「イスラム国人質事件」の神奈川新聞コラムが酷い

イスラム国で拘束された湯川さん、後藤さんについてさまざまな報道がされているのですが、この事件にかこつけて随分と勝手な意見を述べている方もいます
その1つが神奈川新聞に掲載されたコラムです。イラクで人質になった経験のあるジャーナリスト安田純平へのインタビューをコラム風にまとめた内容で、「多様性」という名の下に随分と頓狂な意見を開陳しています


(前略)
過去にイラクやアフガニスタンといった紛争地帯で起きた武装勢力による拘束事件では、人道支援の関係者やジャーナリストだけでなく旅行者も狙われた。
安田さんの目に自己責任論の矛先はいま、後藤さんが救出しようとした湯川遙菜さん(42)により厳しく向かっているように映る。自ら立ち上げた民間軍事会社の顧問を名乗り、反政府勢力と行動をともにしているところを捕らえられたとみられる。
「だが」と安田さんは力を込める。「何をしに紛争現場へ行ったのかを救出の是非に結び付ける論調がある。それでは理由によっては『では、助けなくてよい』という話になりかねない。それは違う」
国家が選別し、取捨選択される命があり得るなら、人々はやがて国家の意に沿って振る舞うようになるだろう。その先に待つのは、価値観が国家という一つの物差しに収斂(しゅうれん)してゆく社会、つまり多様性を失った社会ではないのか。
いや、すでにして「反日」「国賊」のレッテル貼りはネットや一部保守系メディアでなされ、在日コリアンに向けられた「日本が嫌いなら出ていけ」のヘイトスピーチ(差別扇動表現)が街中に出現して久しい。
そして異端は排除されようとしている。
(後略)
時代の正体〈54〉邦人拘束事件は問う(上)失われゆく多様性


イスラム国の人質事件から急に「多様性」の名の下、在日コリアへのヘイトスピーチへと飛躍し、「何が何やら」と思わざるを得ません
紛争地帯に取材に赴くジャーナリストの価値を認めようとしない世間一般への憤りを開陳する部分は理解できます(共感はしません。しょせんそれもビジネスであり、金儲けと功名心による行動だからです)が、だからといって「多様性」の下にどのような行動も尊重されるべきではありません
危険地帯であったイラクへ観光目的で入国し殺害された日本人男性がいたのですが、「危険と言われたイラクを旅行してきたぜ。オレってタフだろう」と自慢したいだけの馬鹿だとしか思えないのです
そのような軽薄な思考の人物と、何が起こっているか真実を伝えようとするジャーナリストの人たちを等価と見なすのは無理があります
「多様性」があるのだから、どのような動機でイラクへ行こうとその人の命は平等に尊い、とは世間も考えないのです。イラクへ物見遊山で出かける無分別な若者が武装勢力に捕らわれ、殺害されても「自業自得」と見るだけです
そうした反応を間違っていると指摘し、「価値観が国家によって収斂される」とまるで国家による陰謀であるかのように強調するのはもはや「デンパ」の類でしょう
「多様性」を謳うのであれば、自己責任を指摘する世間の意見も多様な意見の1つとして尊重されるべきでしょう
こうした意見では「多様性」を標榜しながら、自分たちとは異なる意見を抹殺しようとする意図がありありとしており、「多様性」を否定しているわけです
突っ込みどころ満載のコラムなのですが、全体を繰り返し読んでみても今のこの時期に何を言いたいのやら、と思うばかりです
「国際社会は内戦を放置してきた。だがその現場では、毎日数多くの一般市民が死んでいった」と安田純平は問題提起するのですが、ならばどうすればよかったのかは口にしません。アメリカが軍事介入してシリアの内戦を力尽くで阻止すればよかったのでしょうか?
鋭敏な感覚で問題点を看破した風を装おいながらも、実は何も指摘できていないのと同じです
アメリカが軍事介入すれば、その過程でシリア政府側にも反体制側にも多数の死傷者が発生するわけで、ならば安田純平は「アメリカの武力介入が悲劇を招いた」と書くのでしょう
取材をするだけで何の解決策も示さず、「国際社会が悪い」などと寝言を口にするのは勘弁してもらいたいものです

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