セブン&アイ会長を辞任した鈴木氏をやたら褒めるメディア

先日、社内人事をめぐる混乱を受け、鈴木敏文セブン&アイホールディング会長が突然辞任を発表して注目されました
グループ内でセブン-イレブン・ジャパンを率い、5期連続の増益を実現させた井阪隆一社長を退任させようと鈴木氏が役員会にはかり、投票の結果これを拒否されたというのが経緯です
背景には鈴木氏が自分の息子を将来、社長に据えようと世襲を狙っている、との憶測があり、これに創業者である伊藤家や大株主の米ファンドが反発して鈴木氏の人事案をひっくり返したと報道されています。コンビニエンスストア「セブン-イレブン」を育て上げ、セブン&アイグループを日本一の流通企業にした功労者ですが、思いがけない形で足下をすくわれ、会社を去る結果になってしまいました
さて、そんな「内輪の事情」経済誌をはじめとする各メディアが取り上げる中で、異色と言える記事を掲載しているのが「プレジデント」です
真っ向から鈴木氏を擁護し、世襲など考えてもいないのだと全面否定する記事があまりに異色、かつ鈴木氏信仰に溢れていますので紹介します


鈴木敏文・セブン&アイ会長辞任の「本当の理由」
コンビニエンスストアを産み出し、日本最大の流通グループを作り上げた鈴木敏文氏は、なぜ辞任しなければならなかったのか。鈴木氏本人をして「私以上に私を知っている」と言わしめたジャーナリストの勝見明氏が、その真相を分析する。
なぜ鈴木敏文氏は世間から誤解されるのか
セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長が辞任の意向を表明した。私はこれまで鈴木氏に数十回取材を行い、鈴木氏の発想法や仕事の仕方、生き方についていろいろな角度から質問し、その暗黙知を引き出し、言語化(形式知化)するという仕事を続けてきた。そのため、鈴木氏本人から「私以上に私を知っている」と評されたこともある。その私から見ると、今回の辞任劇についてのマスコミ報道や世の中の反応には、多分に「誤解」が含まれているように感じる。
鈴木氏の思考法の大きな特徴は、常に未来に起点を置いて発想することにある。
過去や現在の延長線上で考えるのではなく、未来に目を向けて、可能性やあるべき姿を見いだしたら、そこから顧みて過去や現在を否定し、目の前の壁を打破して、実現していく。
鈴木氏が未来に目を向けるときは、既存の常識や過去の経験というフィルターは一切通さないで「見る」ため、われわれ凡人には見えないものが見えるのだろう。この「未来に起点を置く」という発想は、過去や現在の延長線上でものごとを考える人々からはなかなか理解されず、その都度、周囲から猛反対にあった。セブン-イレブンの創業も、おにぎりの発売も、セブン銀行設立もそうだった。
未来が今を決めるのだ。
私が鈴木敏文という人間に強い関心を持ったのは、巨大企業のカリスマ経営者からだというだけではない。20世紀最大の思想家であるハイデガーの「未来が過去を決定し、現在を生成する」「過去が今を決めるのではなく、未来というものを置くことによって、過去が意味づけされ、今が決まる」という考え方を、鈴木氏が経営において実践していることへの共感からだった。
過去から発想するか、未来から発想するか
鈴木氏はコンビニの経営においても、今どんなに売れている商品であっても、満足のいくレベルに達していなければ、「売れれば売れるほど、セブン-イレブンの商品はこんなレベルかと失望される」と、その商品を店頭から即刻撤去させ、ゼロからのつくり直しを指示する。これも、「過去が今を決めるのではなく、未来というものを置くことによって、過去が意味づけされ、今が決まる」という考え方からだ。
今回鈴木氏が提案したセブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長を退任させる案も、まったく同じ発想から出てきたもののように私は感じる。
一方で、同社の指名・報酬委員会において社外取締役が「5期連続最高益を実現した社長を辞めさせるのは世間の常識が許さない」と鈴木氏の案に反対したのは、過去の延長線上での発想であった。「世間の常識」は常に過去の延長線上で考えるものだからだ。
(以下、略)


長文なので、前半部分のみ引用です。全文を読みたい方は上記の「プレジデント」のアドレスへアクセスして下さい
なぜか唐突にハイデガーを引用し、鈴木氏は「未来から発想する経営者だ」と持ち上げています。もし鈴木氏が「未来から発想する経営者」であるならば、自分の息子をグループ企業(書籍などのネット通販を手掛ける会社)の社長に据えようとした時点で、「世襲を狙うつもりか」と社内から猛反発を受けるであろう事態を予見できたはずです
そしてネット通販部門の経営トップに就いたものの、結果を出せないままという息子の手腕を疑問視し、外すのが当然の判断だったはずです
ですから鈴木氏が「未来から発想している」などというのはまったくの誤りであり、逆に未来が読めないからこそ、今回の失脚劇の当事者になってしまったと言えます
筆者が書くように、長年イトーヨーカドー、セブン-イレブンの役員を務めてきた鈴木氏を、セブン&アイの役員や社員が「誤解している」とすれば、それだけ理解されていない人物ということになり、経営理念や経営方針などが部下にまったく浸透していなかったと判断されてしまいます
持ち上げているつもりが、結果は「裸の王様だった」と貶めているも同然でしょう
「未来から発想した結果、現実を読み誤った」と書くのならまだしも
世間一般にはテレビドラマ「半沢直樹」並みの逆転劇に映ったため、注目を集める事態になったのかもしれません
しかし、セブン-イレブンをめぐっては売上好調ながら、フランチャイズ経営を巡って現場のオーナー達に不満が鬱積しているのは事実ですし、そうした負の面について筆者はまったく触れようともせず、鈴木氏を礼賛するのはどうかと思ってしまいます

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