名古屋駅前暴走事件を考える3 懲役12年の先は
昨年2月、名古屋駅近くで通行人めがけて車を突っ込ませ、14人もの負傷者を出した事件の判決公判がありました
世間の耳目を集めた事件なのですが、公判開始後もなぜか報道の扱いが小さく、メディアの反応の鈍さが目立ちます
以下、中日新聞のウェッブサイトに掲載された記事を引用します
名古屋市中村区のJR名古屋駅近くの交差点で昨年2月、乗用車を暴走させ通行人14人に重軽傷を負わせたとして、殺人未遂罪に問われた同市西区の無職大野木亮太被告(31)の裁判員裁判で、名古屋地裁は27日、「無差別殺人のため人通りの多い歩道を選んだ危険性の高い犯行」として懲役12年(求刑懲役15年)の判決を言い渡した。
被告は精神鑑定で発達障害の一種、アスペルガー症候群と診断された。検察、弁護側とも障害が犯行に直結したとは主張していないが、動機の形成過程に与えた影響の大きさで争いがあり、弁護側は懲役5年が相当と訴えていた。
景山太郎裁判長は判決理由で「まず重視すべきは、危険性の高さと結果の重大性だ。幸い死者は出なかったが、被害者は安全であるはずの場所で命の危険にさらされた」と指摘。
その上で「被告は発達障害で対人関係がうまくいかなかった経緯などから、『家族が自分を不幸にしようとしている』と妄想した。ただ、今回の犯行はそうした妄想的な考えに直接基づいておらず、自分の苦しみを社会に分からせてやるという自分本位の考えからだった。犯行の決意と実行に発達障害が大きく影響したとは言えない」と認定した。
一方で、「動機の形成過程での障害の影響は小さくなく、非難を加えるには限度がある」とも述べた。
(以下、略)
12年丸々服役するのかどうかは別にして(家族への報復を示唆するような言動を繰り返すようなら、仮釈放は無理でしょう)、満期で釈放された後はどうなるのでしょうか?
本人が自ら望んで治療を受ける気にならなければ、大野木被告の反社会的な行動や思考はそのままで、再び無差別殺人を企図する危険があります
もちろん、刑務所での服役期間にそのような治療が行われる可能性は皆無であり、懲役刑として定役(刑務作業)が科せられるだけです
過去に大野木被告の母親がひそかに向精神薬を飲ませていた、と判明して親子関係がこじれたと報じられており、大野木被告が治療に疑念を抱いているものと推測されます
おそらく母親は医師に相談した上で、向精神薬(リタリン)を飲ませていたのでしょう
こどものADHD(注意欠陥多動障害)でリタリンの服用は一定の効果があるとされますが、大野木被告はこれを邪推して「薬を飲まされ、去勢された」と被害妄想を膨らませてしまったようです
心身に著しい問題があり、継続的な治療を必要とされる受刑者については、満期釈放後も収容して治療を行うモデル施設を検討してはどうでしょうか?
懲役期間終了後も、治療のためとはいえ拘束するとなれば弁護士会、人権団体が反対するのは目に見えますが
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