「ケンブリッジ数学史探偵」を読んで呆れた

ここ最近、数学史からみの本を読んでいます。「ガロアの時代、ガロアの数学」(シュプリンガー・フェアラーク東京)、「数式に憑かれたインドの数学者」(日経BP社)、「高木貞治とその時代」(東京大出版会)、「無限に魅入られた天才数学者たち」(早川書房)などなどです
今回は新潮選書から出ている「ケンブリッジ数学史探偵」を取り上げます
帯には、「我々が歴史探訪に出かける先は、今から4世紀ほど遡った17世紀である。(中略)数学が、日本、西洋、中国と個別の文化の中でどのように培われてきたのか。異なった数学文化が出会った時、どのような吟味、対応、変化が起こったのか。その軌跡をたどっていくことはそのまま、ナショナルなファクターに影響されない世界史を描く作業となる」と印刷されています
著者は北川智子という歴史学者です。カナダの大学で数学を専攻し、プリンストン大学の大学院で歴史に転じ、ハーヴァードで日本史を教えていたという経歴の持ち主なのですが、数学史への言及より彼女自身の華麗な学歴への言及が目立つという、アレな本でした(笑
随所に「グローバルな視点から歴史を語る」とのフレーズが登場し、プリンストン大からハーヴァード大へ移り、さらにケンブリッジ大での研究をするという「グルーバルな私ってすごい」を語りたいだけの本です
ただでさえページ数の限られた新書版なのに、著者の学歴自慢に多くのページを費やしており、数学史を語るという当初の目的はどこかへ消し飛んでいいます
そもそも和算ならばその関連本が出ています。それらに比べ、和算への造詣は乏しく、初歩的な入門書と呼ぶにも不足です
また、17世紀ヨーロッパのライプニッツ、ニュートンらの活躍する時代についても、おざなりの言及のみであり、「グローバルな視点」から数学史を語ろうとすると、これほどまで希薄な内容になってしまうのか、と言いたくなります
日本、西洋、中国の17世紀の数学事情を羅列しただけで、何も見えてはこないのです。ただ、著者の学歴自慢が目につくだけで
この著者の前著は「ハーバード白熱日本史教室」であり、あの有名なサンデル教授の「ハーバード白熱教室」の真似です
サンデル教授の授業のひどさについては以前、当ブログでも取り上げました
この種の本を、「知的創造のナンタラ」と持ち上げる人たちがいるのですが、自分にはさっぱりその価値が分かりません
ちなみにこの「ケンブリッジ数学史探偵」は、Amazonのレビューでも酷評されています。興味のある方はそちらも御覧ください

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