和歌山カレー事件を冤罪と決め付けるメディア
和歌山の毒入りカレー事件で死刑が確定した林真須美について、一部のメディアは冤罪説を主張しています
週刊金曜日もその1つですが、今回はビデオニュース・ドットコムの主張を取り上げます
長文の記事なので本文は以下のサイトで確認願います
まずはその主張を整理してみましょう
1998年7月に死者4人負傷者63人を出した和歌山カレー事件をめぐる林真須美氏の裁判は、2009年4月に最高裁が上告を退けたことで死刑が確定している。最高裁は判決の中で、カレー鍋に混入されたものと組成上の特徴を同じくする亜砒酸が林真須美氏の自宅から発見されたこと、林真須美氏の頭髪からも高濃度のヒ素が検出されていて、付着状況から林真須美氏が亜砒酸を取り扱っていたと推認できることなどを理由に、死刑判決を支持している。
林真須美氏は黙秘を貫くなどして、一貫して犯行を否認していたが、自白や動機の解明が行われないまま、裁判では犯行に使われたヒ素の流通経路や組成の同一性が、いわゆる中井鑑定によって裏付けられたことで、真須美氏の犯行であったと断定されている。中井鑑定はかつて真須美氏の夫・健治氏がシロアリ駆除業を営んでいたために林家に残っていたヒ素と、ヒ素をカレーに投げ入れるために使われたとされる、現場のゴミ袋から回収された紙コップに付着していたヒ素が、同一のものだったと結論づけたもので、林真須美氏が犯人だったと断定する上での決定的な証拠となった。
和歌山カレー事件に見る、科学鑑定への誤解が冤罪を生む構図
ビデオニュース・ドットコムはこの中井鑑定を問題視し、紙コップに付着していたヒ素とカレーに混入されたヒ素は別物だとする別の見解を持ちだして、林真須美の犯行ではなかったと主張しています
ですが、これは科学鑑定の1つの結果であり、これで冤罪だと決め付けるには論拠が薄弱です。「科学鑑定への誤解が冤罪を生む」と言いながらも、別の科学鑑定の結果を振りかざすのはどうか、と言いたくなります
科学鑑定だけで有罪だと断定するのが稚拙なら、科学鑑定だけで冤罪だと主張するのも稚拙でしょう
夫の林健治は最高裁で、「ヒ素は自分で飲んだ」と証言し、妻である林真須美が夫にヒ素を飲ませて保険金をだまし取ったとする検察の主張に反論しています
しかし、保険金詐欺の相棒である林健治の証言に、どれだけの真実があるのか大いに疑問であり、信用できません。林健治の証言が「決定的証拠」とはならないのです
むしろ、これだけ周囲でヒ素を巡る犯罪が起きているのに、その中心にいる林真須美がまったく関与しておらず、無実だとする主張の方が不自然です
なお、林真須美は1審和歌山地裁で黙秘を貫きましたが、2審の大阪高裁では同じ町内に住んでいた主婦の名前を挙げて「真犯人」だと名指ししています
しかし、名前を挙げられた主婦がヒ素を混入させたり、ヒ素を所持していたとは立証されず、事件とは無関係です
地域の夏祭りでのカレーに通りすがりの第三者がヒ素を混入させたとは考えられず、カレーの調理に関わった人間でカレーを食べていない者が犯人、と推理するのは妥当でしょう。カレーを食べなかった林真須美一家が疑われるのは決して突飛な推理ではありません
科学鑑定がどうあれ、情況証拠の積み重ねを頭ごなしに否定すべきではないと考えます。諸々の状況からして、林真須美以外の誰かによる犯行とする推論は無理筋なのですから
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