韓国の核融合炉 世界最長運転を実現と大喜び

「核融合炉開発競争において韓国が世界を大きく引き離し、先頭に立っている」と自画自賛するような報道があり、韓国のインターネットユーザーが大喜びしているとレコードチャイナの記事に書かれていました
相変わらず不正確な報道によって国民を煽る韓国メディアの手口です
そして報道を検討・検証もせず、これに飛びついて大喜びするという原始的な反応を示す韓国のインターネットユーザーの様相が見えるだけなのですが


2016年12月14日、韓国・ノーカットニュースによると、韓国の人工太陽と呼ばれる超伝導トカマク先進研究装置「KSTAR」が、核融合エネルギーの商用化に最も重要な技術である高性能プラズマ運転(Hモード)の世界最長記録を達成した。
国家核融合研究所は同日、KSTAR実験で高性能プラズマ運転を70秒間継続することに成功し、超伝導トカマクの世界最長Hモード運転記録を更新したと明らかにした。
核融合研究の最終目標は太陽がエネルギーを発する原理の核融合反応を利用した発電であるため、太陽と同じ状態の超高温プラズマを核融合装置内部に閉じ込め、持続的に核融合反応が起こるよう維持することが研究の最も重要な課題だ。
つまり、核融合発電の商用化には連続プラズマ運転技術の開発が必須となる。
KSTARは2009年に本格的に稼働を開始し、連続プラズマ運転技術の開発に向けて高性能プラズマ運転の研究に重点を置いてきた。その結果、2010年に超伝導核融合装置のHモードを世界で初めて達成。その後も毎年、世界最長記録を更新してきた。
国家核融合研究所のキム所長は「KSTARを中心とした国内の核融合研究の成果は世界的に認められる高いレベルに到達している」とし、「より先導的な研究を続けるため、国内だけでなく海外の核融合研究者がKSTAR研究に参加できるよう国際共同研究の環境づくりに励みたい」と述べた。
これについて、韓国のネットユーザーは以下のようなコメントを寄せている。
「素晴らしい」
「基礎科学に投資できる政府になってほしい」
「韓国の核融合技術は世界最強。米国より優れている」
「あまり知られていないが、核融合は韓国の得意分野。先進国は韓国が独自に開発した研究モデルをまねしているよ」
「大事な資料が盗まれたら大変。中国の研究者は採用しないように!」
「こういうニュースを見ると、韓国人の頭脳は世界一だと感じる。問題は政府が無能であること…」
「政治以外は本当に優秀な民族。本当に変わった民族だ」
「エネルギー革命は韓国で起こる気がする」
「申し訳ないが、誇張され、うその事実が多く含まれている研究は信じられない。国民は結果を望んでいる」
「科学者の皆さん、研究を重ねて核兵器より強力な武器を作ろう!」
(レコードチャイナイの記事から引用)


自分も核融合炉に詳しいわけではありませんが、Wikipediaなど見れば韓国の研究が後追いであり、先頭集団(日本とフランス)の後ろを必死になって追いかけていると分かります
上記の記事にある、「あまり知られていないが、核融合は韓国の得意分野。先進国は韓国が独自に開発した研究モデルをまねしているよ」などと口にし、いかにも事情通であるかのように見せる態度には失笑するだけです
そもそも 韓国のトカマク先進研究装置「KSTAR」につかわれているプラズマ発生装置は 日本原子力研究開発機構 (JAEA) から無償貸与されたもであり、これがなければ韓国は実験装置を稼働させることすらできなかったのが現実です(実験には日本から派遣された研究員も参加しており、韓国人がすべてを成し遂げたかのような記事の書き方は大間違いです)
韓国の研究モデル「KSTAR」こそ、他国の研究結果を真似た後追いの装置である事実を知らないまま、浮かれているだけの話です
核融合炉の実験で世界をリードしていたのはアメリカであり、独自の研究(軍事的色合いの濃いもの)に執着した結果、1990年代にローレンス・リバモア国立研究所内で実験施設の建設NIF計画(National Ignition Facility)に踏み出します
しかし、このレーザー核融合実証の計画はさまざまなトラブルに見舞われ、当初の予算を大幅に超過(7億ドルから33億ドルへ増加)し、批判が沸き起こりました最終的には50億ドルを超えると指摘されています
このためアメリカは軌道修正し、国際協力によるトカマク型核融合炉開発に舵を切った(つまり日本やフランスの研究へ合流した)のだとか
しかし、アメリカ独自のレーザー核融合炉の開発もまだ継続中です
さて、上記の記事では70秒間のプラズマ運転に成功したと書かれていますが、継続して核融合を起こすには300秒以上必要とされており、まだまだ道半ばです
さらなる実証実験を進めるには「KSTAR」を上回る規模の大型核融合炉を建設しなければならないのですが、それは無理でしょう(お金がかかりすぎるため)
よって今後はフランスに建設が進められている国際熱核融合実験炉(ITER)が頼みとなります。韓国も共同研究の参加メンバーです
日本もこの国際熱核融合実験炉計画に参加するとともに、国内には実際に核融合によって発電試験を行う超電導型核融合実験装置「JT―60SA」を建設しており、2019年から稼働予定です
「世界の最先端を走っている」と韓国メディアが自画自賛するのは勝手ですが、もう少し周りを見て報道する必要があると思い、取り上げました

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