高速鉄道自慢も中国の鉄道は借金58兆円

インドネシアに高速鉄道輸出を決め、「日本の新幹線に勝った」と自画自賛を繰り広げている中国ですが、現地での工事は宙に浮いたままであり、いつになったら本格着工できるのか見通しが立たない状態です
工事計画書を中国語で提出したため、インドネシア政府からは英語かインドネシア語で再提出するようダメ出しされたり、建設予定区間で地盤のボーリング調査もしていないと暴露されたり、その杜撰さが報じられています
ところで世界有数の高速鉄道網を整備するに至った中国の鉄道事業は、いったいどのような実態なのでしょうか?
一部の報道は、鉄道建設で借金が膨らみ58兆円にも達している、と書いています。中国メディアは高速鉄道は黒字であると宣伝しているのですが、どうやらそれは建設費を除外した数字であり、建設費をペイするほどの高い収益を挙げているわけではなく、むしろこの莫大な借入金によって身動きできない状態に陥っていると見た方が適切なのかもしれません
以下、「勝又壽良の経済時評」から鉄道建設費用をめぐる事情を記した部分を引用します


中国、「高速鉄道」国内敷設は大赤字「海外受注」高額吹っかけ
①「中国鉄道総公司が明らかにした情報によると、海南島を一周する環島高速鉄道の全線開通に伴い、2015年の鉄道建設がすべて完了した。15年の中国の鉄道固定資産投資は8200億元(約15兆5800億円)、新たに敷設した鉄道の営業距離は9000キロメートル余り、新規着工プロジェクトは61件。15年末の時点で、中国の鉄道営業距離は12万キロを上回り、世界2位となった。うち、高速鉄道は1万9000キロで世界1となっている」。
②「鉄道への投資は勢いを保っており、鉄道建設に必要な資金はすべて調達され、一連のプロジェクトが無事に着工・実施された。15年末、中国北西部では、北疆鉄道の重要な一部分となる全長420キロの鉄道が着工した。また、アジア横断鉄道と中国・ラオス国際鉄道の重要な一部分が開通し、中国-ASEAN自由貿易区の建設推進などにとって重要な異議を持つ」。


中国が国策として国内のみならず、周辺国へも高速鉄道を延伸させ、経済圏に引き込もうしてしているわけですが、こうした莫大な投資を支えるほど資金が潤沢というわけではなさそうです
その証拠に、建設を請け負っている企業に対して多額の未払金が発生しているのだとか


中国政府は、GDPだけの押し上げを狙っており、工事請負企業の資金繰りまで関心を寄せていないのだ。「下請け業者などへの未払い金が、約4兆5824億円にも達した模様」と報じられる始末である。私のブログではこれまで、国有企業に借金させてインフラ投資をさせている旨を報じてきた。今ここに建設コストに見合った資金も払わない実態が明らかにされた。


2015年6月にはモスクワからタタルスタン共和国の首都カザンを結ぶ高速鉄道建設(800キロ)で、ロシア政府と中国が合意しているのですが、合意しただけで工事はまったく進んでいません。建設費用は2兆6000億円と見積もられています
この路線の狙いはカザンから遥か北京まで、高速鉄道の新線を建設するという遠大な計画の一部です。しかし、石油価格下落によって財政難に陥ったロシアに建設費を賄う余裕はなく、中国もこれ以上の投資負担に耐えられないのであり、計画実現は困難でしょう
あるいは中国の肝いりで創設された、アジアインフラ投資銀行が融資するのでしょうか?
モスクワから北京まで高速鉄道を繋いでも、飛行機の方が早いのですから利用客が列をなす可能性は皆無です。高速鉄道建設の莫大な費用を考えれば、飛行機利用が合理的な判断です
本来はドル箱路線であるはずの、北京~上海間の高速鉄道すら営業赤字だと言われるほどですから、中国国内に張り巡らされた高速鉄道網の輸送密度、収益性には大いに疑問が湧きます。走れば走るほど赤字、ならば建設費用の償還もままならず、年に数千億円の営業赤字を生み出し続けるという悪夢のような展開になるのかもしれません
それでもなお、中国は人口の少ない地方へと高速鉄道を延伸させる計画を維持していますので、今後はさらに赤字を拡大させる方針のようです

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