障害者施設19人殺害 措置入院も2週間で退院した事情
神奈川県相模原市の障害者施設に侵入し、19人もの入所者を殺害し逮捕された植松聖容疑者は今年2月、措置入院となって精神病院に収容されていた事実が明らかにされています。しかし、その入院期間はたった2週間であり、かくも危険な人物をあっさりと退院させたのはなぜか、との疑問が湧きます
ヘルスプレスの掲載記事が、措置入院(強制入院)とその扱いを巡って解説していますので、取り上げます
「戦後最悪」の犠牲者! 施設殺傷事件の植松聖容疑者が精神病院を「スピード退院」した理由
(前略)
まず、挙げられる理由のひとつとして、植松容疑者が「何も事件を起こしていなかった」点だ。措置入院は通常、自傷他害の事件、つまり自分を傷つけるか、他人を傷つける事件を起こして、初めて警察が関与する。
そして、入院の必要があると判断され、精神保健指定医の下で決定されることが多い。植松容疑者のように、自傷他害の事件を起こす前に、措置入院となるのはレアケースといえるだろう。
すでに事件を起こしていれば、医療現場も本人への危険視をさらに強め、退院処置にも慎重だったはずだ。
今年2月では「妄想を抱える患者」のひとり
精神病院においては、患者の妄想など日常茶飯事だ。植松容疑者の「重度障害者は殺す」という発言は、危険思考の現れだが、どんな突拍子もない思考も精神病院ではありふれたことである。排外主義やレイシズムを、まじめに意見する患者は珍しくない。
報道による「重度障害者は殺す=人種差別」「衆院議長公邸=国家権力」「世界平和=誇大妄想」といった植松容疑者の言動からは、完全な妄想症状がうかがえる。
衆院議長公邸を訪れたとはいえ、暴力事件を起こしたわけではない。病院側には、植松容疑者の「妄想性障害」は、それほどマークすべき人物として映らなかったのだろう。
残念ながら、今年2月の段階では、植松容疑者は「妄想を抱える患者」のひとりでしかなかったのだ。
危ない思考の持ち主を「とめる」には......
そんな危ない思考の持ち主に対して、「事件を起こす前に入院を」という世論はもっともだ。しかし、現実的には警察沙汰でも起こさないかぎり、入院は難しい。
というのも、自傷他害の恐れがあるような状態の人間に対して、周囲の人はとっくに近づかなくなっているからである。
もし、家族や友人、仕事仲間などとの関わりがあれば、もっと早い段階で周囲が「おかしい」と気づき、治療や入院の、何らかの働きかけがあるはずだ。植松容疑者も、2月の段階では在職中だったからこそ、職場が異変に気づき入院の運びとなった。
ところが、事件発生時は、無職で同居の家族もおらず、社会との関わりが希薄だった。「おかしい」と気づける人が、いなかったのだ。社会的孤立のなかで、妄想症状が悪化していった可能性はある。
今回の件で、病院の過ちを指摘するなら、退院後の社会的枠組みを築くべきだったことだ。
今の「精神疾患があっても社会生活を」という潮流の中では、たとえ家族がいなくても、患者を支える公的機関のサポートや社会資源はさまざまにある。
(後略)
植松容疑者を担当した精神科医がどう判断したのか、証言がないので憶測するしかありません
おそらく大麻の影響で誇大妄想を語っている患者、と見ていたのでしょう。ですから大麻の影響が抜ければ、退院させても問題はないと判断したと推測されます
退院に関しては県知事(県庁の担当部局)に解除を申請し、判断を仰ぐのですが、病院から「措置入院を継続する必要がない」と理由付けされれば医師の判断が尊重されます。県側がいちいち患者に面接し異常の有無を確認したりはしません
精神保健福祉法では「解除は入院を継続しなくても自傷他害のおそれがないと認められる必要があり、都道府県知事が指定する指定医をしてこれを判断させる場合(29条の4)、病院管理者が指定医に判断させる場合(29条の5)、定期病状報告(38条の3)又は退院請求(38条の5)について精神医療審査会の意見を受けた場合、職権による場合(38条の7)」と定めています。上記のケースでは担当医が精神保健福祉法の定める指定医だったのでしょう。ですから措置入院の解除にあたって検証したり、第三者が診察したりといった手続きはないわけです
当然ながら、医師は植松容疑者が語った妄想の内容を吟味したり、問い質したりはせず、聞き流していたと思われます
退院後に障害者を次々と殺害する危険、というものを考慮しなかったのでしょう
植松容疑者の血液中から大麻の成分が検出されていたにも関わらず、退院時に病院から警察への通報はありませんでした。また、障害者施設「津久井やまゆり園」に対しても植松容疑者退院の連絡はありません
病院が悪いのか、神奈川県の保健部に問題があったのか、そちらも検証されるべきでしょう
ただ、お役所仕事の常として検証は行われても、責任の所在は曖昧にぼかされるのが常であり、誰も責任を負ったりはしません
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