福岡女児遺棄事件を考える5 無期懲役判決

昨年1月、福岡県豊前市で起きた小学5年生石橋美羽さん殺害事件で起訴された内間利幸被告の裁判員裁判で、福岡地裁小倉支部は無期懲役の判決を言い渡したと報じられています
判決文の中で、22件の同種の事件の判決を比較検討したが死刑を選択するには慎重にならざるをえない、と述べています
これは裁判官が内間被告の罪を問うたのではなく、過去の判例に拘泥したのであり、何のための裁判だったのかと首をひねりたくなります
これなら裁判官など不要であり、判例のデータベースと人工知能(AI)に判決を委ねた方がましかもしれません


福岡県豊前市で昨年1月、小学5年の女児(当時10歳)を殺害したなどとして殺人や死体遺棄などの罪に問われた同市の内間利幸被告(47)の裁判員裁判の判決公判が3日、福岡地裁小倉支部であった。柴田寿宏裁判長は「刑事責任は重大だが、同種事案の中で突出した残虐性があるとは言えず、遺族感情や社会的影響などを総合考慮しても死刑の選択が相当とは認められない」と述べ、無期懲役(求刑・死刑)を言い渡した。検察側は控訴する方針。
内間被告は死体遺棄罪以外の起訴内容を否認し、殺意の有無や量刑などが争点だった。殺意については「静かにしてほしくて、とっさに首を押さえた」と否認。
強制わいせつ致死罪と死体遺棄罪だけが成立するとして有期刑を求めていた。柴田裁判長は「わいせつ目的で誘拐し、抵抗を排除して同意のないままわいせつ行為に及んだ。さらに発覚を免れるためには殺すしかないと決意して殺害した」と指摘。起訴されたわいせつ目的誘拐や殺人、死体遺棄など4罪の成立を認めた。
量刑については「女児への性犯罪の前科があり、長期間服役した上、出所後には警察の監督を受けていたにもかかわらず、顔見知りの女児に対する性欲を抑えられず死亡させた。被害者の夢や希望、未来のすべてを奪い去った結果は極めて重大」と指摘。同種事案の判例22件と比較検討したことを明らかにした上で「殺害をあらかじめ計画していないなど死刑を科すほど生命軽視の度合いが甚だしく大きいとは言えない。前科は殺人罪に関するものではなく、死刑を選択するに当たっては慎重にならざるを得ない」と結論づけた。
判決によると、内間被告は昨年1月31日、豊前市の知人宅で女児の首を絞めて殺害した後、遺体をバッグに入れて自宅に運び遺棄したなどとされる。
(読売新聞の記事から引用)


予め殺害を計画していたか否か、よりも結果として命を奪った事実の方が重大でしょう
小学生の女児を殺害したにも関わらず、「死刑を科すほど生命軽視の度合いが甚だ大きいとは言えない」などと、それこそ小学生の作文にも見られないような稚拙な理屈を並べ、何をしたいのかと思ってしまいます
人を殺したのは生命軽視の証しだと、小学生でも指摘できるわけで、大人である裁判官が何を言うのやら
結局、本件で死刑を科さない理屈をあれこれと列挙しているだけであり、「いいわけ」に字数を費やしているだけでしょう
過去の判例など脇に置き、事件の根幹に踏み込んで踏み抜くくらいの画期的な判決文を書くくらいの気概を持てないのでしょうか?
検察が控訴する方針だそうなので、控訴審に期待しましょう
すべての殺人事件で死刑を、などと言うつもりはありません。しかし、子ども対象とした性犯罪絡みの殺人は厳罰をもって臨むべきだと考えます

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