大阪心斎橋殺人を考える5 礒飛被告に死刑判決
平成24年6月、大阪の繁華街、心斎橋で男女2人を無差別に刺殺し殺人罪などに問われた無職、礒飛(いそひ)京三被告(40)の裁判員裁判の判決公判が26日大阪地裁であり、死刑が言い渡されています
犯行時、覚醒剤の後遺症によって心神耗弱状態であると弁護側は主張し、死刑は回避されるべきだとしていました
精神鑑定の結果について、法廷で証言した鑑定医は以下のように述べています
大阪・心斎橋の路上で平成24年6月、男女2人を刺殺したとして、殺人罪などに問われた無職、礒飛(いそひ)京三被告(39)の裁判員裁判の第6回公判が2日、大阪地裁(石川恭司裁判長)で開かれた。起訴後に精神鑑定を行った鑑定医が出廷。覚醒剤による精神障害や幻聴はあるものの、「犯行に与えた影響は極めて乏しい」との鑑定結果が出たことを明らかにした。
鑑定医は礒飛被告が覚醒剤依存症や覚醒剤中毒の後遺症だったと説明。その影響で当時幻聴が聞こえていたが、犯行前後は「自分の置かれた状況を理解して行動している」ことから、「犯行を後押しした程度に過ぎない」と述べた。礒飛被告には起訴前にも精神鑑定が行われたが、鑑定医の死亡などを理由に、検察側の要請で再鑑定が行われていた。
(産経新聞の記事より引用)
礒飛被告は取調調書の中では、「自殺しようとしたが死にきれなかった。人を殺せば死刑になると思った」と、自殺願望の末に無差別殺人に走ったと述べています
前回のブログでも指摘したように、「死にたい」と言ったり「命あるかぎり償いたい」と言ったり、態度がコロコロ変わります
おそらくその時の気分によって考えが変わりやすく、安定していないのでしょう
しかし、生きて償うだけの財産もなく、刑務作業で得た僅かな報奨金を賠償に充てるくらいしかできないのが現実です
神戸事件の元少年Aのように、自伝を書いて売れるわけもありません
償いの形を提示できない者が、「償いたい」と口にしたところで被害者遺族には何も伝わらないのであり、虚しいだけです
弁護側がこの判決を受け入れるとは思えませんので、死刑を不服として控訴するのでしょう。さらに、3度目となる精神鑑定を求めるのかもしれません
犯行事実については争点になっておらず、ただ死刑ではなく無期懲役判決を得たいだけなのでしょう。しかし、そうまでして裁判で争ったところで、何の救いもないのです
この事件で想い出したのが1997年奈良県月ヶ瀬村で起きた女子中学生殺害事件です。事件の経緯を説明すると長くなりますので、以下のまとめサイトを参照願います
奈良県月ヶ瀬村女子中学生殺人事件
在日朝鮮人の両親の許に生まれた丘崎誠人は月ヶ瀬村の山陰にある荒屋のような家(家賃は1万円程度)に住み、周囲からは村の一員とは見なされず他所者扱いされて育ちました。だからといて差別を理由に殺人を犯したとは言えず、部活帰りの女子中学生に車をぶつけ、連れ去って強姦するつもりだったのかもしれません
しかし、被害者である浦久保充代さんが抵抗したためか、車でぶつけた傷が予想よりも重かったためかは不明ですが、石で殴りつけ殺害した後、遺体を遺棄しています
事件後、丘崎の家族は月ヶ瀬に住める状態ではなく、離散したと報じられました
丘崎は無期懲役刑が確定し、大分刑務所に収監されたものの自殺しています
覚悟の上の自殺なのか、償いための自殺なのかは不明です。ただ、自分には逃げたようにしか思えません
無期懲役刑を受け入れ、粛々と刑務所の中で反省の日々を過ごすのが、丘崎には耐えられなかったのではないかと
「償いをする」と口にするのは簡単ですが、具体的に何ができるのかと問われれたならば、ほとんどの犯罪者は答えに窮するのが現実です
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