中国メディア「どうして中国が最初に重力波を発見できなかったのか」
「超大国」との呼称に自惚れているのか、自信過剰なのか、中国メディアは「自分たちは何でもできる。経済力、科学力、軍事力でも中国は世界のトップにいるのだ」との自己像を振り撒くのが仕事のようです。それはすなわち、中国共産党が描く自己像なのでしょう
それでもままならない現実に対し、あれこれ講釈を垂れて国民の不満のガス抜きをするのも中国メディアの「重要な任務」なのだろうと思われます
つい先日、世界のメディアの話題をさらったのがアメリカの研究チームによる重力波観測の報せでした
この報道を受け、中国のメディアは「どうして中国が最初に重力波を観測できなかったのか」との記事を書いているのだそうです
しかし、着眼点がかなりずれている気がします
サーチナの配信記事を引用します
米国の研究施設LIGOが先日、かつてアインシュタインが予言したとされる「重力波」の観測に成功したと発表した。中国メディア・騰訊網は13日、「どうしてまた米国人が重要な研究成果を挙げたのか」として中国でこのような成果が出てこない理由について論じた記事を掲載した。
記事は、欧米では科学者のみならず一般市民においても「付帯する応用成果がなくても、(重力波の観測のような)宇宙への認識、世界の法則についての研究には資金や資源の投入を惜しむべきでないと考えていると指摘。「こういった理想主義的理念について、われわれは考えるに値する」とした。
一方で、中国の研究業界は「資金などの投入規模は大きいが、基礎研究に対する投資が相対的に不足しているという問題を抱えている」と分析。宇宙開発においても重力波プロジェクトや彗星探査を通じて太陽系の起源を探るプロジェクトといったような研究が非常に少なく、神舟(有人宇宙飛行)・天宮(宇宙ステーション)・嫦娥(月探査)といった応用プロジェクトに偏っていると指摘した。また、国の研究支出全体に占める基礎研究の割合が5%以下で、主要国の15-30%に比べてはるかに低いことも紹介した。
そのうえで、この状況を変化させるには「人びとの興味を引き起こすことがとても重要だ」とし、政府が主体になって研究費用を支出する現状を打破して企業や個人ファンドからも支援が行われるようにする必要性を説いた。その実現に向けて、「宣伝や市民とのコミュニケーションを重視し、市民が容易に興味を覚えるような科学プロジェクト、さらにはSF小説・映画を利用すべきである」と提言。「わが国の科学者はこの点で非常に劣っているのである」と結んだ。
「すぐに目に見える形で現れる成果」を求めるというのは、宇宙開発をはじめとする研究業界のみならず、地方政府や企業を含めた現代中国全体に存在する問題と言えそうだ。それは、成果を出す側のみならず、一般市民を含めた「成果を待つ側」の人間にとっても考えなければならない点である。
もちろん目に見える成果でその重要性をアピールすることも必要ではあるが、同時に5年、10年さらにはそれ以上先に花を開くであろう成果の種も撒かなければならない。
多少なりとも国威発揚のための宇宙開発計画偏重を反省している節が伺えます
しかし、後段では「政府主導では駄目だ」と言い、民間から資金が集まるよう「SF小説や映画を利用してプロパガンダをやれ」との主張です
どこまでも「社会主義脳」から抜け出せないらしく、上から下へ強制する、プロパガンダをするとの発想がついて回るのには苦笑するしかありません
アメリカ映画界は科学研究費獲得のプロパガンダとしてSF映画を作っているのではなく、アメリカ人はSF映画が好きだから作っているわけです。アメリカにはSF小説や映画をエンターティメントとして楽しむ文化が根付いている、との事情が中国には理解できないのでしょう
科学への興味を掻き立てるのに、個人の自発性、自由な発想に委ねるとの選択は最初からありません。もちろん研究者の自由な研究など認める気もなく、国家が計画し研究者に参加させる(強要する)のが正しいという考えです
中国共産党の提唱する科学的社会主義は、あくまでも共産党が計画し、主導し、国民を導く(奴隷のように従属させる)システムです
そこには科学への貢献とか、人類への貢献といった奉仕の気持ちなど、欠片もないと言えます。己の、科学的社会主義の勝利こそが目的だからです
さて、記事には明文化されていませんが、やはり「世紀の発見」とか、「ノーベル賞確実の研究」という結果にこそ執着があるのでしょう
「世紀の発見」を成し遂げ、中国の科学力を誇示し、科学的社会主義の正しさを証明して世界をひれ伏せさせたいとの思惑が透けて見えます
以前、当ブログでは日本人のノーベル賞受賞者がアジア諸国の中で突出している理由を問う、中国のアンケート調査の結果を紹介しました。再掲すると、以下の様なものです
「日本人のノーベル賞受賞者がアジア諸国の中で突出して多い理由は?」との質問に対して、最も多いのは「過去の侵略で得た財産を、科学技術や経済発展に投資したから」の17.86%との回答だ(8日午前10時現在)。2番目は「日本は米国の従順な弟分なので優遇されているから」の17.09%。」
設問に対し例示された答えを選択させるアンケート調査なのでしょうが、こんなおバカなアンケートを実施し、おバカな回答をする国民の認識こそ、中国共産党の教育の賜物でしょう。民度も低く、現実認識もまともにできないような愚民を育てるのが科学的社会主義だという証明です
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