中国アニメ 巨額投資も空振り?
経済雑誌など掲載するアニメ関連記事は、そのほとんどがお金の話に終止してしまい、作品そのものを論じようとはしません。関心はもっぱらどれだけの金額を投資し、どれだけの利益が挙がるのかという部分に向けられるためです
今日紹介するForbes Japanの配信記事ももっぱらお金の話です
すでに中国では日本を上回る数のアニメーションが制作されており、その事実からしてもアニメーション業界に流れ込んでいる投資は巨額なものになっていると推測されます
しかし、現状としては「成功した作品」と評価されるものは少なく、投資に見合うだけの利益は確保できていない、と記事を書いた中国人のライターは指摘します
オタク人口2億人 中国で始まった「国産アニメ」制作バブル
中国銀行で働くラエ・ヤンは時間があればオンラインでアニメを見ている。27歳の彼女は毎日、「GANGSTA.(ギャングスタ)」や「銀魂」といった日本の人気アニメを何時間も視聴し、バーチャルの世界に浸っているという。
ヤンのようなアニメ好きの中国の若者は2億人にのぼる。日本のアニメ、コミック、ゲーム、そしてラノベ等をベースにした“二次元”マーケットは今年、2500億元(380億ドル、約4兆2,000億円)に達した。中信証券国際(CITIC)はバーチャルの世界を好む若者は今後も増加し、数年内にマーケット規模は5,000億元(約8兆4000億円)に拡大すると予測する。
アリババやテンセントも巨額投資
アリババやテンセント(騰訊)など中国のIT大手もその人気に着目し、アニメのストリーミングサイトや国内のアニメ制作会社に何十億ドルもの投資をしている。投資家たちは、中国の制作会社のクオリティが、いつか日本に追いつくと確信している。
アニメやコミックを映画化、テレビ番組化し、広告やチケット、関連商品の収入につなげようとする動きも出ている。
上海のアニメ制作会社絵夢動画(ハオライナーズ)に出資している北京のベンチャーキャピタルSinovation Fundの投資責任者、チェン・ユエティンは「ラノベは今は若者向けのサブカルチャーだが、5年後にはもっと大きな文化になるかもしれない。大企業は遅れずについていく必要がある」と語った。
アニメ共有サイトのAcFunは昨年8月のラウンドでアリババの動画サイトYoukuTudou(優酷土豆)から5,000万ドル(約55億円)を調達した。その1か月後、深セン証券取引所に上場しているAlpha Animationは中国の漫画サイト有妖気を1億3,700万ドル(約150億円)で買収した。テンセントは昨年11月、中国アニメ作品を配信している動画共有サイト「ビリビリ(嗶哩嗶哩)」の株式の15%を3050万ドル(約34億円)で取得した。
しかし、北京のコンサル企業の易観智庫(Analysys International)のアナリスト、ホァン・グオフォン(黄国峰)によると、投資のほとんどは失敗に終わっているという。
現状、視聴料でコストを埋めるほど収益を上げているサイトはなく、中国人のアニメファンは中国の作品を評価していない。
2014年に公開されたアニメ映画「秦時明月(The Legend of Qin)」の興行成績は910万ドル(約10億円)で、制作費用の1,520万ドル(約17億円)を下回った。今年放送されたテレビシリーズは、安っぽい特殊効果と原作から外れたプロットが批判され、中国のレビューサイト豆瓣(Douban)で10点満点の4.6点と低評価に終わった。
(以下、略)
中国の投資家の頭の中には、スタジオ・ジブリの宮﨑駿作品のごとく劇場版1本で100億円を稼ぐイメージが固着しており、そんなおいしい話を求めて投資を続けているのかもしれません
中国のアニメーションは当ブログで度々紹介していますが、大ヒットした作品というのは数えるほどしかなく、日本を上回る数の本数を制作していながら大半は低評価の不人気作ばかりというのが現状のようです
記事の中で取り上げられている「秦時明月(The Legend of Qin)」は、武侠物として成功した作品の1つであり、昨年は第5期となるテレビシリーズが放映されました(中国では実写ドラマ化もされています)
しかし、この薄っぺらいゲームのおまけムービーみたいな画像で、視聴者を納得させられるのかは疑問です
The Legend of Qin - Season 5 - Ep 5 (Engsub) 2015
前にも触れましたが、中国では西遊記、孫悟空をモデルにしたアニメーションがここ数年の間に30本以上作られた、という笑えない話もあります
その中で、昨年夏に公開された「西遊記 ヒーロー・イズ・バック」は、興行収入が9億5000万元(約184億円)を記録し、唯一の成功作といえます
「中国の古典を素材に」というコンセプトはともかく、西遊記をベースにどれだけ面白いストーリーを生み出せるかが問われるのであり、やはりそこには限界があるように感じられます
たとえば「名探偵コナン」のように、漫画として「少年サンデー」に20年も掲載され、テレビシリーズも20年の長きに渡って放映され、劇場版は毎年30億円以上の売上を達成するといったコンテンツが日本にはあります
こうした「複数の媒体で展開し、長い期間安定して売れるコンテンツ」というのが中国の目指すものなのでしょう
しかし、成功のノウハウさえ学べば誰にでも同じような売れるコンテンツが作れる、というものではありません
特に中国のように「ボーイ・ミーツ・ガール」(少年と少女が出会い、恋が芽生える設定)を、こどもたちにとって不道徳だからと否定する国では、アニメも漫画も退屈なものとなってしまい、視聴者をワクワク、ドキドキさせるような展開は望めないのですから
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