日本版「三国志」のアニメ、ゲームを批判する中国
定期的に中国メディアによる日本の漫画やアニメへの批判を取り上げているのですが、彼の国の基本的な論調に大きな変化はありません
今年5月の配信記事ではありますが、紹介しておきます
日本のゲームやアニメが、「中国の古典文学作品を勝手に改変したり、パロディ化するのは文化侵略だ」とする従来の中国側の主張をそのままなぞったと思いきや、中国の若者たちはむしろ歓迎しているとの指摘が含まれています
日本版『三国志』に中国人が激怒?”文化的侵略”と騒動になった舞台ウラ
日本でも知名度の高い「三国志」。古代中国で魏・呉・蜀の三国が覇を競った物語はアニメやマンガ、ゲームの題材としても広く親しまれている。だが、それらの作品が中国に逆輸入されたことで「若者たちの歴史観が崩壊している」と現地メディアが報じるなど波紋が広がっている。
■イケメン・美少女・アダルト化…中国が大激怒?
この問題は4月末に中国情報サイト「サーチナ」が現地メディアの記事を取り上げる形で紹介。現地メディアは「文化的侵略?日本のアニメ・ゲームが若者の『三国』に対する認知を破壊」と題した記事を掲載し、日本の作品の影響で「史実に基づかない多くのシーンが中国の若者の頭に浮かぶようになった」と主張。さらに「中国の古典名著が異邦人によって書き改められている。5000年の歴史文化を持つ大国のメンツはどこにあるのか」と厳しく批判している。
具体例として「一騎当千」「龍狼伝」「SDガンダム三国伝」「恋姫†無双シリーズ」などが挙げられ、「日本のアニメ・ゲーム文化によって洗脳されている」と自国民に警鐘を鳴らしている。
日本における近年の三国志ブームのきっかけは人気ゲーム「真・三國無双」シリーズだが、武将たちが軒並みイケメン化したり天才軍師・諸葛孔明がビームを放ったりと原典のイメージからはかけ離れている。さらに前述の「一騎当千」「恋姫†無双」では武将たちが美少女化され、アダルトなシーンも盛り込まれるなど原作の面影がほとんどない状態。性表現に厳しい中国では「三国志」のアダルト作品化は特に反発が強い。
(中略)
■中国の若者たちは三国志パロディに寛容
現地のニュースサイトや掲示板などを確認してみると、日本の三国志アニメなどを批判する報道に対して擁護論が多数。「自分は日本の三国志ゲーム大好きだよ」「一騎当千も恋姫無双も面白い」「だって国産のアニメはクソばかりだし……」といった意見が上がっていた。
さらに、三国志の武将を美少女化することについても「日本は自国の戦国武将も萌え美少女にしてるよ」「恋姫無双のロリ諸葛亮の大ファンです」「制作者が変態なだけで中国に悪意があるわけじゃない」と理解を示す声がある。批判的な意見もあることはあるのだが、かなり少数派のように感じられた。
「中国では古典の改編が許されない風潮があり、原典から逸脱したパロディ作品は極端に少ない。しかし、その風潮にこだわっているのは中高年世代だけ。日本のゲームやアニメに夢中な若者世代は抵抗なくパロディ作品に触れている。だからこそ現地メディアは憤っているのでしょうが、せっかく素晴らしい名作古典のコンテンツがあるのに自由度が低いために若者の支持を得られないという状況になっています」(前同)
(以下、略)
幾度も引用してきたのですが、麻生太郎財務大臣は「創作の自由がない中国が、面白いコンテンツを作れるはずない」と指摘しています
古典文学作品である「三国志」や「西遊記」をどれだけ大胆に改変し、面白いエンターティメントに昇華させるか、という点で中国は遥かに及ばないのであり、その差が縮まることは当面ないのでしょう
さて、上記の記事では言及されていないものの、日本で「三国志」の名を知らしめた娯楽作品として横山光輝によるコミックは、日本の漫画文化における金字塔の1つです
吉川英治の小説「三国志」をベースに、横山光輝が60巻にもなるコミックとして大成させた作品は、他に類を見ないものと言えます
当時、中国は文化大革命の只中にあり、孔子廟を打ち壊し、儒学者をリンチにかけて古典の書籍を焼き破り、文化破壊に狂奔していた時代でした
もちろん、当時毛沢東語録を片手に行進していた中国人には、「三国志」が日本で美少女エロゲーと化する未来を予見するなど不可能だったでしょう
恋姫†無双 OP集 - Koihime Musou opening collection -
以前にも紹介した中国版のフルCGアニメ「三国志」はなかなかの力作で、本家の意地が感じられるのですが、これが中国やその他の地域で大ブームを巻き起こしたとの報道は見ていません
China 3D ROMANCE OF THREE KINGDOM ANIME 34 ep The Death Of Sun Jian
原作に忠実なアニメを、との中国政府の意向を汲んだのでしょうが、魅力ある作品になっているとは言い難いのです
先述したように、原作を大胆に読み替え、改変し、新たなエンターティメント作品に仕立てる創造力がないかぎり、ただのCG画像集で終わってしまうのでしょう
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