電通過労自殺事件で社長が辞任

過剰な勤務に疲れ果てて自殺に追い込まれた電通の新入社員の事件が、今年は大きな注目を集めました
厚生労働省の東京労働局が電通を強制捜査し、労働基準法違反の疑いで電通と直属の上司だった男性管理職を書類送検しており、社長も引責辞任を表明するに至りました
社長の首を獲ったからといって何も解決などしないのですが、「社員の過労自殺および過労死は会社の責任」だと強くアピールする結果には繋がったのでしょう
「倒れるまで働け」とする電通の企業風土が変わるかどうかはこれからの取り組み次第です
幹部職員はいずれも過剰な業務をこなして生き残った人たちばかりですから、社風を変える(幹部社員の意識を変える)のは容易ではないと思われます


広告代理店最大手・電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が過労自殺した問題で、厚生労働省東京労働局は28日、高橋さんの直属の上司だった幹部社員の男性1人と、法人としての同社を労働基準法違反(長時間労働)の疑いで書類送検した。石井直社長は記者会見し、来年1月の取締役会で引責辞任する意向を表明した。
書類送検容疑は、昨年10〜12月に高橋さんと同僚の男性社員の2人に対し、労使協定の上限(月70時間)を超える違法な残業をさせたとしている。1人にはある月に上限を7時間44分、もう1人には3時間54分、それぞれ超える残業をさせたという。同局は石井社長ら上層部からも事情聴取し、同社と幹部社員について検察に起訴を求める「厳重処分」の意見を付けた。
高橋さんの代理人弁護士が本社ビルの入退館記録から算出した残業時間は月130時間。三田労働基準監督署も過労死ラインとされる月80時間を超える105時間を認定した。これらより容疑の残業時間を絞った理由について、同局は「時間というより、過重労働が原因で(高橋さんが)精神障害を発症したことのほうが重大」と説明した。
電通の労務管理を巡っては、各地の労働局が11月、同様の違法残業が常態化していたとの疑いが強まったとして全国の本支社を家宅捜索。このうち東京労働局が高橋さんの事例を先行して立件したが、上層部への捜査は越年して継続する。
高橋さんの母幸美(ゆきみ)さん(53)は代理人弁護士を通じて「今後まつりのような犠牲者を絶対に出さないように、会社は長時間労働をなくす取り組みを必ず実行してほしい。捜査によって実態を十分に把握し、法律に基づく適正な結論を出していただきたい」とのコメントを出した。
会見で石井社長は「新入社員の過重労働を阻止できなかったことは慚愧に堪えない。重く厳粛に受け止めている」と陳謝した。
(毎日新聞)


過剰な勤務によって社員が追い詰められ、自殺に至るという痛ましい事例があちらこちらで発生しているにも関わらず、電通のように「社風」と称して過剰な勤務を容認する企業は数多く存在します
ですから電通の社長が引責辞任に至ったとしても、それを自社の問題と受け止める企業経営者は決して多くはないのでしょう
しかし、経営者に限らず同じ職場に勤める者が部下や同僚の過剰な勤務を気にかけるようになれば、このような痛まし事例を少しは減らせるのかもしれません
そして忘れてはならないのが、電通労働組合の責任です。この件で労働組合はどのような役割を果たしたのでしょうか?
経営側にすり寄り、社員の過剰な労働を看過してきた責任を労働組合執行部は負う覚悟があるのか、と思うばかりです
新聞報道によれば、電通労組は以下のようなコメントを発表しています


現在、会社が進めている夜10時以降消灯を含めた各種施策について、その効果が有効に作用するか厳しく注視するとともに、現場で働く社員に新たなしわ寄せや負担が発生しないかという観点からも注意を払い、会社と協議を行っています。
このようなことが再び起きることがないよう、電通労働組合は、今後も引続き、組合員の健康と安全を守るための活動に取り組んでいきます。


社員の過労自殺について、「このようなこと」といった表記で片づけ、高橋まつりさんの名も挙げようとしないコメントには愕然とします
本当に組合員の健康と安全を守るための活動をしてきたのか、自らを省みる姿勢すら欠けているように映ります。組合専従として何もしてこなかった労組執行部も引責辞任したらどうか、と言いたくなります

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