週刊誌報道「凶悪犯が酒鬼薔薇聖斗に憧れる理由」とは
女性週刊誌が精神科医和田秀樹に取材し、「凶悪犯がなぜ酒鬼薔薇聖斗に憧れ、無差別大量殺人犯である宅間守や加藤智大には憧れないのか」を説明する記事を掲載しています
ただ、そこに書かれているのは事例に則した見識ではなく、「インターネットに依存している若者」を例に結びつけたあまりに強引な解釈であり、偏見とも呼べる内容です
凶悪犯が酒鬼薔薇聖斗に憧れ宅間守や加藤智大に憧れない理由
和田秀樹は、「現代の格差社会において、竹井容疑者のような無職や非正規社員の人たちは、現実に背を向けてネットの世界に逃げ込みやすい。鬱屈した彼らの中には、社会への恨みを抱く一方で、“おれだってデカいことができるんだ!”という自己顕示欲が人一倍強い人が出てきてしまうんです」と述べているのです
が、これはまさしくメディアが「今の若者はこんな風です」と指摘したがる典型そのものでしょう
「格差社会」とインターネットを結びつけ、この2つが通り魔による無差別殺人を生み出す温床だと言いたいのでしょうが、おそろしく見当違いな意見です
無職の竹井聖寿容疑者と、非正規労働者であった加藤智大被告とではその立場や生育環境、事件の背景など大きく異なっていますし、池田小学校を襲った宅間守もまた別です
加藤被告を格差社会の犠牲者のごとく表現するのは不適切ですし、神戸の連続児童殺傷事件(犯人は当時中学生)と今回の竹井聖寿の事件を同一視するのも誤りです
そうした個々の事件や犯人の差異を無視し、どこれもこれも同じだと強引に括って論じるのは大間違いです
竹井聖寿容疑者が神戸の連続児童殺傷事件についてどこまで理解しているのかは不明です
ただし、アメリカの連続殺人事件のように、犯人が過去の大量殺人事件の犯人に惚れ込み、崇拝し、模倣しようとする傾向があったりもしますので、そこには何かしらのシンパシーが介在している可能性はあります
だとしても竹井聖寿は神戸事件の犯人の実像には関心がなく、もっぱら世間一般で噂されたサカキバラの虚像と、竹井自身が勝手に想像したイメージを語っているものと推測されます
ですから記事の末文で、「酒鬼薔薇は若い世代にとって猟奇殺人の“元祖”なうえ、本名も顔写真も公開されておらず、そのことが彼らにとって、ある種の“神秘性”を感じさせる結果になってしまったのでしょう」と指摘しているところに異論はありません
ただし、「ある種の神秘性」との表現はどうかと思ってしまいます
詳細なプロフィールが伏せられているがゆえに、個々人が酒鬼薔薇聖斗という存在を勝手に想像でき、「彼はこのような人物であったに違いない」とのファンタジーを託せる余地があるからこそ、惹きつけられるのだと言えます
歪んだ自己愛を酒鬼薔薇聖斗というイコンに投影し、それを手放さずにいると考えられるのです
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