名古屋大女学生殺人を考える6 初公判で無罪を主張
名古屋大学理学部に通う女子学生大内万里亜が、自宅マンションで77歳の女性を殺害した容疑で逮捕されたのが2014年12月でした
顔見知りではあったものの、怨恨関係もない老人を「人を殺してみたかった」との理由で殺した女子大生、として世間の注目を浴びた事件ですが、初公判まで随分と時間がかかってしまいました
少年法による少年審判手続きでは、名古屋家庭裁判所が検察官送致決定したため、刑事裁判を受けることとなり、検察が起訴したものの、公判前の争点整理手続きが長引いてしまいました
名古屋市内のアパートで2014年、女性を殺害したほか、12年には仙台市で同級生2人に劇物「硫酸タリウム」入りの飲料水を飲ませたなどとして、殺人や殺人未遂などの罪に問われた元少女(21)の裁判員裁判の初公判が16日、名古屋地裁(山田耕司裁判長)で始まった。
元少女は罪状認否で、同級生2人に対する殺意を否認した。弁護側は、元少女には発達障害や精神障害があり「専門的治療が必要だ」として、家裁による検察官送致の決定は違法と主張し、公訴棄却を求めた。
元少女の実名は非公表で審理は始まったが、法廷では、証言台と傍聴席の間についたては設けられなかった。
争点は、元少女の責任能力の有無。元少女は女性の殺害行為を認める一方、弁護側は「犯行時、元少女は精神障害を発症し、行動を制御する能力がなかった」と述べ、全ての事件について無罪を主張した。
元少女は19歳の大学生だった14年12月7日、名古屋市内の自宅アパートで森外茂子(ともこ)さん(当時77)を殺害▽同月13日、仙台市内の住宅の郵便受けに火を放ち、住民女性らを殺そうとした▽高校2年生だった12年5~7月、同級生の少年と少女(いずれも当時16)の飲み物に硫酸タリウムを混ぜて殺害しようとした――などとして、殺人や殺人未遂の罪などで起訴された。
検察側は冒頭陳述で、元少女は「人の死に強い興味を持っていた」と主張。中学3年の時に、神戸市の児童連続殺傷事件を知り、その後「猟奇事件を調べ、殺人に興味を持ち始めた」と指摘した。
高校時代には、05年に起きた静岡県の女子高校生によるタリウム殺人未遂事件を知り、自分の事件でも同級生の中毒症状を「観察」したという。さらに、大学入学後には「『人を殺して死ぬまでを観察したい』と思うようになった」と述べた。
弁護側は、元少女が「双極性障害」を発症していたとして「善悪の判断ができず犯罪を抑制する能力も失っていた。責任能力はなく無罪だ」と訴えた。
審理は計20回で、判決は3月24日を予定している。
(朝日新聞の記事から引用)
通常、裁判員裁判では裁判員の負担を軽減するため事前に争点整理が行われるため、公判の回数は数回程度に抑えられています。しかし、この事件では弁護側が「責任能力はなく、無罪にすべき」と主張して検察と真っ向から対立しており、そのため20回もの公判が予定されています
当然、責任能力を認めた精神鑑定結果を巡って激しいやり取りが予想され、場合によっては弁護側が再度の精神鑑定を要求するのかもしれません
当ブログで触れたように、逮捕後に検察は精神鑑定を実施しており、その後名古屋家庭裁判所によっても精神鑑定が実施されています
今回の起訴に当たり、3度目の精神鑑定が行われたのかどうか、記事では触れていません
前回も述べたように、いくつもの精神鑑定結果が乱立すれば裁判員もかえって混乱するわけであり、判断が難しくなります
大内被告の高校生時代の精神状態がいかなるものであったか、裁判員に判断しろというのは酷でしょう。もちろん、最終的な判断(判決)の責任は裁判官が負うのですが
大内被告自身が事件について何を思い、どう語るのかは注目されますが、大内被告の法廷での発言も取り調べ段階での供述も含め、弁護人は「責任能力のない、異常な精神状態での発言」だとして全面否定するのかもしれません
「責任能力なし」を主張する弁護人の法廷戦術は正しいとしても、それでは法廷での審理そのものを全否定することにも繋がり、裁判を無意味なものとしかねない危険が伴います
大内被告自身、己の犯罪をどう受け止めているのか、何を思っているのか、裁判では不利な証拠になるとしても、弁護人は策を弄したりせずここは率直に語らせるべきではないかと思います
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