12年かけて完成 中国アニメ「大魚・海棠」は成功するか?

以前、当ブログで紹介した中国アニメ「大魚・海棠」が、制作期間12年を経てようやく完成し、公開の運びとなったと「ロケット・ニュース」が報じています
中国アニメ「大魚・海棠」については、2011年に当ブログで紹介しています

日本のアニメと中国のアニメの差はどこにある?

とっくに完成し、公開されていたものと思っていました
クオリティの高いアニメであるのは間違いありませんが、制作に12年を要した事情も気になるところです
中国アニメの場合、早く作って早く公開し、早く制作資金を回収しようというビジネスモデルが主流のようですから、随分と意外な感じがします


中国アニメが本気出してきた! 制作12年のアニメ映画『大魚・海棠』が圧倒的クオリティでぐうの音も出ない!!
中国アニメと言えば、パクリ作品の宝庫。たまのオリジナル作品も、たいがい作画崩壊MAX。たしかにそんな作品は星の数ほど存在し、中国人でさえ「中国のアニメはダメだ」とまで嘆く始末である。
だがしかし! この度、そんな中国アニメのイメージを覆す作品が誕生するかもしれないというのだ。この度、公開された予告動画を見てみると、まさかまさかの圧倒的クオリティ! ぐうの音も出ない出来ばえなのである。
・圧倒的な映像美にぐうの音も出ない!
予告動画では、「すべての人類は、海にすむ1匹の巨大な魚だった」というナレーションと共に、ひとりの少女の姿が映し出される。まずは何も考えずに見てほしい。鮮やかな色彩のなか、人が、風が、海が、信じられないほどヌルヌルとなめらかに動いている。そんななか、時折流れる不穏な空気、どれをとっても圧倒的の一言で、みるみるうちに作品の中に引きこまれてしまうのだ。
・少年×少女×海×神話
作品の名前は『大魚・海棠』。中国メディアでは、ストーリーが以下のようにザックリと説明されている。
「海の下に広がるもうひとつの世界。そこの住人は世界を管理するチカラを持つ、いわば神のような存在だ。そこに住む少女 “椿” は、ある日、イルカに姿を変え人間の世界に行こうとしたところ波に飲まれてしまう。
危ないところを人間の少年に助けられるが、少年は命を落としてしまった。少年の勇気に感動した椿は、彼を何とか生き返らせようとするのだが、それは神の禁忌を犯すことだった……」
(以下、略。ロケットニュースの記事から引用)


中国アニメといえば、上記のロケットニュースの記事の省略部分にも書かれているように西遊記を翻案したアニメ映画「大聖帰来」が大ヒットしたのですが、その前後に「西遊記」を題材にしたアニメが30本も作られた、という笑い話にならない現実があります
つまり、同じネタに多くのアニメ制作会社が群がり、駄作を量産している現状があるわけです
しかも、元となった「西遊記」を大胆に翻案して新たな物語に仕立てるだけの創造力を欠いているのですから、孫悟空(斉天大聖)が暴れまくるだけの冒険活劇にとどまるしかないのは明らかです
中国のアニメ業界は中国古典文学作品である「西遊記」の世界を破壊してはならない、とのモラル(中国政府の頭が堅い官僚の発想)に縛られており、結果としてつまらないアニメになってしまうのもやむを得ないのでしょう(こうした制約を取っ払い、新たな物語を生み出す創造力こそ、日本アニメの真骨頂ですが)
さて、話を戻して「大魚・海棠」です
壮大なファンタジーを圧倒的な映像表現で描く、という宮﨑駿の「もののけ姫」の影響もあってか、この手の作品を実現しようとの試みは数多くあったとは思われます
が、劇場版長編アニメとして成功したものは数えるほどしかありません
作品のクオリティを第一とすれば多大な制作費と時間が必要となり、映画として当たらなければ多額の借金を抱えるのは明らかなので、スポンサー集めも難しいという大人の事情もあります
さらには映画の公開前に海賊版が出回るような中国では、興行収入で制作費を回収するのは容易ではなく、日本のようにDVDを売って儲けるわけにもいかないのであり、そもそもアニメでの商業的な成功が極めて難しい環境と言えます
ですから作り手の12年にも及ぶ奮闘には敬意を表しますが、それが報われるかどうかは分かりません(幾つかの、国際的なアニメコンペで賞を獲る可能性はあるにしても)
作品としての完成度とは別に、ビジネスとして成功できるかどうか結果を見守りましょう

Da Hai 大鱼·海棠 Chinese Animated Film



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