「発達障害はあったが程度は重度でなく、双極性障害も軽そう状態にとどまる」との鑑定に高い信用性を認め、弁護側証人2人の鑑定は採用しなかった。
その上で判決は元学生が各事件の際に計画的で状況に応じた行動を取っていたとも判断した。舟橋医師の鑑定を踏まえ「障害の影響を一定程度受けつつも限定的で、最終的には自身の意思に基づいて犯行を決意し実行した」と指摘した。
また、タリウム事件で弁護側は殺意を否認したが、判決は「2人が死亡する可能性を十分認識し、死亡しても構わないとの弱い殺意が認めらる」と退けた。
量刑については、元学生に対する治療の必要性を認めながらも、刑務所で対処でき再犯の恐れもあるとして「さほど重視できない」とした。最長30年の有期懲役とでは差が大きいと指摘しながらも「仮釈放の運用で有期刑に近い最も軽い部類としての無期懲役とするのが相当」と結論付けた。
一方で刑務所での処遇について「適切な療育及び治療について最大限の措置を講じられたい。仮釈放の弾力的な運用で比較的早期の社会復帰が図られることが適切」とした。
(毎日新聞の記事から引用)


高校時代にタリウムを使い、「人の死ぬ様を見たい」と殺人未遂を犯した際も、学校生活が困難なほど精神的に錯乱していたわけではありません
大学生になってからも講義には出席しており、心神喪失状態と言えるような廃人生活をしていたわけでもありません
むしろ冷静かつ周到に殺人計画を進めていたのであり、それがサイコパスと呼ばれる所以でしょう
判決についてはおおむね妥当と言えるのですが、最後の「仮釈放の弾力的な運用で比較的早期の社会復帰が図られることが適切」だと加えた部分は大いに疑問です
刑務所での医療によって大内被告が劇的に治癒し、まっとうな精神状態になるのを前提にした発言であり、盛り過ぎでしょう
あるいは無期懲役に難色を示す裁判員、弁護側に対し、「早期の仮釈放もある」となだめるのが狙いなのでしょうか?
本格的な治療も開始していないのに、治癒するとの前提に立って早期の仮釈放を求めるような判決文は不可解であり、奇異に映ります
仮に治癒と見られる状態に至ったとしても、大内被告は無期懲役の受刑者なのですから相当期間服役すべきであって、早期に仮釈放すべき理由はありません
治療が目的ならば大内被告に、「精神障害のため罪には問えない」と無罪を言い渡し、「相当期間、専門的な医療を受けさせるべき」だとする手もあったわけです。その場合は、精神保健衛生法による措置入院(決定権は裁判官ではなく、都道府県知事)を選択することになります

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