レアアース輸出規制撤廃 中国が敗北

2010年に始まった中国政府によるレアアースの輸出規制ですが、世界貿易機関(WTO)の紛争処理上級委員会はこの措置がWTO協定に違反するとの裁定を下した結果、この度輸出規制が撤廃されるに至りました
希少資源を武器にしようと考えた中国政府の思惑は外れ、戦略の練り直しを迫られる結果となったわけです
以下、読売新聞の記事から一部引用します


中国政府によるレアアース(希土類)輸出枠の撤廃が明らかになり、2010年に始まった輸出規制問題は節目を迎えた。
中国が輸出を抑えている間、日本企業は代替技術の開発を進める一方、レアアースの使用を減らす取り組みも行い、影響は限定的なものにとどまった。
中国がレアアースの輸出規制を始めた当時、日本はレアアース輸入の約8割を中国に依存していた。規制後、市場価格が十数倍に高騰するなど、産業界に大きな衝撃が広がった。
ただ、その後、各社が対応策を進めたことから、今回の規制撤廃にも「技術開発が進んで使用量が減り、中国以外の調達先も見つかった」(日産自動車の志賀俊之副会長)、「現在は価格も落ち着き、影響はない」(東芝の田中久雄社長)と冷静な反応が相次いだ。
中国の規制後、日本企業は中国以外からレアアースを確保する動きを活発化させた。ホンダは13年、使用済みハイブリッド車用電池からレアアースのリサイクル回収を始めた。
中国以外からのレアアースの輸入が増え、13年には中国への依存は6割に下がった。
各社はレアアースの使用量の削減も急いだ。日立産機システムはレアアースを使わない産業用モーターを製品化。トヨタ自動車系特殊鋼メーカーの愛知製鋼も、使用量を3割減らした自動車向けモーター用磁石を開発した。
こうしてレアアースの国内需要は07年の3万2000トンから13年には1万3000トンに縮小した。
(後略)


中国の輸出規制は日本を狙い撃ちにしたものでした。輸出規制で日本企業が大打撃を受ければ、日本政府が跪いて輸出を懇願してくるものと読んでいたのでしょう
レアアースを精製し、産業用の素材に加工する技術は日本の企業が事実上独占しており、中国政府はその技術が欲しくてたまらなかったのです
中国国内にレアアースの精製、加工を行う工場を作るよう日本に仕向け、技術を盗む腹づもりでいたと予想されます
しかし、事態は中国政府の思惑どおりには進まず、日本企業は相次いでレアアースの代替物質を開発したり、レアアースの使用割合を減らしたり、リサイクルを進めるという技術革新で対抗する展開に至りました
日本の技術力に改めて驚き、悔しがったに違いありません。さらに中国以外の国がレアアースの採掘に乗り出したため、中国の資源独占という野望は潰えてしまったと言えます(もちろん、中国でしか産出しない希少な物質もあるのですが)

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