淡路島5人殺害事件 平野被告に死刑判決

兵庫県洲本市の民家2軒で2015年3月、50歳代から80歳代の男女5人が刺殺された事件で、殺人と銃刀法違反の罪に問われた平野達彦被告(42)について、神戸地裁は死刑判決を言い渡しています
平野被告は過去、精神障害で措置入院となっており、今回の犯行も「電磁波による攻撃を受けていた。被害者は自分の方だ」と無罪を主張。弁護人も心神喪失もしくは心神耗弱状態の犯行であり、責任能力はなかったとして争ってきました
神戸地裁は判決で、事前にサバイバルナイフを購入したり、犯行時に自身の声をヴォイスレコーダーに録音するなど、十分に周到な計画に基づいた行動があり、精神障害による影響は限定的で責任能力があったと認定しています


兵庫県洲本市(淡路島)の2家族5人を殺害したとして平野達彦被告(42)に死刑判決が言い渡された22日の神戸地裁での裁判員裁判。平野被告は公判で不可解な言動を繰り返し、謝罪の言葉はなかった。精神障害を巡る責任能力について裁判員は困難な判断を迫られ、遺族は「ただただむなしい」とやるせない思いをコメントで寄せた。
◇精神障害と「責任」巡り
裁判では、責任能力の有無と程度が最大の争点だった。精神障害を巡る事件では、障害の概念を理解し事件との関連性を見分けることが裁判員に求められ、専門家の間には市民である裁判員に高度な判断を強いる現行制度を疑問視する声がある。
今回の事件で地裁は「障害の影響はほとんどなかった」と結論付けたが、公判で平野被告は常識では理解できない不可解な言動を繰り返した。昭和大の岩波明教授(精神医学)は「裁判官でも難しい責任能力の判断を一般の人に任せるのは無理がある」といい、責任能力を争う事件を裁判員裁判の対象から外す議論も必要だと考えている。
心神喪失者医療観察法は、重大事件を起こした心神喪失者の処遇を裁判官と精神科医が合議で判断するよう求めているが、あくまでも不起訴か無罪確定を前提としている。岩波教授は「精神障害と犯行との関連が明らかな場合は同法が適用され、明らかでない場合は刑事裁判に回っている」とし、判断が難しい事件が裁判員に委ねられる現状を指摘する。
一方、神戸学院大の内田博文教授(刑事法)は「精神障害者は『人格が危険』と判断されがちで、量刑が重くなる例が多い」と分析。今回の判決でも犯行動機は妄想が前提にあったと認めたが、殺害行為は正常な心理によるとし「結果の重大性」が重視された。内田教授は「こうした運用が続くと、『精神障害があるがゆえに減軽される』という従来の責任能力規定の廃止という議論にもつながりかねない」と懸念している。
岩波教授は司法と医療の連携の不十分さも指摘する。心神喪失者医療観察法は重大な他害行為をした精神障害者への医療提供と社会復帰を促す制度だが、「司法と医療の縦割りは変わっていない」と嘆く。平野被告への治療は事件の約8カ月前に途絶え、県と県警との情報共有に不備があったと指摘されている。
岩波教授は「精神医療の人員は全く不足している。司法ともしっかり連携しないと、同種事案は何回も起こる」と訴えている。
(毎日新聞の記事から引用)


精神障害により心神喪失状態ならば責任能力なしと判断され、罪には問えないとするのが日本の司法制度です。あるいは心神耗弱状態で責任能力が著しく減衰していたならば、罪一等を減じるとされています
上記の記事にある神戸学院大の内田教授が指摘するように、精神障害が限定的ながらも認められる殺人事件であっても、裁判員裁判では罪一等を減じるどころか、むしろ結果を重視して厳罰を下す傾向があるのは当ブログでも感じるところです
内田教授はこうした傾向を問題視しています。しかし、それこそ裁判員の見解であり、世間一般の「精神障害を理由に罪一等を減じるべきではない」という了解が反映しているのでしょう
これは発達障害が認められる被告に対する事件でも同様です
さて、前例踏襲(過去の判例重視)が大好きな高等裁判所は、この判決も否定するのでしょうか?

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