島根女子大生遺棄事件を考える47 犯人扱いで大学中退者も
2009年11月に遺体で発見された島根県立大学の学生平岡都さんに関する事件は、容疑者である矢野富栄がすでに死亡していたため、犯行の全容解明は不可能となり、平岡さんの遺体の一部も未発見にまま終結しました
警察関係者は7年にも及ぶ執念の捜査が実ったかのような話をしていますが、その裏側では容疑者扱いされ、大学を中退に追い込まれた平岡さんの知人もいたと週刊ポストが記事にしています
(前略)
矢野が捜査線上に浮上したのは2016年の夏頃で、同年10月には矢野の家族からデジタルカメラとUSBメモリの提供を受けた。削除されていた画像を復元したところ、平岡さんと見られる遺体のほか、損壊に使ったと思われる文化包丁などの“証拠写真”が57枚も出てきた。
しかし矢野は事件の2日後、高速道路で母親とともに事故死していたため、容疑者死亡で送検となった。死体損壊と遺棄は2012年に公訴時効が成立。殺人についても“被疑者死亡”のため不起訴となる見通しだ。その辺は悔しさが残る」
両県警の執念の捜査が実ったといえるが、事件発生から7年間という月日は、別の“被害者”を生んでもいた。
当時から、警察は多くの関係者を“参考人”として聴取してきた。平岡さんと同じキャンパスに通う大学院生だったA氏もその一人だ。A氏が振り返る。
「刑事がやってきたのは、平岡さんの遺体発見の数週間後でした。遺棄現場に続く高速道路のNシステム(自動車ナンバー自動読み取り装置)に私の車が写っていたのが理由でした。刑事は自宅の風呂を見た後、“家にある刃物を見せてほしい”とナタや包丁を入念にチェックしていた。
その後も何回も刑事がやってきたことで近所や学校でも噂が広まり、私が姿を見せると“犯人が来た”とからかわれました。刑事は“隠れて来てるから大丈夫”と言っていましたが、バレバレだった」
A氏だけではない。当時、平岡さんにアルバイト先を紹介していた大学の友人B氏の知人が明かす。
「当時、平岡さんとBは仲が良く、平岡さんからの相談を受けてBがバイト先を紹介したところ、彼女は“時給が上がる”と喜んでいた。事件は“転職”直前に起きたものでした。
Bは平岡さんにバイトを紹介しただけなのに、警察はBが何らかの事情を知っているだろうと決めつけ、何度も彼を事情聴取しました。すぐに学内でも噂となり、Bに対する周囲の目も変わった。事件の翌年、彼は大学を中退した」
A氏がいう。
「犯人が見つかって良かったとは思います。でも、もっと早くわからなかったのか。この7年間、地元に帰ったら“本当は犯人なの?”と言われ続けた。警察に犯人扱いされたことへの憤りは消えません」
7年間という年月は多くの人々に深い爪痕を残した。
(週刊ポスト2017年1月13・20日号掲載記事から引用)
合同捜査本部は会見で、「あらゆる可能性を考え捜査してきた」と述べています
しかし、最初から平岡さんに近い人物(同じ大学に通い、交際していたと思われる人物)が犯人、との強い思い込みに捜査をしていたのでしょう
そのため、怪しい人物(あくまでも警察の先入観)の身辺を洗い、警察がマークしているのだと圧力をかけ続ければ観念して犯行を自供する、といった杜撰な方針で大学生らに接触していたものと推測されます
結果からすれば、平岡さんの遺体発見後に自動車事故で死亡(おそらくは覚悟の上の自殺)した矢野容疑者は捜査線上に浮かばないまま、見当違いな人物を犯人扱いして追いかけ回していたと言えます。それも7年間…
もちろん、捜査関係者は否定するのでしょうし、合同捜査本部内でも捜査方針を巡ってはさまざまな意見が対立し、紛糾していたと想像されます
大学中退を余儀なくされた方には気の毒ですが、警察が謝罪をしたり補償をする可能性は皆無です。もしもそうした行動をすれば、捜査の失敗を認めたことになるため、警察は絶対にしないわけで
ですが、警察関係者が今回の「失敗」に学ぼうとしないのであれば、また同じ失敗を繰り返すのは確実です
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