三重・中学生殺人を考える4 記憶にないと主張
2013年の夏、三重県で花火大会帰りの女子中学生が殺害された事件の裁判員裁判が始まっています
この事件では殺害現場近くに住む、当時高校生だった少年が逮捕されています
家庭裁判所による少年審判の結果、刑事処分相当の判断が下され検察官に逆送となり、今回刑事裁判でその罪が問われる次第となりました
公判の様子を伝える産経新聞の記事から、被告である19歳の少年の現状などを考えてみようと思い取り上げます
裁判には殺害された女子中学生の父親が出廷し、殺害時の状況について被告に質問したのですが、「記憶にない」と言うばかりで犯行当時の詳細については語らろうとしなかったと報じられています
三重県朝日町の中3女子死亡事件で、強制わいせつ致死罪などに問われた少年(19)の裁判員裁判が18日、津地裁であり、被害者参加制度を利用して被告人質問した女子生徒の父親(46)が「娘の死にざまはあなたの口からしか聞けない。最後の様子を知りたい」と少年に直接訴えかけた。
父親は約40分間、事件当時の心境や行動について質問。黙り込んだり、「どういえばいいか分からない」と口ごもったりした少年に「私には娘を守れなかったとの後悔がある。だから頭を下げて聞いているんだ」と語気を荒らげた。
少年はこれまでの公判で起訴内容を認めて謝罪したが、犯行時の状況や女子生徒の様子を問われると「記憶にない」との発言を繰り返していた。
(産経新聞の記事より引用)
弁護人との事前の打ち合わせで、殺害した事実を争わず真摯に罪を認めて情状酌量を得、少しでも刑を軽くする方向で裁判に臨んだものと思われます
公判では被告少年自らが謝罪文を読み上げ、反省の態度を示したと報じられています。ここまでは弁護人の演出通りだったのでしょう
しかし、被害者の父親が犯行の詳細を質問する展開までは予想していなかったのか、打ち合わせをしていなかったのか、被告は「記憶にない」と述べるだけで供述を拒んでいます
これでは裁判官・裁判員の心証は悪くなり、「事件を反省している態度」とは見なされません
秋葉原の歩行者天国で多くの通行人を殺傷した加藤智大死刑囚も犯行については「記憶にない」と裁判で発言し、顰蹙を買いました
この場合の「記憶にない」とは犯行当時心神喪失状態で心身に異常をきたしていたからではなく、犯行当時の記憶を封じ込め思い出したくないとの意志がそうさせているものと推測されます
犯行当時の生々しい記憶を抱えた状態では平静に暮らしていけないため、一種の保護機能として脳が特定の記憶を封じ込めて、意識の上がらないようにしているとの考えです
もちろん裁判という場を経験したことのない未熟な少年ゆえに、被害者の父親から向けられた質問に対応しきれていない側面はあります。裁判で謝罪文を読み上げれば、それで反省の態度が認められるという甘い考えしか持ち併せていないのも確かでしょう
しかし、犯行に至るまでの「夜道で女性を襲い、強姦したい」という自らのどす黒い欲望と向きあおうとしないまま裁判を迎えたのも事実であり、事件に対する真摯な反省に欠けると判断され、相当長期の懲役刑を課されるのはやむを得ないと思います
判決公判は3月24日に言い渡される予定です
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