流行語大賞「日本死ね」を巡る騒動

恒例の「ユーキャン新語・流行語大賞」は、その年の世相を反映したものだとはいえども、真に「流行」とは認めがたい言葉が選ばれたりします
元審査員であった鳥越俊太郎が説明するところ、「表彰式に当人、または関係者が出席するのが賞を与える基準」なのだそうで、事情により関係者が出席できない「流行語」は賞の対象外になるとされます
昨年の「トリプルスリー」(プロ野球の三冠王を指す)も、ラグビーの五郎丸選手が大賞候補であったものの表彰式に出席できない事情から、替わりに選ばれたと鳥越俊太郎が述べています
さて、今年は「保育園落ちた日本死ね」が流行語大賞の候補としてエントリーされたため、これを巡りあちらこちらで賛成派、反対派が入り乱れて論争が起きました。ダイヤモンドオンライン掲載の記事がこの論争を取り上げていますので、紹介します。元記事は長文なので、一部のみ引用します。全文を読みたい方は、ダイヤモンドオンラインにアクセス願います


流行語大賞「保育園落ちた日本死ね」トップ10入りで大論争
(前略)
正しい日本語と新語・造語のコントラストが面白いが、今年ベストテンにランクインした「保育園落ちた日本死ね」をめぐっても、はたしてこの言葉が流行語にふさわしいのか否かで論争が起きている。白黒をつけるかのように、“日本死ね”で意見が真っ二つに分かれているのである。
授賞式には、収支報告書に地球五周分にも相当するガソリン代(プリカ一〇五回購入分)を計上した理由をいまだ説明をしていない……、もとい、「保育園落ちた日本死ね」と書かれたブログを国会で取り上げた民進党の山尾志桜里・前政調会長が出席した。
「この言葉を『私と私の仲間が』という優しい言葉にくるんで、そして、後押ししてくれた女性たちに代わって、この賞を受け取らせていただきます」だそうだ。
最近、民進党議員の間で不気味なポエムをフェイスブックに投稿するのが流行っているみたいなのだが、その影響をもろに受けているようだ。どんなに優しい言葉でくるんでも“死ね”なんて言葉は使っちゃいけないのに。その山尾議員を前原誠司議員がツイッターで賞賛した。
〈山尾志桜里さん、新語・流行語大賞トップ10入り、おめでとうございます。「日本死ね」という言葉の是非、また一つのネットを取り上げて普遍化するのは如何かという意見もありましたが、多くの国民の思いをリサーチした上での山尾さんの国会での追及と伝播。それが評価されたのだと思います〉(12月1日)
蓮舫氏を党首に選出した時点で民進党の終焉はほぼ確定したが、その蓮舫氏と党首選を戦った前原議員からしてこんなツイートをしているようでは民進党は本当に終わりだ。
政治家というのは日本をよりよい方向に導く役割を担った人たちであるはずなのに、満面の笑みを浮かべて“日本死ね”と喜ぶ愚か者たちに、この先、良識ある有権者は票を投じることはしないだろう。日本死ねと言われたら激高し、ふざけるなと言い返すのが日本の、日本人の政治家ではないのか。
それ以前に、“死ね”という言葉がもたらす嫌悪感や忌避感を、どうやら前原議員も山尾議員も民進党もわかっていないようだ。本来なら、こんな授賞式は辞退すべきではないかと私は思う。だが、辞退すべきところを辞退せず、また、誰も山尾議員に“辞退しろ”と言えない政党は、本当に終わりだ。
(中略)
ネットで話題になったのが、つるの発言を批判する元SEALDsのラッパーくんのツイートだ。
〈心底ムカつくわこういうやつ。汚いのはその薄い偽善だろ。頭使えよ〉
〈「日本死ね」の何が悪いんだ。少しネットひらけばマイノリティーへのヘイトスピーチで溢れ、貧困な人たちを叩き、息をするように女性を差別して、憲法違反して、中国の危機がとか言いながら中国兵守りに南スーダンに自衛隊送って、原発再稼働して、クソくらえなんだよこんな国は。めちゃくちゃだろ〉
〈この日本国の惨劇を日本人として恥ずかしいと思えないのならてめえが日本人をやめろや(後略)〉(12月4日、いずれも元SEALDsメンバーのツイートより)
こういう罵倒ができるから“死ね”という表現にも寛容になれるのかもしれない。
(以下、略)


長文の記事のため、全文は引用できませんがなかなか目配りの効いた内容であり、さまざまな方面の「日本死ね」擁護派の発言を引用しており、読むにしたがいじわじわと笑いがこみ上げてきます
秀逸なのは社会学者古市憲寿の擁護発言「人格攻撃でもなく、あくまでも比喩としての『死ね』と、具体的な他者や人格を貶めるために使う『死ね』は全然違うよ。しかも、他にどうしようもなく、そうするしかない悲痛な叫びとしての『日本死ね』でしょ」を扱った部分です。古市憲寿は比喩としての「日本死ね」は許容されるべきと主張したため、彼のツイッターには「古市死ね」の書き込みが殺到したのだとか。もちろん「古市死ね」は人格攻撃としての「死ね」ではなく、比喩としての「死ね」という意味なのでしょう(皮肉です)
それにしても元SEALDsの汚い発言は群を抜いており、こうして他人を罵倒するしかできない愚かな若者を持ち上げ、称賛してきた老人たち(朝日新聞や毎日新聞などの記者、幹部と共産党や民進党の政治家を含む)こそ、猛省してもらいたいところです。まあ、決して反省などしないと分かっていますが元SEALDsの思考は、「自分たちの考えに賛同しない連中はすべて敵。敵に対してはどんな攻撃も許される」といった左翼武闘派(チンピラ)並みのものであり、他人を罵倒するのは正当な行為と誇るところが異様であり、異常です
そこには対話など存在せず、相手を全否定するからこその「死ね」しかないわけで…
以上の「日本死ね」論争を俯瞰すれば、これはこれで今年の世相を反映しているのだな、と妙に納得してしまいました

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