障害者施設19人殺害 犯人の心の闇

神奈川県相模原市の障害者施設に元職員が侵入し、19人を殺害した事件については、専門家がさまざまなコメントを述べています
多くの人はこの異常な事件の犯人植松聖がどのような意図、目的、動機で犯行に至ったのか、納得できる説明を求めているわけであり、メディアもそれに応じる必要があると考え、犯罪心理学の専門家のコメントを依頼して記事にしているのでしょう
しかし、植松容疑者が逮捕されたばかりで取り調べも進んでいない今、犯行に至った経緯も不明なまま、「麻薬による異常な行動だ」とか、「精神疾患のため妄想念慮にとらわれた挙句の犯行」などと決めつけたりはできません
そのため専門家によるコメントも歯切れの悪いものになってしまいます


襲撃は今年2月、衆院議長宛ての手紙の中で予告していた。相模原市の知的障害者施設殺傷事件で、26日に殺人未遂などの容疑で逮捕された元施設職員、植松聖(さとし)容疑者(26)。「(施設を)標的とします」との内容がきっかけとなり、「他害の恐れがある」として措置入院に。「意思の疎通ができない人たちをナイフで刺した」。知的障害者への強い嫌悪感をあらわにした供述は何を意味するのか。
本格的な動機の解明が始まる。
「私は障害者総勢470名を抹殺することができます」。植松容疑者の手紙の冒頭に出てくる言葉だ。専門家らは一様に異常性を見いだす。
植松容疑者は、数年前に近くの小学校で教育実習をしていた際は「いい先生」などと児童らの評判もよかった。しかし最近は「精神的に不安定で切れやすい」「素行が悪い」として近所でも有名だったという。
議長に宛てた手紙の中には障害者への嫌悪の言葉が並ぶ。「障害者に対するゆがんだ価値観の持ち主だということは明白だ」。奈良女子大の岡本英生教授(犯罪心理学)は、こう分析する。
一方、福祉施設は人手不足から過度なストレスがかかり、理想と現実に悩む職員も少なくないとされる。元静岡県警科学捜査研究所心理科長で関西国際大の中山誠教授(犯罪心理学)は、こうした実情が植松容疑者の障害者嫌悪につながった可能性もあるとみる。
中山教授は「職員として接する中で一生懸命に対応しても、障害者が理解してくれず、仕事への不満が募っていった可能性がある」と推察する。
ただ、異常性の中に、一種の冷静さも見え隠れすると専門家は口をそろえる。
《重複障害者が多く在籍している二つの園を標的とします》《職員は絶対に傷つけず速やかに作戦を実行します》。手紙には「作戦内容」として具体的な記述も目立つ。
岡本教授は「目的達成のための一貫した部分も読み取れる。強い自己肯定感を持って事件を行う意図があった」と分析する。
こころぎふ臨床心理センター(岐阜市)の長谷川博一センター長は手紙が議長宛てだったことにも注目する。「飛躍した解釈に基づく内容だが、真剣な文面だ。公的な場所に届けた点からも『少しは社会に思いが届くのでは』という期待があったのかもしれない」
ゆがんだ解釈を並べた手紙通りの凶行は26日未明に実行に移され、19人もの入所者が犠牲になった。
(産経新聞の記事から引用)


障害者施設を襲撃し入所者を殺害する計画は一貫性があり、論理的な矛盾や飛躍がないのは、それが繰り返し検討され綿密な詰めを重ねた結果なのでしょう
その部分で異常はなく、現実に則った判断ができている(犯行動機そのものは異常であり、逸脱したものですが)と解釈できます
テロリストの多くは冷静沈着であり、決して正気を失っていないように
ゆえに狂気に取り憑かれ、現実検討能力を失い、朦朧たる意識の上で犯行に至ったとは考えられません
また、薬物の影響下で正常な判断力を失ったまま凶行に至ったとも考えられず、大麻を使用して心神耗弱状態だったとも思えません
植松容疑者は極めて怜悧な心境のまま着々と入居者に致命傷を負わせ、殺害し続けたのでしょう
ただし、重度の障害者を殺害することこそ正義だ、といった妄執にとらわれ、離れられなくなったのはなぜか、という疑問が湧きます
現実問題として、障害者を殺害したところで世の中を変えることなどできないのは自明であり、それを「変えられる」あるいは「変えられるかもしれない」と思うこと自体が常軌を逸しています
もう一つ言いたいのは、なぜ衆議院議長宛に手紙を書いたのか、です
衆議院議長といっても議院外では特別な権限はなく、いわば名誉職みたいなものであり、行政機関に何かを命令できる立場ではないとほとんどの人は理解しています
厚生労働大臣や総理大臣宛に手紙を書くのならまだ理解できますが
しかし、植松容疑者は衆議院議長を何か特別な立場だと誤解しており、行政府(警察を含む)に命令する権限があると思い込んでいたのかもしれません
衆議院議長に手紙を書き、計画を打ち明け、計画実行の承諾を得ることで植松容疑者は「自分は衆議院議長により特別な権限を与えられた立場だ」という万能感に浸りたかった、と推測できます

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