「尖閣で日中衝突なら日本は5日で敗北する」との記事
複数のインターネットメディアが、「尖閣諸島で日中が衝突すれば、日本は5日で敗北するとのシミュレーション結果が出た」とする記事を掲載しています
軍事・安全保障関係で名の知られたランド研究所のシミュレーション結果だ、と箔をつける説明つきです
しかし、その中身たるや仮想戦記並みのトンデモ展開であり、とても軍事専門家が取り組んだシミュレーションとは思えない内容になっています。日米の軍事行動はすべて後手に回り、中国の人民解放軍だけが無敵の強さを発揮する、といった内容です。こんなお伽話のようなシミュレーション結果を誇示し、「だから日本は中国に逆らうべきではない。尖閣諸島も沖縄も中国に献上すべきだ」と言いたいのでしょうか?
以下、産経新聞の記事を引用します
尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる日中衝突で「日本は5日間で敗北する」という衝撃のシミュレーションが、インターネット空間で飛び交っている。米外交誌「フォーリン・ポリシー」の1月15日号に掲載された仮想シナリオの紹介記事である。特に国防総省に近いランド研究所が実施したとの触れ込みだから、その衝撃は余計に増幅された。
原文にあたってみると、記事は2人の記者が連名で書いており、ランドが実施した詳細なシミュレーション報告ではない。本文も「ホワイトハウス地下の危機管理室ではなく、ランド研究所で専門家にたずねる形で行われた」と、ただし書きをつけている。
5日間の初日は、日本人の右翼活動家が尖閣に上陸し、中国の海警に逮捕されるという前提ではじまる。2日目は、外交か警察案件のはずが、いきなり日本が護衛艦、戦闘機を派遣し、米国が駆逐艦や潜水艦をだして中国の軍艦とにらみ合う。
3日目は、中国のフリゲート艦が射程内に入った空自機を機関砲で攻撃。交戦状態になって、海自艦2隻が撃沈される。4日目と5日目は中国がサイバー攻撃で日米の送電や証券取引システムを破壊する。米国は潜水艦と航空機を増派して、海自艦隊の撤退を支援した。かくて尖閣は中国が確保して終わる。
一読して、現実離れしていることに気づくはずである。活動家は日本の巡視船に阻まれるし、上陸できても中国側でなく日本側に逮捕される。2日目に米艦船が現場に出現した時点で、中国艦船は矛を収めざるを得ないだろう。交戦状態になっても、米軍や海自潜水艦の威力が過小評価され、米国が都市機能マヒに追い込まれて、報復に出ないことなど考えられない。
2人の記者から取材を受けたのは、確かにランド研究所のシュラパク氏で、文字通り戦争ゲームのプロだ。元来、ランドのシミュレーションは、政府関係者を招いて行われ、綿密な研究分析の上に、多様な動きを検討し、独自の裁定を下すのが通例だ。
ところが、記事にはそうした周到さはみられない。
この記事に対する日本国内の反応にランドは、あくまで記者たちと東シナ海で考えられる可能性を短時間、議論したもので、ランドの公式シミュレーションではないことを強調している。
なぜいま、シュラパク氏が絡んで記者2人が、米国の「巻き込まれ脅威論」のシナリオを発表したのだろうか。結果として、「米国が小さな無人島に関与して中国との紛争に巻き込まれ、米国の国益を損なう」という中国のプロパガンダに沿ったものになっている。
(以下、略)
3日目に中国のフリーゲート艦が射程圏内に入った空自の戦闘機を機関砲で撃墜する設定になっているのですが、第2次世界大戦中でもあるまいに、空自の戦闘機がそんな行動に出るわけがありません。射程100キロ以上の対艦ミサイルで攻撃できるのに、なぜ中国のフリーゲート艦に接近する必要があるのでしょうか?
とても軍事のプロが書いたシナリオだとは思えません
サイバー攻撃によって日米のインフラがダメージを受ける、との設定も不可解です
中国の繰り出す戦術がことごとく成功し、日米はまったく対処できずに終わってしまうのなら、それは日頃の準備に問題があるわけで、早急に改善すべきでしょう
実際、このシミュレーションのようにすべて中国側に都合よく進行するわけもなく、不確定な要素だらけのように感じます
「小さな島の争いに米軍が巻き込まれたなら、アメリカは国益を失う。だから関わらない方がよい」との意見もアメリカ国内からは出るものと予想されます。しかし、現実には南沙諸島を巡ってアメリカ海軍は航行の自由をアピールする作戦を実施しており、中国が領有を主張する島に12カイリ内を米海軍のイージス艦が航行するという示威行動を繰り返しています。南沙諸島にしろ、尖閣諸島にしろ、たとえ小さな島でもそこで中国に負けたら、中国の増長を許しアメリカの国益が損なわれると考えているからです
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