文部省天下り疑惑 事務次官引責辞任

高位の官職にある国家公務員の退職後の再就職については、いわゆる天下りと見なされないようさまざまな制限が課せられています。所属官庁と利害関係のある民間の法人・企業への再就職を規制することで、癒着を防ぐ狙いがあるわけです
しかし、文部科学省はその規制を無視し、大学を監督するポストであった高等教育局長を早稲田大学の教授職に就くよう斡旋していたと発覚し、ついには事務次官が引責辞任する事態にまで発展しました


文部科学省が平成27年、元高等教育局長に早稲田大教授への天下りを斡旋したとして国家公務員法違反の疑いが持たれている問題で、内閣府の再就職等監視委員会は20日午前、調査報告書を公表した。人事課を中心とした組織的な斡旋への関与が常態化し、斡旋を禁じた国家公務員法違反があったと認定。調査への組織的な隠蔽工作が行われていたことも指摘した。
元局長の問題以外にも、前川次官が文部科学審議官時代に関与した2件の斡旋行為を含め9件の不正があり、監視委の調査ではこれを含め計37件の疑わしいケースが判明。文科省に対し調査して報告するよう求めた。
松野博一文科相は監視委の調査結果を踏まえて文科省で記者会見し、前川喜平事務次官(62)を減給10分の1(2カ月)とするなど関係者7人を停職や減給などの懲戒処分とした。
前川次官は依願退職し、後任に戸谷一夫文科審議官(59)を充てる。また在職中に求職活動を行った元局長の吉田大輔早大教授(61)を減給相当として本人に連絡、当時次官だった山中伸一ブルガリア大使(63)を戒告相当とした。
山中氏は2カ月分の給与(月額10分の2)を自主返納する。
松野文科相は会見で「文部行政への信頼を著しく失墜させ、誠に遺憾。法令への理解が不足しており、猛省しないといけない」と述べた。
監視委の調査報告書によると、吉田氏は高等教育局長時代の27年7月、人事課職員を通じて履歴書などを早大に提出して求職活動をし、人事課職員も早大との間で面談日程を調整するなど吉田教授の再就職の斡旋を行ったと認定。
吉田氏は同年8月に退職、その2カ月後に教授として再就職した。
(産経新聞の記事から引用)


事務方トップの事務次官の引責辞職は、文部科学省職員にとり大きな衝撃だったでしょう。早稲田大学教授に就任した吉田大輔元高等教育局長も、すでに大学に辞職届を出したと報じられており、早急に幕引きを図る狙いなのか、バタバタと処分が決まっています。国会の会期が始まる前に決着させろ、と政府・自民党から圧力があったのでしょう
しかし、文部科学省はこの件以外にも29人分の疑わしい再就職が指摘されており、減給10分の1(2カ月)という処分で片づけられるような問題ではない可能性があります
政府の方針である再就職規制を無視し、文部科学省が30名近い幹部職員の天下りを斡旋していたと判明すれば、これは重大な反逆行為であり、事務次官どころか大臣の首も飛ぶ事態でしょう。もちろん、事務次官や官房人事課長は減給どころか懲戒免職処分に付されるくらいの悪質な法令違反です
こうした事態を招いたのも、文部科学省が大学への再就職は(他官庁の)企業への天下りとは違う、と甘く考えていたからなのかもしれません
大学教授の肩書・ポストは退職する公務員にとっては見栄えがするだけでなく、私立大学なら65歳から場合によっては70歳まで収入を手にできる安泰の再就職先です
今回、吉田元局長を教授として迎え入れた早稲田大学は、大学の補助金目当てではなかったのか、との疑念が浮上します
大学で吉田元局長が教授職に相応しい教育・研究活動をしていたのか、確かめる必要があるわけですが、文部科学省は調査するのでしょうか?

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