ネット記事削除裁判で最高裁が「公共性」を重視

インターネットに掲載された過去の記事で、自分の犯罪歴がいつまでも晒されるのは不当だとし、検索サービス大手の「Google」を相手取り、検索結果からの削除を求めていた裁判の話題です
訴訟を起こした人物は未成年者との淫行で罰金50万円の判決を受けており、この事件の記事がいまだに検索すればヒットするのを不服として、「Google」相手に裁判を起こしていました
最高裁判所は検索結果を削除するかどうかは、「表現の自由」と「プライバシー尊重」の両面から比較考慮すべきだとし、判断基準を示しています


ネット検索削除、「表現の自由」と「プライバシー」比較 最高裁、判断要素に6項目インターネット検索サイト「グーグル」の検索結果から、逮捕歴に関する記事の削除を認めなかった最高裁決定は、検索結果が削除できるかどうかの判断にあたり「表現の自由」と「プライバシー」を比べてどちらを重く見るかという枠組みを採用。そのための6項目の判断要素を示した上で、今回の記事には「公共性」があることなどを重視し、請求を退けた。
「表現の自由と人格権のバランスを考慮すべきだという判断枠組みを示した」。削除を求める仮処分を申し立てた男性の代理人を務めた神田知宏弁護士は1日、決定を一部評価した。
自分の過去に関するネット情報を削除したい場合は従来、情報発信者に直接削除を求めるケースが主流だったが、近年は、情報にアクセスするルートを絶つために、検索事業者に検索結果の削除を求める手法へと変化しつつある。
今回の判断は、平成27年12月のさいたま地裁決定が「忘れられる権利」に言及したことで、一層の注目を集めていた。「忘れられる権利」をめぐっては、欧州連合(EU)司法裁判所が2014年5月の判決で、男性が求めた検索結果の削除について、グーグルが削除義務を負うと判断。その後、「削除権(忘れられる権利)」が明文化された。
一方、日本国内で「忘れられる権利」に関する議論は必ずしも深まってはいない。
1月31日付の最高裁決定も「忘れられる権利」には言及せず、「プライバシー」と「表現の自由」を比較考慮する、従来のプライバシー侵害の枠組みに沿って判断した。
比較にあたって最高裁が示したのが6項目の判断要素だ。(1)表示された事実の性質・内容(2)プライバシーに関わる事実が伝達される範囲と具体的な被害の程度(3)申立人の社会的地位や影響力(4)記事の目的・意義(公共性)(5)社会的状況(6)その事実を記載する必要性-などを総合的に考慮し、表示が違法といえるかどうかを判断すべきだとした。
特に(2)の「事実が伝達される範囲」は、ネットの特性を反映させた要素とも言えそうだ。最高裁決定も、問題となった検索結果へ行き着くには複数の検索ワードを入れる必要があることを考慮し、伝達範囲は「限られている」とした。
地裁段階では、逮捕から時間が経過していることを理由に削除が認められた事例もあるが、今回は男性の逮捕歴が「今なお公共の利害に関する事項」と判断し、プライバシーに関する内容であっても削除は認めなかった。


長々と引用しました。犯罪報道を取り上げる機会の多いブログ主としては、インターネットの報道を、「プライバシーの侵害に当たる」と削除されるのは困ります
犯罪報道においては被疑者、被告人を匿名とすることで「プライバシー侵害」を回避する手もあるのでしょう。しかし、検索結果によって表示される犯罪報道を根こそぎ表示しないよう強制する要求には反対します
それではまるで犯罪などなかったかのように現実を歪めてしまうからです
「裁判で裁かれた、罰金を納付した(刑に服した)から、もうなかったことにしてくれ」というのはあまりに身勝手な要求でしょう
特に性犯罪者がその犯歴を隠し、教員に採用されるなどという事態を防ぐためにも、実名報道は必要ですし、安易に検索結果から削除すべきではありません
これまでにも述べてきたように、当ブログにおいても新聞報道をそのまま引用したにも関わらず、プライバシーを侵害していると要求する弁護士からのクレームにより記事を削除した経緯もあります(ウェブリブログ事務局の判断により、一方的に記事を削除された例もあります)

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