名古屋大女学生殺人を考える1 殺人願望

名古屋大学理学部に通う女子学生が自宅アパート内で森外茂子さん(77)を斧で殺害した事件について、さまざまな報道が飛び交っています
事件の詳細、背景などはまだ不明ながら、やはり国立大学に通う19歳の女子学生による「理由なき殺人」との外見が注目を集める理由なのでしょう
数多くの報道の中から日刊ゲンダイの記事を一部、引用します


殺人願望爆発…名古屋大19歳女子学生がつぶやいた「最終経歴」
旧帝大の名門、名古屋大に通う女子大生A子(19)が知人の森外茂子さん(77)をおので殴るなどして殺害した事件。27日に逮捕されたA子は愛知県警の取り調べに淡々と応じ、取り乱す様子はないという。「子どものころから人を殺してみたかった」と供述している通り、日頃から抱えていた殺人願望を爆発させたようだ。
逮捕容疑は昨年12月7日昼ごろ、名古屋市昭和区内の自宅アパートで森さんの頭部をおので殴り、首をマフラーで絞めたりするなどして殺害した疑い。おのは室内で見つかった。A子は「宗教の勧誘が煩わしかった」とも話しているという。
「A子と森さんは昨年秋ごろに宗教勧誘をきっかけに知り合い、何度も顔を合わせています。殺害当日は名古屋市内で開かれた集会へ揃って参加し、2人で食事に行くからと言って集まりを後にした。A子の自室は学生向けの2階建てアパートの1階で、1Kと決して広くない。その室内で犯行に及んだとみられ、黒っぽい服にスカート姿の遺体は風呂場に放置されていた。首にはマフラーが巻かれたままでした。翌日にA子は宮城県内の実家に帰っています」(捜査事情通)
帰省前に警察官から森さんの所在を聞かれたA子は「自宅の玄関先で別れた」と説明したという。愛知県警の呼び出しで26日に名古屋に戻ったA子は事情聴取を受け、捜査員に説得されて室内への立ち入りを許し、犯行が発覚した。
■宮城県から現役で名大理学部合格
宮城県内のカトリック系進学校出身のA子は、難関の名大理学部にストレートで入学。応援団に所属し、学ラン姿でエールを切るなど、アクティブな学生生活を送っていた。周囲からは「マジメでいい子」「ムードメーカー」という声が上がる一方、大学入学とほぼ同時に始めたツイッターで繰り返していたのが不気味なつぶやきだ。
<「殺したい」人はいないけど「殺してみたい」人は沢山いる>
<日常を失わずに殺人を楽しめることが理想なんだと思う>
<夢の中で〇〇(A子の本名)は人殺しでした>
(以下、略)


日刊ゲンダイの記事の見出しでは「殺人願望」になっており、ブログのタイトルにも使ったのですが、ここは「殺人衝動」と理解すべきです
「漠然とした殺人という行為へのあこがれや期待」といった願望ではなく、心の中から湧き上がってくる御し難い衝動と解釈した方がより適切だと思います
本人の生育歴など不明ですから、あれこれ憶測を語って読者を混乱させたりミスリードするような真似は控えるべきでしょう
ただ、指摘しておきたいのは中学や高校では学業優秀といった事実に目を奪われ、彼女の問題行動を軽視してしまったきらいがあるのかもしれません
佐世保で同級生を殺害した女子高生のケースも同じであり、学業やスポーツで良好な成績を挙げている生徒の場合、常軌を逸脱するような行動があっても周囲がそれを大目に見てしまい、それを咎めようとしない傾向があります
少年少女が内に抱え込んでいる問題を考える上で、学業成績の良し悪しに左右されてしまうのは学校教育が抱える根本的な欠陥です(つまり、教師が成績の良し悪しで生徒を区別してしまっているわけです)
一部の報道で、この女子大生も同級生に毒物を飲ませた、とのエピソードが紹介されています。真偽は不明ながら、もしそのような犯罪行為があったにも関わらず放置していたのならば学校も家庭も、彼女への対処方法を間違えたと言わざるを得ません
さて、余談です。こうした殺人事件が起こると、ニュース報道に対するコメントとして「犯人はサイコパスだ」との書き込みが見られます
しかし、異常な行動の結果として犯人をサイコパスだと決めつけたところで、何かを指摘したことにはなりません。ボーヴォワールは、「人は女に生まれてくるのではない。女になるのだ」と発言しています。その表現を借りれば、「人は殺人者として生まれてくるのではない。殺人者になるのだ」と考えるべきでしょう
彼女の中でいかにして殺人の衝動が芽生え、御し難いまでに膨らんだのかを解き明かさなければ事件の意味を大きく読み誤ってしまいます
これも憶測に過ぎませんが、佐世保での同級生殺害事件の報道も彼女に影響を与えた可能性があります。殺人の衝動を抱えていた彼女にとって、佐世保の事件は決して他人ごとではなかったはずです

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