「酒鬼薔薇聖斗こと少年Aは広汎性発達障害」と主張する草薙厚子
かつては「非行少年はゲーム脳」説を流布し、その後は「非行少年は広汎性発達障害」説を流布させているライター、草薙厚子が「元少年Aの殺意は消えたのか」(イーストプレス)を出版しているそうです
この本を立花隆が「週刊文春」掲載の「読書日記」で取り上げているのだそうで、そこで草薙厚子の「広汎性発達障害」説が思わぬ誤解を与えていると指摘する記事を見つけました
インターネットメディア「メディアゴン」の配信記事から引用します
前段部分は省略します。ここでは草薙厚子が「発達障害」と「広汎性発達障害」をわざとか、理解不足からか混同し、読者に混乱させていると指摘してます
<立花隆の書評も混乱>草薙厚子氏「元少年Aの殺意は消えたのか」の印象操作とミスリード
(前略)
しかし、立花さんが、
「彼(少年A )につけられるべき病名は『広汎性発達障害』であり、同じような症状をきたしている青少年が日本にかなりあらわれている話に頭をかかえた」
という感想を持つのはやむを得ない事かも知れない。その理由は草薙厚子氏の著書の執筆姿勢にある。
草薙厚子氏は、「元少年Aの殺意は消えたのか」の第四章「元少年Aの『広汎性発達障害』が見落とされた理由」において、
「誤解がないように何度も言っておくが、広汎性発達障害を持つ人が犯罪や事件を引き起こし安いと言うことでは決してない」
と書きながら、同じ章にこうした障害をもった人が起こした犯罪を列挙して、全体として、広汎性発達障害を持つ人は犯罪を引き起こす、と言う印象になるように章が構成されているのである。
ミスリードを誘う文章も見受けられる。
「文部科学省の2012年の調査では全国の小・中学生の6パーセントに発達障害の可能性がある」とするが、この調査が行われたのは事実であるが、解説でも述べたとおり広汎性発達障害の数字ではなく、学習障害、注意欠陥/多動性障害を含む発達障害の数字である。
数字は精神科医の診断によるものではなく、教員に学習の困難さなどの質問をして推計したものである。意図的に広汎性発達障害と発達障害を混同して使用している。
こうした印象操作は発達障害が最近増えている、と言う印象に結びつきやすい。その妥当なデータは存在しない。乱暴な断定も目に余る。
「人を思いやる気持ちや悲しむ気持ちが想像できず、理解することができない」
もちろん、そんなことはない。
「映像を模倣しようとするのもアスペルガー障害の特徴のひとつだ。たとえば、針金で絞め殺された猫の画像や残虐なシーンが出てくる映画を見ると、それをまるで教材のように受け取って実行してしまう」
こちらも、そんなことはない。
「広汎性発達障害を持つ人は(中略)『痛み』に共感できない傾向にある。(中略)
『生命が奪われる』事に鈍感な人もいる」
これは、どんなに稀で特異な例だろう? 筆者は自閉症の研究者でもあるが、こんなこと聞いたことがない。不勉強だからだろうか?
「広汎性発達障害の子どもたちは、なぜおつりがくるかわからない」
知的障害を伴う人の中にいると言うことを言いたいのだろうか?
草薙厚子氏のこうした印象操作の手法は本書だけではなく、「ドキュメント 発達障害と少年犯罪 」(イースト新書)でもまた同じであったことを最後に指摘しておく。
精神科医はそれぞれの識見によって病名を判断します。従って少年Aに「広汎性発達障害」との診断を下す医師もいれば、別の症状に注目し異なる病名を付ける医師もいるわけです
で、重要なのは病名ではありません
草薙厚子は「広汎性発達障害」と診断しなかったことが致命的なミスであり、その後の処遇を誤ったと決めつけたいようですが
上記のように草薙厚子は「少年非行の背景には広汎性発達障害」が原因としてあると主張しながら、イースト新書からは「発達障害と少年犯罪」と題する本を出し、「広汎性発達障害」も「発達障害」も同じものであるかのように扱っています(厳密に言うなら、これらは別の障害です)
こうした草薙厚子の乱暴な主張がまかり通るのであれば、注意欠陥多動障害もアスペルガー障害も犯罪予備軍になってしまうのです
草薙厚子の頭の中では「広汎性発達障害」と、その他のさまざまな「発達障害」が弁別されておらず、同一視してしまっているのでしょう
もちろん、それ以外の人格障害などとの区別ができているかも怪しい気がします
あらゆる少年非行を「ゲーム脳」のせいにしていた頃は笑い話で済んだものの、こうなってくると風説の流布めいた行為であり、実に迷惑です
草薙厚子は少年Aの医療少年院での処遇経過をまとめた本(といっても入手した資料をコピペしただけで、彼女はその処遇内容を検討もできず、是非を論じるだけの見識もなかったのですが)を出しています
今回もまた少年Aを題材に本を出すのも商売の一環ではありましょうが、もっと内容を吟味し、精度を高めるべきでしょう。出版前に発達障害の専門家に原稿をチェックしてもらうとか、方法はいくらでもあります
「広汎性発達障害の少年が増加傾向にあり、それにともなって残虐な少年犯罪が増える危険がある」などという臆見を振りまくのはやめてもらいたいものです
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