台東区母親殺害事件を考える 15歳の長女逮捕
東京都で15歳の女子高生が母親を殺害した容疑で逮捕される事件があり、さまざまな憶測が広がっています
まだ事件の背景、家庭環境など不明が部分が多く、報道内容だけから断定的に語るのは危険であり、事件の意味を読み誤る可能性があります
現時点では一般論めいた話しかできないのですが、事件について自分なりに思うところを述べることにします
同居の母親を殺害した疑いで警視庁に逮捕された東京都台東区の高校1年の長女(15)は、事件当時通っていた中学校で「1人で教室の黒板に絵を描いていた」と同級生らが話すなど、周囲になじめずにいた。一方、母親は教育熱心で知られ、英語を学ばせるために留学も検討していたという。事件後、進学した高校に通常通り通学していたという長女。専門家は「親に反発できず、『殺さなければ解放されない』と考えた可能性がある」と指摘する。
捜査関係者によると、同居する父親は仕事で不在がちで、長女は母親と2人で過ごすことが多かった。
近所の住民らによると、長女は千葉県内の私立小学校に通い、ピアノや水泳を習っていた。系列の中学には進学せず、受験をして都内の私立中学に入学した。
中学時代の同級生らは、長女について「教室の黒板に1人で絵を描いていた。友達と一緒にいるタイプじゃない」「親しい人がいるかもよくわからない」などと話していた。
東京都台東区によると、長女が小学2年だった平成20年9月、近所の住民から「子供が泣いている。母親と一緒にいるときは元気がない」などと、区の子ども家庭支援センターに通告があった。センターは長女が受診した診療所などを調査したが、
暴力を受けたような形跡はなく、21年3月に「虐待はなかった」と結論付けたという。
捜査関係者によると、長女は学業の方針などのほか、普段の持ち物などについても母親に干渉され、不満を漏らしていた。
新潟青陵大大学院の碓井真史教授(社会心理学)は「親への愚痴を周囲に漏らすことができずにいたのではないか」と指摘。「期待を一身に受け、いつのまにか親の世界に閉じ込められてしまった結果、最悪の手段を選択してしまったのかもしれない」と話す。
(産経新聞の記事から引用)
漫画やアニメでは、教室で1人絵を描いている彼女を誰かが強引に美術部に引っ張っていったり、漫画同好会へ誘ったりして青春譚が始まるわけですが、現実はそんな展開になりません
この長女は一人っ子ですから兄妹は遊ぶ機会もなく、同年齢の友達もいなかったのでしょう。母親はそんな彼女の立場を懸念もせず、友だちと遊ぶ機会など時間の無駄だと考えていたのかもしれません
学校への通学と受験勉強と習い事が彼女に与えられたすべてであり、それ以外は許されなかった可能性もあります
すべては良い学校へ進学するためであり、それこそが成功の証しであり、娘はやがて感謝するようになるだろう、と母親は独善的な考えに浸り、娘の本心など察しようとはしなかった…
母親は自分の「正しい考え」を信じて疑わず、娘を従わせるのは当然だと思っていたのでしょう
その「正しい考え」の結果が今回の殺人事件です。母親は娘に殺害されてもなお、娘の孤独や煩悶、葛藤を理解できないまま冥府で途方に暮れ、「正しい考え」に従わなかった娘を恨んでいる、という状況も想像できます
母親が亡くなってしまった今、母親の考えを確かめるすべはないものの、娘を追い詰めてしまったという結果は動かせません
もちろん母親は、「娘を追い詰めたりした事実はない」と否定するわけで
さて、逮捕された娘は何を語るのでしょうか?
もっとも、その語るべき相手たる母親はすでに亡いのであり、母親との和解の機会は永遠に失われてしまったのですが
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