中国紙 「黒子のバスケ」こそ日本の国家イメージと語る
血なまぐさい犯罪・事件ばかり取り上げている昨今です
気分を変えるため、久しぶりにアニメーションの話題を取り上げます
中国メディアが日本の漫画やアニメーションを題材に、頓珍漢な論評を繰り広げるのは毎度の話であり、当ブログでもたびたび紹介してきました
今日は「黒子のバスケ」を論じた中国の記事を引用します
レコードチャイナの配信記事ですが、長文なので前半は割愛します。なお、前半部分では従来の日本のスポ根漫画・アニメに触れ、「新時代の熱血アニメはマジックミラーのように、我々に日本の国際的地位の変化を捉えさせ、国家のイメージ構築の重要な転換点をはっきりと示している」と書いています。が、なぜわざわざマジックミラーに例えるのか意味不明です。「鏡のように」と書けば済むものを
新型熱血アニメ「黒子のバスケ」に見る日本の国家イメージの変化―中国紙
(前略)
■攻めから守りの姿勢に転換した日本
「銀魂」(2004)や「進撃の巨人」(2009)、「東京喰種トーキョーグール」(2011)の中では、21世紀の日本の熱血漫画がかつての才能や強さを誇示する強気な姿勢を放棄し、小心なほどに注意深く自陣を守る姿勢に変わったことに気付いて驚かされた。これらのアニメには、日本人の文化の中に深く浸透している「物の哀れ」や「宿命論」といった悲観的で厭世的な人生観が極限まで発揮されている。このタイプの新型熱血漫画・アニメでますます激しさを増す攻めと守りの逆転は日本の国家イメージにも変化が起こりつつあることを暗示しているのではないだろうか?
ポスト「スラムダンク」と称される「黒子のバスケ」(2008)は、現代の日本の熱血アニメを非常に良く表している。あるいは、現代の日本における「強さ」の定義を示していると言える。その理由は、主人公のキャラクターの設定に隠されている。
一つには、主人公の黒子哲也は極めて影が薄い人物だという設定にある。黒子は自分の存在感のなさを利用して、チームの中継役を務め、他のチームメートにパスを出すことに徹する。
二つ目には、黒子の目標は自分が「日本一」になることではなく、米国から帰国したチームメート、火神大我を「日本一」にさせるというものだ。事もあろうに、このように存在感がなく、特別な才能もほぼなく、野心や志にも欠けたキャラクターが熱血漫画・アニメの主人公なのだ。
「黒子のバスケ」は漫画だけでなく、アニメも広く人気を博した。しかし、このことが、日本が弱音を吐いたことを証明していると言えるだろうか?むしろその逆なのではないだろうか。よく観察してみると、一見したところ、控えめで、影が薄く、単に他のチームメートの背後でサポートに回る黒子哲也は非常に軟弱で無力に見えるが、実際には黒子はチームメート全員を結ぶ中継役となっている。もし黒子がいなければ、チームが常に勝利を得る可能性はほぼ失われてしまうだろう。黒子がほかのチームメートに依存しているのではなく、他のチームメートが黒子に依存しているのだ。
■言葉で言い表せないものこそ、「強さ」を示す
黒子哲也の強さは一見わかりにくく、言葉では言い表せないものだ。しかし、他に替えが効かない選手であることは誰も否定できない。これはまるで新たに描かれた新世紀の日本の寓話のようだ。「世界制覇」や「発展、強化」というかつての日本のイメージに執着することを止め、自分の存在感を消し始めた。まるで黒子哲也と同様に、血を流して戦うよりも、各国にとって欠かすことができないサポート役として、重要な中継としての役割を発揮しようとしているようだ。
言葉で言い表せない強大なものに襲われたことから、防衛に回り、再び自分を言葉で言い表せない強大なものに変えて、四方を威嚇する。おそらくこれが、新型熱血漫画・アニメの中に隠された日本の国家イメージなのかもしれない。
(提供/人民網日本語版・翻訳/MZ・編集/武藤)
余談ながら触れておくと、中国では演劇や大衆小説でも主人公が圧倒的に強くカッコいいのが当たり前で、日本のような脇役的キャラが主役を務める設定は受け入れがたいという事情があります
そのため、「黒子のバスケ」のような地味な主人公という設定に戸惑い、こうした地味キャラの台頭こそ、今の日本の国家イメージそのものを反映し、多くの日本の視聴者が共感しているのだ、と決めつけているのでしょう
しかし、これは極めて皮相な見方です。中国のように主人公さえ目立てばよい、との物語を日本の視聴者は歓迎しません
やはり脇役や敵キャラが立っていないと、物語に奥行きや陰影が欠け、平凡なものになってしまうからです
二次創作では主人公ではなく、わざわざ脇役を主役に据えて物語を展開させるのも珍しくないのです
「黒のバスケ」は確かに黒子哲也が主人公ですが、黒子の存在を引き立てているのは「奇跡の世代」というライバルたちであり、彼らと競い合う青春群像劇と受け止めた方が自然でしょう。また、作者は「奇跡の世代」になれなかった選手たちも丁寧に描こうとしており、こうした目配りがあってこそ「黒子のバスケ」は多くの支持をていると言えます
となれば、上記の「日本の国家イメージ」なるものがいかに陳腐で、見当違いなものかが分かります
さらに記事末文の「言葉で言い表せない強大なものに襲われたことから、防衛に…」の部分は、何を言いたいのかさっぱり分かりません
「周囲を威嚇する」要素など、「黒子のバスケ」にはありませんし、日本の国家方針にもありません
中国人記者は何を見て語っているのでしょうか?
それこそ「マジックミラー(笑)」に映る自身(中国)のイメージを語っている風にしか思えないのです
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