オウム裁判 菊地直子被告に逆転無罪判決
オウム真理教が教祖麻原彰晃の逮捕を免れるため、東京都庁に爆弾小包を送りつけ、捜査の混乱を狙うという事件が平成7年にあり、それに関与していたとして指名手配されたのが「走る爆弾娘」と呼ばれた菊地直子被告です
以来、17年もの逃亡生活を続け、「すでにオウム真理教によって口封じのため殺害されてのではないか」とまで言われました
東京町田市で生活していた菊池被告が平成24年6月に逮捕され、一審東京地方裁判所は事件への関わりを認めた上で、懲役5年の実刑判決を言い渡しました
しかし、二審の東京高等裁判所はオウム真理教幹部の証言を、「信用性を欠く」と判断し、無罪を言い渡しています
菊地直子元信者の裁判で最大の焦点となったのは、菊地元信者に「テロ行為を手助けする認識」があったかどうかだ。こうした認識を裏付ける直接証拠はなく、検察側は状況証拠や証言の積み上げによる立証を狙った。しかし、事件から長時間が経過した中での立証の難しさも露呈。検察側立証で重要な位置を占めてきた井上嘉浩死刑囚(45)の証言の信用性にも疑問を呈すなど、今後のオウム裁判にも一定の影響を与える可能性がある。
今回の事件で検察側は「菊地元信者は、教団が都庁郵便物爆発事件を計画しており、運搬した薬品が爆薬の原料になると知っていた」との構図を描いた。
ただ、直接証拠は存在せず、事件に関与した元教団幹部らの記憶も曖昧になっていた。そのため1審の裁判員裁判判決は、事件に至るまでの教団を取り巻く状況や菊地元信者の教団内の立場、元幹部らの証言などを根拠に「テロの認識はあった」と推認し、有罪とした。
しかし控訴審判決では、1審判決の根拠となった井上死刑囚の証言を「不自然なほど詳細で、むしろ信用できない」と認定。さらに1審判決がテロの認識の根拠とした、「大量の薬品を危険を冒して運搬した」▽「爆薬製造作業を自発的に手伝った」▽「教団が危機的状況にあると認識していた」-などの認定について、「論理の飛躍がある」と断じた。
難解な用語が飛び交った1審が約2か月の過密日程で行われたことについて、「裁判員裁判になじまなかったのでは」と疑問を呈する識者もいる。ただ、最高裁は平成24年、事実誤認を理由に1審を見直す場合は、不合理な点を具体的に示さなければならない、との判断を示している。
今回、仮に「井上証言」を不自然とするならば、「なぜそうした証言をしたのか」という合理的理由が必要だったのではないか。控訴審判決で踏み込んだ説明はみられなかった。捜査関係者からは「証言が詳細であることを逆手に取られるのは極めて残念」との声が上がった。
(産経新聞の記事から引用)
長文の記事を引用しましたが、菊池被告がテロ行為を承知の上で関わったかどうかを東京高裁は問題視し、積極的にテロ行為に加担したとは認めるだけの証拠・証言がないと判断したものと解釈されます
産経新聞側は、一審判決のどこが不合理なのか具体的な指摘を避けていると高裁の判決に疑問を投げかけています
それとは別に自分は、「事件へ関与していない。自分は無実である」と菊池被告が認識していたのなら、なぜ17年も逃亡生活をする必要があったのか、疑問です。「逃亡しろ」と教団幹部から支持を受けたのならば、「一連の事件に自分が関わっていたからだ」との理解していたと考えられます
この事件を冤罪と考え、菊池被告は警察にマークされ犯人の1人に仕立てられた被害者であると考える人達もいます
犯罪に関与したから菊池被告が逃亡したのではなく、警察に追われ犯人扱いされる可能性があったから逃げざるを得なかった、という解釈です。が、本当にそうなのでしょうか?
当時の菊池被告が、教団の犯罪行為をまったく自覚していなかったと断定するだけの根拠があるのか、大いに疑問です。もちろん、検察は最高裁に上告して争うべきだと考えます。結果、最高裁は二審の東京高裁の判決を破棄し、差し戻すのではないかと予想します
余談ですが、オウム真理教に勧誘されて教団に身を寄せた男女は大勢いたわけで、いまだに消息不明の者も少なくありません。まだまだオウム真理教事件の全容が解明されたとは言い難い状況です。目下のところ、教団が起こしたとされる主要な事件についての刑事裁判がほぼ終わったところです
このままでは末端にいた信者の生死など、解明されないまま放置される懸念が残ります。残念ながら警察の捜査も限界があり、オウム真理教の中で何が行われ、誰がどうなったのか、詳細が明らかにされる日は永遠にやってこないのでしょう
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