中国メディアの飛ばし記事「韓国の国産戦闘機を米海軍が350機導入」

中国メディアが直接取材もせず、裏付けも取らないまま他国のメディアの記事を受け売りで流すのは毎度のことであり、そのため事実とは異なる「報道」がしばしば繰り返されます
机の前に座ったままパソコンで他のメディアの記事を読み、それを転載するのが中国メディアの仕事というわけです
今回は環球時報が、「米海軍が韓国の国産戦闘機350機の導入する計画だ」とのとんでもない誤報を流していますので紹介します


18日付の韓国紙・釜山日報は、韓国が独自開発・生産したTA-50戦闘機を米海軍が導入する計画だと報じた。
韓国航空宇宙産業(KAI)が18日に明かしたところによると、導入計画を主導する米空軍チームが17日午前、韓国空軍第16戦闘航空団を訪れ、韓国国産戦闘機TA-50を実際に体験し、性能を確認した。
15日には米空軍が派遣したチームが韓国防衛事業庁、第16戦闘航空団、空軍軍需司令部を相次いで訪れ、T-50戦闘機の飛行訓練の成果を考察、運行費用などを確認した。韓国側はT-50戦闘機の優れた性能と先進的な装備を紹介した。
TA-50はT-50を基に韓国が独自に開発・製造した強撃機。
韓国KAIによると、米空軍がTA-50戦闘機を導入した場合、韓国に100億ドルの経済効果がもたらされる。米国は現在使用中のT-38C戦闘機の後継として、韓国の国産機を350機導入する計画だと記事は伝えている。


最初に指摘しなければならないのは、TA-50というのは韓国が独自に開発・製造した戦闘機ではなく、ロッキード・マーチンがF-16戦闘機のダウングレード版として設計・開発したものを韓国が組み立てた攻撃機です
ロッキード・マーチンの設計・開発なのに、韓国メディアはこれを「韓国の独自の技術で開発した」と表現するのが常です
ですから、多数のF-16戦闘機を保有する米軍がいまさらそのダウングレード版にすぎないTA-50を350機も購入するはずはないのであり、この記事は明らかに事実関係を履き違えたものです
補足をすれば、米軍が老朽化した訓練機の更新を計画しており、その調査目的で米軍関係者が韓国を訪問しTA-50を試した、というのが真相です
だからといって、米軍がTA-50の購入を決めたわけでもなく、あくまで調達計画の対象に含めるかどうか、事前に調査をしたというだけの話です(米軍がわざわざこのTA-50を導入する必要がないのは、より性能で優るF-16戦闘機を多数保有しているからであり、退役待ちのF-16を訓練機として流用した方がTA-50を新規に導入するより安上がりですし、訓練効果も期待できます。ただし、軍としては訓練機の更新を計画し、その分の予算を獲得したいとの思惑があるため古くなったF-16を訓練機として活用する、などといった節約術は採用しません)
しかし、韓国のメディアは「米軍がTA-50を調査したのは購入する可能性があるからだ」と色めき、勝手に期待を膨らませているのでしょう
そして韓国メディアの記事の裏付けを調べようともしない中国紙が、記事の受け売りをして「米国は現在使用中のT-38C戦闘機の後継として、韓国の国産機を350機導入する計画だ」と書いて、堂々と世界に配信しているのです
韓国に駐在している中国人記者を介し、記事の裏付けを取るくらいの真似はできるはずなのに、それをしない感覚が理解できません
取材活動という概念が欠如しており、インターネットで検索した記事をコピペするのが彼らの仕事なのでしょう

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